1. US CPAがあれば監査法人には基本的に転職できそうであるが…
① 監査法人に転職するのが多数であるが…
日本の公認会計士試験は依然として難関であり、仕事を持ちながら合格するのはかなり難しい。
ところが、USCPAの場合には相対的に合格しやすく、英語も勉強できるので、社会人がこれを取得することによってキャリアアップを図ることは十分に計算はできる。
US CPAを取得できれば、年齢が30歳ちょいくらいまでなら、監査法人に転職することは十分可能であろう。
② しかし、監査法人の場合はアップサイドが限られる?
監査法人の場合、最初は500万円代スタートになるが、シニアスタッフで残業が多い部署であれば年収は1000万円に近づくし、入社7~8年でマネージャーに昇格すれば1000~1100万円位の年俸となる。
但し、贅沢を言えば、監査法人の場合ここから先の年収アップは厳しくなる。
1ランク上のシニア・マネージャーになれば1200~1400万円位になるが、上が詰まっていることもあり、特に近年はシニア・マネージャーへの昇格は厳しくなっている。ましてや、パートナーへの昇進は計算できなくなっている。
そこで、若い間にUS CPAを取得できた優秀で意欲のある者は、更に上の待遇を求めて、あわよくば人気のIBDのポジションに就きたいものだ。
2. US CPAで外銀IBDに転職(第二新卒含む)することは可能か?
① US CPAの資格だけでは難しい
当然かも知れないが、US CPAの資格「だけ」で、外銀IBDに転職するのはまず無理である。新卒では、東大でも圧倒的に多くの者が落とされる外銀IBDである。外銀IBDのバンカーには、弁護士資格をもっていたり、ハーバードやウォートンのような最上位校のMBA保有者がゴロゴロいるので、US CPAだけでは何のインパクトもない。
もちろん、外銀IBDの中にはUS CPA保有者もいるだろうが、それは東大で英語力があり自己啓発の目的で取得したようなケースであり、他の要素が採用要因になっているような場合である。
② しかし、国内系証券会社のIBDを経由すると当然可能性はある
しかし、だからといって外銀IBDを諦める必要は無い。一旦、野村、大和、みずほ等の国内系証券会社のIBDで実績を上げれば、将来外銀IBDに転職できる可能性はある。
もちろん、後述の通り、国内系証券会社のIBDもかなりの難関であるので、十分な準備をする必要がある。
国内系証券会社のIBD経由ででも、外銀IBDのポジションに就くことができれば、年収2000万円以上が実現できる。これは、監査法人の場合だと、なれたとしても40歳以上の最上位ポジションであるパートナーの水準であるので、回りくどくても挑戦する価値はあるだろう。
③ FASから外銀IBDは難しいと考えた方が良い
監査法人系でM&A関連の業務を展開するFASから外銀IBDを狙えるかについて気になる人がいるかも知れない。FASであれば、USCPAでも就職することは可能だ。しかし、残念ながらFASから外銀IBDに行くのは難しいと考えた方がいい。業務内容が異なるし、FASから外銀IBDに行ったケースは聞かないからだ。
他方、外銀IBDからFASに行くケースはあるが、それは年収がダウンするような場合である。
3. 国内系証券会社のIBDに転職(第二新卒含む)できるか?
① 現職が金融機関で、スペックが高ければ可能性はある
国内系証券会社のIBDも就活において、外銀IBDと変わらない難関となっている。外銀IBDの枠が少なく、多くの者が併願するため、若干名しか採用しない国内系証券会社のIBDも十分狭き門なのだ。
このため、外銀IBD同様に、USCPA「だけ」では転職は難しいが、金融機関に勤務しておりスペックが高ければ、USCPAもプラスに左右するだろう。
例えば、東大、早慶以上の学歴で、メガバンクのGCFとか市場部門にいて、USCPAもあるような場合には、書面通過できる可能性はあるだろう。
もっとも、IBD業務の未経験者であるので、若ければ若い方がよく、挑戦するならば27-28歳位までに行いたいところだ。そのためには、USCPAは若い時に取得することが前提となろう。
簡単では無いが、国内系証券会社のIBDに転職できた場合には総合職でも30代で年収1500万円は十分可能である。さらに、プロ職に転換できた場合には外銀に準じた給与体系となり、年収2000~3000万円も可能となる。
このため、挑戦する価値は十分にある。
② 事業会社からは更に厳しいと思われる…
昔、といっても80年代頃の話だが、この頃は、NEC、神戸製鋼、新日鉄、三菱自動車、コマツといった事業会社から普通に大手証券会社に中途採用で転職できた時代があった。
今では当然、それは難しい話で、金融機関以外の事業会社から国内系証券会社のIBDを狙うとなると、かなりのスペックが要求される。
また、他業界からということになるので、25歳までの第二新卒的な早い段階での転職が望まれる。
例えば、東大でNTT等のインフラ系の事業会社の財務・経営企画的な部署にいて、英語が堪能でUSCPAがあるというようなスペックであれば、書類は通過できる可能性がある。
③ 国内系の場合は、FASからの転職は可能である
外銀と違って、FASからの国内系証券会社のIBDへの転職は可能性がある。USCPAがあればFASへの転職は十分狙えるので、これが一番近道かも知れない。
まとめ
USCPAそれ自体では、外銀や国内系のIBDに行ける程の資格としての強みはないかも知れない。しかし、他の要素、学歴、英語力、職歴に加えて、USCPAがあればプラスに左右することは間違いない。
国内系IBDに転職する場合、IBDの実績がなければ若ければ若いほどいい。
もっとも、第二新卒の場合は、景況感によって採用する時とそうでない時があるので、転職エージェントに登録して、チャンスを失わないように留意する必要がある。