メガバンクの新卒採用削減と就活への影響。慶應大学経済学部生はどう動く?

1. 「令和2年」新卒採用、三菱UFJは45%、三井住友は10%削減

https://www.sankei.com/economy/news/190401/ecn1904010038-n1.html

メガバンクは3行共に、令和2年4月入社の新卒採用にむけて、現在採用活動を進めているところであり、内定者もほぼ出揃って来ているのではないだろうか?

目先は超低金利による収益の悪化、中長期的にはインターネットバンキング普及に伴う店舗の統廃合や、定型業務の自動化・効率化の流れがあるために、3メガバンクはしばらく新卒採用を抑制していくのではないかと考えられる。

2. メガバンクの新卒採用削減の就活生に与える影響は少なくない

メガバンクの新卒採用者数削減が就活生に与える影響は少なくない。
何故なら、東大、早慶、MARCHといった上位校各校の就職者数ランキングを見ると、メガバンクがベスト10入りしているからだ。

また、メガバンクだけではなく、三菱UFJ信託銀行、三井住友信託銀行、りそな銀行、商工中金、農林中金といった大手行も有力校の就職ランキング上位に入っているからだ。

さらに、少子高齢化に伴う国内市場の縮小、RPA・フィンテックの進展に伴う実店舗・人員の削減という背景は、証券、生損保といった国内系金融機関にもあててはまる。

横並び意識の強い日本の大手金融機関は、これからしばらく、どこも新卒採用者数を絞り込んでいくのではないだろうか?

3. 有力校で最も大きな影響を受けるのは慶応大学経済学部?

有力校の場合には、メガバンク、大手行、大手証券・生損保の就職者に占めるシェアが高い。その中でも、最も影響が大きいのは慶応大学経済学部ではないだろうか?

何故なら、有力校の中でも、特に慶應大学経済学部の場合、大手金融機関のシェアが高いからだ。

<慶應大学経済学部の就職状況>
http://www.gakuji.keio.ac.jp/life/shinro/3946mc0000003d8t-att/a1530669479061.pdf

https://career21.jp/2019-02-08-145539

慶應大学の場合、卒業生の具体的な就職先については、各学部3名以上・上位20社までしか開示が無いので、完全な情報は掴めないが、慶應大学経済学部の場合、就職先の上位20社ランキングだけからも大手金融機関への集中度の高さがうかがえる。

〇3メガバンク合計:74人
〇2大信託銀行合計:22人
〇その他大手金融(商工中金、りそな、日本政策金融公庫)合計:24人
〇大手証券(野村、SMBC日興、みずほ、大和)合計:55人
〇大手生損保(東京海上日動、三井住友海上、明治安田生命、損保ジャパン日本興亜)合計:53人

これらを足し算すると、74+22+24+55+53=228。
慶應大学経済学部の全就職者数が1,003人なので、大手金融機関のシェアは上位20社だけで、何と23%である。

もし、これらの大手金融機関が数年以内に新卒採用者数を半減したとしたら、就職者数の約1割以上は他の金融機関以外の業界を就職先として探さなければならなくなるのだ。

4. しかし、慶応経済学部生にとって大手金融機関は真の勝ち組ではない?

メガバンク、大手証券、大手生損保は、世間的な知名度・信頼性、年収水準が高く、これらは就職偏差値・人気ランキング的な意味において良好な就職先と考えられている。

しかし、慶應大学経済学部生からすると、こういった大手金融機関は必ずしも第一志望ではなく、本命に落ちた場合に行くところと思われているようだ。

一般的に見ると、これは大変贅沢だと思われるかも知れないが、慶応だけでなく、東大、一橋、早稲田の学生の間では、外銀・外コン・総合商社・国内系金融機関のコース別採用の人気が高く、これらが本命とされているようだ。

しかし、外銀・外コン・総合商社・国内系金融機関コース別採用は、大変狭き門であり、多くの者は内定を得られず、メガバンクを始めとする大手の金融機関に結果的に就職することになるという。
このため、悪く言ってしまうと、トップ校の学生からすると、大手金融機関(除くコース別)は滑り止め的な位置づけになっているということである。

ところが、メガバンクを始めとする大手金融機関が軒並み新卒採用数を大幅に削減するとなると、トップ校の学生達は外銀・外コンどころか、大手金融機関に入ることも保証されなくなってしまうのだ。

5. 大手金融機関以外の就職先はどこか?

