1. 上位校の間では、メガバンクが第一志望という学生は少ないのでは?
① 外銀・外コン・総合商社、そして国内系証券のコース別採用
東大、一橋、早慶といった上位校の学生の間では、結果的に多くの学生がメガバンクに就職する者の、当初よりメガバンクが第一志望であった学生はほとんどいないようである。
何故なら、今の学生は、将来転職が可能なプロフェッショナル・スキルを習得し、若いうちから活躍でき、若いうちから高給がもらえる業種・企業を希望するからだという。
そのような業界・企業は限られ、外銀・外コン、そして、国内系証券会社のコース別採用に人気が集中する。
ところが、これらの採用数は限られており、外銀や国内系証券会社のコース別採用に多くの者が全落ちし、そして、メガバンク(非コース別の総合職)に行くことになるという。
② 将来に対する不安
メガバンクに対する上位校の学生の人気があまり高くない理由として、将来に対する不安もあるようだ。
メガバンクというのは典型的な国内でしか稼ぐことが難しい、規制産業であって、将来少子高齢化の影響により国内のパイが縮小し、また、近年騒がれるIT/AIの技術の進歩によって、余剰となり得る経営資源を多く抱えているからだ。
2. それにもかかわらず、第二新卒でメガバンクを狙う理由はあるのか?
現在メガバンクに勤務をしている若手社員は、メガバンクのGCFや市場部門への社内異動を狙うか、或いは、他業界に転職することによるキャリアアップを考えているだろう。
他方、現在メーカーやサービス業に従事している若手社員にとっては、メガバンクも十分魅力的な転職先となり得る場合がある。その理由としては、以下のものが挙げられる。
① 相対的に高い給与水準
上位校からメガバンクに就職した者は更に上を狙おうとしているかも知れないが、今でもメガバンクの給与水準は日本の企業において上位にある。
メガバンクの場合、30過ぎで1000万円に到達し、40代だと1200~1500万円にもなる。
これは、メーカーや金融以外のサービス業からすると、大変羨ましい水準である。メーカーの場合には、年収1000万円が大変遠く、年収1500万円ともなると部長以上なので、生涯到達しないまま終わる者も少なくない。
従って、学生時代に就職活動の準備が不十分だったり、あまり考えないで、
「みんなが行くから金融は嫌だ」という理由からメーカーその他に就職する者もいる。
しかし、金融以外の仕事が必ずしも面白い訳でも無く、将来の転職スキルが身に付くわけでもない。そして、給与水準がメガバンクと比べると大きく劣る。
そうであれば、第二新卒でチャンスがあれば、今のうちにメガバンクに転職したいと考える者はいるだろう。
② 20代なら、国内系の運用会社(バイサイド)や証券会社への転職も可能?
メガバンクのGCF(グローバル・コーポレート・ファイナンス)とか、マーケット部門から、直接外銀に転職することは極めて難しい。
何故なら、銀行業と外銀(証券業)とでは事業内容(免許)が異なり、外銀のIBDやマーケット部門とでは、業務内容や求められるスキルが異なるからである。
外銀では新卒採用の若手が激務の中、厳しい社内競争にさらされているので、同じ業種である国内系証券会社ならまだしも、業務内容が異なるメガバンクでは外銀新卒に追いつくのが難しいのである。
しかし、メガバンクのGCFとかマーケット部門にいたならば、国内系の運用会社(バイサイド)或いは国内系証券会社のIBD又はマーケット部門への転職は可能性がある(もちろん20代のうちが望ましいが…)。
国内系の運用会社や国内系の証券会社に転職すると、将来、外銀や外資系運用会社に転身すること可能となるだろう。
これは、メーカーとか他のサービス業界(除くコンサル)にいたならば、まず不可能なキャリアパスである。メガバンクに行けば、一歩前進となるのは間違いない。
新卒でメガバンクに入社し、リテール部門に配属されると、そこからGCFとか市場部門に転勤するのは至難の業である。
しかし、不公平のような気もするが、他業界から第二新卒でメガバンクに転職すると、配属先が決まっているので、いきなり花形部署でのスタートが可能となる。これは大変有利な点だ。
③ メガバンクにはネームバリューがある
これはある程度若いうちという限定は付くが、メガバンクのネームヴァリューはそれなりに高く、金融スキルの有無とは関係なく、一定のポテンシャルや基本的な金融リテラシーがあると見てもらえる。
このため、ベンチャー企業(非上場段階の狭義のベンチャー企業)などでも、メガバンクにいたら、財務系、あわよくばCFOでのポジションでの入社も可能な場合がある。
この点は、一般的なメーカーやサービス業界にいるよりも優位であろう。
3. どういった人達であれば、メガバンクに第二新卒として採用されるか?
