1. キャリア登録+筆記試験。新卒と何が違う?
三菱商事と三井物産が4月から、中途採用の募集をオープンにした。
この両社は毎年4~6月頃に期間を定めて中途採用を実施しているようだが、伊藤忠、住友商事、丸紅は一応通年募集のような形態となっている。
総合商社の中途採用で共通しているのは、まず、名称の多少の差はあるかも知れないが、キャリア登録ということでWeb上に必要な情報を入力しなければならない。普通の業種の中途採用と違って、いきなりレジュメを発送するというわけには行かない。新卒採用のES同様に、まずは全員登録が求められる。
また、丸紅の場合、「筆記テスト」も実施されるという。
ES+筆記試験/Webテストというと、新卒採用の様だが、実質は第二新卒の採用に近いからこれでいいということだろうか?
2. 募集中の部署について
① 丸紅の場合は広範囲に募集
<丸紅が募集中の部署一覧>
https://secure.marubeni-careers.com/u/job.phtml
丸紅が募集中の部署は、生活産業グループ、食料・アグリ・化学品グループ、電力・エネルギー・金属グループ、CDIO(次世代事業開発本部)、コーポレートスタッフグループだ。
全てのように見えるが、全本部が募集しているわけではない。
丸紅というと、アグリ、インフラ、輸送機を得意とする会社で、資源・エネルギー系はそれほど強くは無い。
今回、アグリ部門は募集をしているが、輸送機やインフラ部門が募集していないのは少し寂しい気がする。
② コーポレートについて
丸紅の今回の募集の特徴として、コーポレートといういわゆるバックオフィスは、経理、人事、IT、法務・コンプライアンスと広く募集をしている。
商社志望の学生は営業や投資に関する仕事を希望する者が多いので、バックオフィス系は地味目で余り人気がないのかも知れない。
とはいえ、法務部は弁護士資格或いは5年以上の法務経験を要求しており、高いスペックが求められるように思われる。結局、大手渉外事務所の若手アソシエイト(30歳前後)が最も有利であろうか?
但し、大手渉外事務所の場合、アソシエイでも年収2000万円位はもらえるので、転職すると大幅な年収ダウンとなってしまう。
また、経理部の採用条件等を見ても、5年程度の実務経験を求め、公認会計士や税理士資格の保有者を求めているようだ。従って、Big4系の監査法人或いは税理士法人の有資格者が最有力だろう。単に事業会社で経理をやっているぐらいではなかなか書面を通過できるとは思えず、狭き門のように思われる。
③ デジタル・イノベーション室
興味深いのは、三菱商事、住友商事、丸紅と、どこの商社もデジタル戦略系の部署で求人があることである。
あらゆる業種を手掛けることができるのが総合商社の強みであるのだが、この分野はどこも苦手としているのだろう。また、IT/ネットビジネス系で優秀な人材は、年功序列で副業禁止の総合商社を好まないかも知れない。
必要応募条件を見ると、情報工学・コンピューターサイエンスで修士号以上、AIアルゴリズム、データサイエンス領域での専門知識、2年以上の実務経験と、
好きなことを書いているが、果たしてそのような人材はいるのだろうか?
丸紅もそのあたりの事情は把握しているようで、実務経験を他部署が「5年」としているところを「2年」と短くしているので、そのような人材を見つけるのは難しいことは承知の上なのであろう。こういった人材を探すには、わざわざ登録させたり、筆記試験を課したりすると誰も来ないので、転職エージェントで一本釣りした方が効率的であろう。
現実的には、総合系コンサルファームでIT・ネットビジネスに強い若手が対象となるのだろうか。
④ ビジネス系の部署の求人について
物流企画、化学品、電力、金属本部系の部門については、スペックの高さというより、業務における経験、フィット感を重視であろうか?
当該業務を手掛ける業界・企業でのビジネス経験が重視されるのであろう。
業界が異なるとどうしようもないし、弁護士、公認会計士、コンサルといった資格・ハイスペック組はここには来ないであろうから、当業界で勤務していて商社に興味がある人にとってはチャンスとなろう。
3. 丸紅に転職を考えるに際しての留意点
これは、丸紅に限った話ではないが、総合商社に中途で入社する場合には、昇格・出世等については生え抜きが有利であることを念頭に置いた方がいい。
コンサバな総合商社は、やはり生え抜きが望ましいのである。
もっとも、部長以上は生え抜き社員でもほんの一部しか慣れないので、役員になるつもりで中途採用に応募する人はそれほど多くないかも知れない。
また、総合商社の場合、若い時はスペックの高さで競争力はあるかも知れないが、年を取るにつれ、転職能力は低下していくことに留意すべきである。
特定のプロフェッショナルスキルで勝負したいという人は、金融(IBD又はグローバル・マーケッツ他)とかコンサルの方が良いだろう。
最後に
総合商社の中途採用は、どこも競争率が高く狭き門であることには違いない。
もっとも、新卒の時と違って、希望する部門に応募できるし、当該業務の経験があればかなり有利である。
新卒の時とは業務のルールが異なるので、学生時代商社に入りたかったが内定を取れなかったという人は、リベンジするいい機会であろう。