さて、大手金融機関の採用人数が減少することを踏まえると、慶應大学経済学部を始めとする、文系のトップ学生はどこを目指せばいいのだろうか?

外銀⇒国内系金融機関コース別⇒大手金融機関(総合職)、という志向の学生の就活の軸としては、以下のものが基準になっていると推察される。

① 高収入
② 安定性・ステータス
③ スキル

このうち、①の大手金融機関並みの高収入、要するに30歳ちょいで1000万円、40歳で1500万円の水準となると、かなり絞られてしまう。ほとんどのメーカーやサービス業ではこの水準に届かないからだ。

一定以上の年収を確保するとなると他にも方法があるが、厄介なのは、②の安定性やステータスを重視するからだ。結局、ベンチャー企業に就職しストック・オプションをもらって勝負したり、自ら起業をしようということは、多くの学生は受け入れられない。

さらに、スキルが身に付く職種となるとなかなか難しい。

6. 金融機関に代わる優良な就職先の検討

安定して高給が約束され、スキルも身に付くという就職先は、当然なかなか見つからない。何らかの要素について妥協することになるのだろうが、以下、ある程度候補となり得る業界について検討してみた。

なお、外資系マーケティング職、電通・博報堂・キー局、大手デベロッパー等は除いている。何故なら、これらは入社難易度が高い上に、採用人数が少なく、大手金融機関に代われるようなキャパが無いからだ。

〇製薬会社(国内/外資)
製薬会社は給与水準が高く、競争は厳しいがそれなりの安定性やステータスは確保できる。また、外資系が多い業界なので、スキルを付けて将来転職することが可能な業界である。
しかし、問題は製薬会社の花形はR&Dであり、文系だとMR位しかポジションが無い。また、採用人数も大手でも理系を含めて50~100人程度であり、大手金融機関の志望者を全て吸収できる程の席数は無い。
MRという職種に抵抗が無ければ、一定数はこの業界に流れるのでは無いだろうか?

〇インフラ(通信、JR)
NTT、KDDI、ソフトバンク、JR東日本、JR東海あたりだろうか?
これらは安定しているし知名度も高いが、給与水準は大手金融機関と比べるとかなり見劣りしてしまう。
また、基本的にコース別採用では無いので、文系の場合は将来も役立つスキルが身に付く保証は無い。
もっとも、終身雇用を前提に、ある程度年収水準を下げても仕方が無いと考える学生は、こちらに回ってくる可能性がある。

〇一部の給与水準の高いメーカー
メーカーの場合、大手であっても、概して給与水準は高くはなく、下手をすると金融機関の半分位の水準の企業もある。
その中でも、例外的に給与水準の高いメーカーは存在する。
例えば、トヨタ、サントリー、キリン、味の素、旭硝子、新日鉄住金、キーエンスあたりである。
しかし、こういった企業は穴場でも何でもなく、最初から金融機関を志望しない学生達が目を付けているところなので、トップ学生だとは言え、内定がフリーパスというわけには行かない。
このため、このような一部の優良メーカーは数年後には難化する可能性がある。

〇監査法人(公認会計士)
ここは基本的に資格を取らないと行けないのだが、慶應大学経済学部は伝統的に公認会計士試験に強いので、ここを目指そうという学生が若干増えるかも知れない。

最後に

今の文系のトップ学生からすると、大手金融機関にとって代わる魅力的な業界・企業・職種というのは、なかなか見当たらない。
本来そういった学生が、ベンチャー企業や起業を目指せばいいのだが、日本では成功事例が圧倒的に少なく、そこまでリスクを取れる学生はすぐには増えそうもない。