経団連の終身雇用終了宣言によって、将来安泰な業界を探したくなるが、重要なのは職種・スキルではないだろうか?

1. 安定性を優先した就活を行っても将来はどうなるかわからない…

就活をする際は給料の高さやカッコ良さよりも安定性重視で選ぶ学生もいるだろう。
しかし、変化の激しい現代社会では、将来はどうなるかわからない。
最近では、製薬業界とか銀行でもリストラ不安の問題がでてきている。

また、8年前には原発の事故により、ここだけは絶対無くならないと誰もが思っていた電力会社でさえ存続の危機になった。

平成31年4月19日の経団連の終身雇用終了宣言を踏まえると、例外的に、将来も定年まで面倒をみてもらえそうな安泰な業界を探そうという気にもなる。

2. その企業がダメでも転職力が高いとOK

従って、「安定性」を考えるにあたっては、その業界や企業レベルだけで考えるのは不十分で、その企業がコケても同業他社に移りやすいか、また、その業界がコケても他の業界に移る力があるかといった転職力も加味しなければならないだろう。

外資コンサルとか外銀とかは一例で、その企業で定年までいるということは通常考えられない反面、クビになってもいくらでも行くところがある(年齢にもよるが…)ので安定性は高いと言えるかも知れない。

3. 業界レベルでの安定性を、とりあえず、東証33業種分類に沿って考えてみる。

証券コード協議会 : 業種別分類項目及び業種コード

https://ja.wikipedia.org/wiki/証券コード

こちらは証券業界で長年使われている業種分類である。水産・農林業からサービス業まで33業種に上場企業を分類している。

これで見ると、特殊だが、トップバッターの水産・農林業は安定していないかも知れないが、今後伸びていく可能性はあるので意外と転職力はあるかも知れない。

鉱業については、金脈でも見つかればいいが、そうでなければ厳しい業界なのではないだろうか。

建設業は安定していないが、企業数は中小まで含めると多く、どっかしらでは働けるかも知れない。

全体的に厳しいのが製造業であろう。食品とか一部の自動車、精密機器とかは安泰のようにも見えるが、いざ企業がダメになった場合には行くところが見つかりにくいだろう。

例えば、キリン、味の素、資生堂、トヨタ、キャノンあたりは人気があるけど、業界を超えた転職力まで身に付くとまでは言えない。

日本の誇る産業であった電気業界は、ソニーが復活してきたとは言え、国際的に競争が厳しい世界で先は読めない。他方、転職余力が高いとは言えないのではないだろうか。

4. 電力・ガス、運輸、通信などのインフラ系は安泰か?

安泰なはずだったが、原発事故の問題以降、このあたりでさえ安泰とはいえなくなった。多分大丈夫な気もするが、カルチャー的にもスキル的にも転職力は身に付かなそうである。

5. 金融はこれからますます厳しい…

地銀は特に、これから厳しい。スルガ銀行が新しい生存モデルを示したかと思いきや、あのような大不祥事になってしまったから、生き残る術が見つからない。
損保も長期的には少しずつ収益基盤が縮小していくおそれがある。自動運転が本当に普及すると、主力の自動車保険がやられかねない。

金融機関が全般に業績が厳しいのは、超低金利に伴う運用収益・利ザヤの減少ということが大きいので、市場環境の変化によって、金利水準が上がれば業績が急回復する可能性はある。
もっとも、その市場環境が継続するわけではなく、少子高齢化に伴う国内市場の縮小は避けられそうにないし、IT・AI・フィンテックというテクノロジーは確実に進化するだろうから、そうなると、実店舗や従業員を多く抱える大手金融機関の将来はなかなか楽観視できそうにない。

6. 意外に不安定な安定があるのは、サービス業の中の外食、IT?

個々の企業や業界は不安定かも知れないけど、その仕事自体は無くなりそうも無いのが、外食とITではないだろうか?
ITはいい意味でスキルがあれば、業界を超えてどこでも行けるだろう。特に、サイバー・セキュリティ関係のエンジニアは、将来も最も安泰な職業とまで言われていたりもする。

反対に、ローテクなスキルかも知れないが、外食業に詳しいと今いる会社がダメになっても、その時に流行っている会社に移れるのではないだろうか?
いくらテクノロジーが進化しても、人間が食事をしなくなるということは考え難いからだ。

こうやってみると、ITが将来を見たときに、一番転職力があるように思える。
もちろん、ITといってもコーディングができるエンジニア層或いはそれに関連する職種だ。人事とかでもエンジニア採用に強いと、競争力はあるだろう。
学生の間でもSierとかはそれなりに評価されているが、よくよく調べてみると、掘り出し物の会社が見つかるかも知れない。

まとめ

30年、40年先も安泰な業界を見つけることは難しい。
単なる業界選びによって将来の安全性を確保しようとするよりも、職種・スキルによって長期的な安全性を確保しようという方が手堅いのでは無いだろうか?

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