フィンテックビジネスの1つであるロボアドバイザー市場に、日本の大手金融機関はいつ本格参入するのか?

序. 仮想通貨ビジネスの不祥事や市況低迷の影響で、日本のフィンテック・ビジネスは盛り上がっていない?

フィンテックというと、かなり大きなベンチャー/ハイテクビジネスの一分野であり、2~3年前には「フィンテック入門」というムック本とか、フィンテックを特集した経済誌が書店の店頭に山積みされていたように記憶している。

しかし、仮想通貨ビジネスにおけるコインチェック事件や仮想通貨市場の不振が原因なのかはよくわからないが、日本では最近、フィンテックというテーマがあまり盛り上がっていないのではなかろうか?

フィンテックビジネスの1つに、いわゆるロボアドバイザーというビジネスがある。ロボアドバイザーとは、資産配分・投資商品の選定・発注・リバランスという資産運用を、一貫して自動で行ってくれる資産運用サービスである。

日本では、ウェルスナビ、お金のデザイン(テオ:THEO)、楽ラップ、ダイワファンドラップ オンラインなどがある。

1. 日本のロボアドバイザー市場拡大のカギは大手金融機関が参入することである。

この2年間位でようやく立ち上がり始めた日本のロボアドバイザー市場であるが、最大手のウェルスナビ社の預かり資産が2019年の4月時点で1400億円程度である。ウェルスナビは沢村一樹さんのTVCMが結構流れて知名度が上がっているような気もするが、まだまだごく一部の人が始めているに過ぎない。

金融商品は、消費財のように短時間で浸透させることは難しいので、日本のロボアドバイザー市場が急速に拡大するためには、大手金融機関が参入することが必要だと考えられる。

2. 大手金融機関が牽引するアメリカのロボアドバイザー市場

Personal Capital $7.5 billion AUM
Wealthfront $10 billion AUM
Betterment $14 billion AUM
Schwab Intelligent Portfolio $33.3 billion AUM
Vanguard Personal Advisor Securites $112 billion AUM

(出所:RoboAdvisorPros.comより)

この表は、アメリカの各ロボアドバイザー企業の預かり資産の金額をまとめたものである(2018年8月時点)。
独立系大手のベターメント社の預かり資産額は140憶ドル(約1兆5000億円)、ウェルスフロント社の預かり資産額は100億ドル(約1兆1000億円)となっている。

注目されるのは、Schwab Intelligent PortfoliosとVanguard Personal Advisor Servicesである。前者はディスカウント・ブローカー大手のチャールズ・シュワブ社の運営であり、後者は投資信託大手のバンガード社の運営である。

預かり資産額は、それぞれ、333憶ドル(約3兆5000億円)、1120憶ドル(約12兆円)と既に巨大な金額となっている。

米国では、既存の大手金融機関が運営するロボアドバイザー・サービスの規模が、独立系のそれを遥かに上回っているのである。

3. 既存の大手金融機関の強みは多くの期得意顧客を抱えていること。

なぜ米国の場合、既存の金融機関が独立系のロボアドバイザーよりも、事業拡大に成功しているのだろうか?

大手の場合には知名度が高く信頼性が高いという優位性がある。それ以上に大きいのが膨大な既得意顧客を抱えているからである。

もちろん、ロボアドバイザー事業の対象顧客は既存のメインの顧客層よりも年齢が若く資産運用規模も小さいという課題はある。

しかし、こういった若い顧客層は将来メインの顧客層に成長していく可能性があり、大手の金融機関は将来を見据えて、こういった新しい顧客層を対象にマーケティングを展開しているのである。

日本の金融機関も知名度は高く、膨大な既得意顧客を抱えている。また、顧客層の高齢化に備えて、若い顧客層を育てていきたいという営業上のニーズはある。

現状日本の、ロボアドバイザー事業の市場規模は小さく、様子見をしているのだろうが、米国の状況等は当然把握していると思われるので、どこかのタイミングで本格的に参入することが予想される。そうなると、日本のロボアドバイザー・サービスの浸透度は飛躍的に高まる可能性があるだろう。

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