1. 大和証券IBDの特徴
① ずっと業界第2位の位置をキープしているが…
大和証券というと、長年4大証券の一角を占め、業界ステータス的にも野村證券に次ぐナンバー2の位置をキープしている。
規模は十分大きく、案件にも恵まれるため、大和証券出身で外銀で活躍していた、或いは、現に活躍している人はいくらでもいる。
しかし、大和証券のIBDについては、三井住友銀行との確執があり、少々ややこしい位置にいる。
② 1999年に三井住友銀行との合弁で大和証券SMBCを創るが…
https://toyokeizai.net/articles/-/11007
住友グループと歴史的につながりの深い大和証券は、1999年に三井住友銀行と合弁で、IBDやグローバル・マーケッツ等の法人業務に特化した大和証券SMBCを設立した。
これによって、大和証券はリテール業務だけを、IBDを含むホールセール業務は大和証券と三井住友銀行が協働して対応することになった。
この背景としては、当時ライバルであった日興証券が外資系のシティグループと合弁でホールセール業務を対応することとなったことがあげられる。
当時は金融危機の時代で、四大証券の一角であった山一證券が自主廃業し、証券会社単独では生き残りが厳しいと考え、外資或いは国内の巨大金融グループと組んだ方がいいということであった。
こうして、しばらくはホールセール業務については、大和証券と三井住友銀行との合弁の大和証券SMBCで行っており、住友系の優良案件はガッチリと取り込むことができた。
しかし、上の東洋経済のリンク先の記事にあるように、リテールも含めて大和証券グループ全体を取り込もうという三井住友銀行の思惑と、経営の自主独立に価値を置こうとした大和証券グループとの思いが異なり、三井住友銀行と大和証券は協議離婚をすることなり、2009年に合弁の大和証券SMBCは解消されることになった。
③ 合弁解消以降は住友グループの優良案件は取れなくなってしまう…
その後は、三井住友銀行は、日興証券を買収し、SMBC日興証券と子会社化して、グループにおける証券ビジネス戦略を確立した。このため、三井住友銀行グループの優良案件は子会社のSMBC日興証券が引き受けられることとなった。
このため、従来は自らが引き受けることができた三井住友系の優良案件を大和証券は失うこととなってしまったのだ。
もともと、外資系証券会社とは異なり海外に強力なネットワークを持たない大和証券は、そのIBDビジネスにおいて従来と比べると優良な案件を取り込めなくなってしまっているのが現状である。
2. 大和証券IBDの現状
① それでもフルライン(M&A、IPO、CM)のIBD業務を実行
三井住友グループから離れてしまった大和証券のIBDあるが、現状でもフルラインのサービスを提供しており、それなりの大手としての実績を上げている。
このため、従来と比べるとスケール感や案件の豊富さではパワーダウンの印象は否めないが、ここで実績を積めば将来外銀に転身を図ることは可能である。
② 新卒の部門別採用も実施
現在、東大、一橋、早慶といったトップ校の学生の間では外銀が人気で、外銀志望者が国内系証券会社のコース別採用を併願している。このため、国内系証券会社のIBDとかグローバル・マーケッツの難易度は極めて高くなっている。
大和証券もIBDについては若干名(10~20名程度)のコース別採用を実施しており狭き門となっている。
3. 大和証券IBDの年収について
① 新卒は500万円スタート
大和証券のIBDに難関を突破して新卒入社を出来たとしても、野村證券IBDほどはもらえない。初年度は残業代を含めて500万円程度である。
そして、5年目位までは給料の上がり方は横並びかつ緩やかである。
しかし、IBDの場合には物凄く残業時間が長いので、残業代で稼ぐことができ、入社5年目で700~800万円に及ぶ。
② 6年目の課長代理になると1000万円も
入社6年目で課長代理になると、グッと給料は増え、年収1000万円にボーナス次第で到達可能である。
しかし、これは大半を残業代で稼いでいるため、昨今の働き方改革によって残業代抑制のプレッシャーがかかると、年収は下がってしまうこととなる。
社員の間では、この点に不安や不満を抱えている者もいるようだ。
③ 10年目以降に次長になると1200~1300万円?
大和証券の場合は。「課長」という役職名のポジションがなく、何故か「次長」という。早ければ入社10年目に次長に昇格し、トータル年収は1200~1300万円クラスとなる。
しかし、次長からは管理職となり、残業代がつかないポジションとなる。
大和証券IBDの場合、残業時間が長い人の場合には30歳で1100万円位の年収となるので、次長になったからといって大幅な年収増にはならないからモチベーションにかけるという意見もある。この点は、監査法人のシニアとマネージャーの関係に似ているかも知れない。
4. 大和証券IBDへの中途採用について(第二新卒含む)
① ホームページ上に中途採用が見当たらないが…
平成31年4月30日現在、大和証券のHPを見てもキャリア採用に関する情報は無い。従って、第二新卒を含む中途採用で大和証券IBDに入社するためには、他から求人情報を探さなければならない。
② ホームページに求人情報が無くとも可能性はあるのが一般だが…
大手金融機関の場合、リーマンショックのような厳しいリセッション期を除くと、HP上で採用していないからといってチャンスが全くないわけではない。
大手或いは独立系の転職エージェントと数多く、また、粘り強く接触をしていると転職のチャンスはパラパラと出てくることが多いのだ。
しかし、大和証券の場合はかなりコンサバなようで、歴史的に中途採用の枠は少ないようだ。周りを見渡しても、中途で大和証券のIBDに入ったという人の話は聞いたことが無い。
この点は、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、SMBC日興証券との大きな違いである。
もっとも、中途は行わないということでもないので、他の国内系証券会社のIBDと合わせてチャンスをうかがうのが良いのだと思う。
まとめ
大和証券IBDについては、伝統的に業界ナンバー2のポジションを維持してきたのだが、三井住友銀行との過去の歴史もあり、案件獲得能力的には微妙になっている。しかし、今でも依然として大手であるし、業界におけるネームヴァリューもある。
したがって、IBDでもグローバル・マーケッツでも、大和証券のホールセール部門に入社すると、金融プロフェッショナルとしてのスキルを獲得することは十分可能である。
このため、新卒でコース別採用に挑戦することは何ら問題が無い。
ただ、新卒で入れなかった場合には、中途となるとかなりの狭き門となる。求人情報は掴みにくいので、転職エージェントからの情報は当然として、大和IBDの人との人的コネクションがあれば是非有効活用してみたい。