① 基本的にスペックの高さで書類選考は決まる
本来、中途採用というのは職務経験やスキルが重視されるのであるが、第二新卒は特殊であり、職務経験等は無いのを前提で、ポテンシャル採用をするものである。
したがって、就活の時と同様に、現在の会社名と配属先に加えて、学歴や資格も重要なファクターとなる。もっとも、学歴の重要性は就活時と比べると相対的には下がる。最も重要なのは、現在の会社名と所属部署である。
ここでの会社名というのは、就職偏差値的なものである。
銀行業と直接関係がなくても、総合商社、大手マスコミ、サントリー、味の素等の人気メーカー、インフラ等であれば書類審査において有利である。
また、英語力(TOEIC)とか資格(US CPAとか証券アナリスト)も重要である。
② 金融に関するリテラシーは高めておく必要がある
第二新卒の場合は、経験者採用では無いので、当該業務に対する知識は問われないものの、金融に関するリテラシーは高めておく必要がある。
そうでないと、面接において深い志望動機や将来のキャリアが語れないからである。この点は、就活と同様である。
従って、各銀行のHPのIRのところから、四半期ごとの決算情報、中期経営計画は熟読しておく必要がある。
加えて、証券アナリストとかUS CPA或いは簿記1級などを取得する等、金融に関する基礎的なスキルを磨いておいた方が良い。こういったものは、業界に入った後必要となるので、無駄にはならない。
③ 書類選考をパスすると、残りは面接
第二新卒も中途採用であり、新卒のような面倒なWebテストとか、グループ・ディスカッション、或いは、外銀で見られるジョブというグループ作業は無い。
書類選考をクリアすると、後は面接だけだ。
そうなると、重要になってくるのがプレゼンテーション能力である。ロジカルでわかりやすい話し方と、相手から嫌われないようにするスキルが必要となる。
面接では「一緒に働きたいかどうか」が判断されるので、好感度も重要な要素となる。
外銀・外コン・総合商社から、第二新卒でメガバンクを狙うものは多くは無いだろう。しかし、メガバンクの第二新卒はそれなりに狭き門であろうから、現在の会社名・学歴については、それなりに高いレベルのものが要求されるであろう。
このあたりのレベル感については、転職エージェントに相談すれば、過去にどのようなスペックの者が採用されたかの情報を持っているので、いろいろアドバイスはもらえるであろう。
4. 狙い目の部門について
それでは、メガバンクに第二新卒で転職を図る場合、どういった部門を狙うのがキャリア形成上得策であろうか?
部署名等は、銀行によって名称が異なるかも知れないが、基本的な組織構造は類似しているので、三菱UFJ銀行の組織図を例に考えてみよう。
https://www.bk.mufg.jp/kigyou/company/pdf/organization.pdf
① 本命はGCF、マーケット部門か?
いわゆる外銀ではIBD、グローバル・マーケッツに相応する部門である。
GCFというのはみずほ銀行の名称なので、三菱UFJ銀行の組織図でいうと、「コーポレートバンキング部門」がこれに該当するだろう。
もっとも、かなりの多くの部署を傘下に抱える部門であるので、将来の転職価値を考えると、営業第一~営業第五本部がいいだろうか?これらはビジネス部門なので、顧客と直接接する部門の方が市場価値が高い。
銀行内部での評価は異なるかも知れないが、「企画」と名の付く部署は直接収益を稼ぐ部署ではないので、転職価値は弱くなるのである。
三菱UFJ銀行の場合、「市場部門」というのが、外銀でいうグローバル・マーケッツに近い部門であろう。ここでも、「企画」系よりも直接運用に近い部門の方が転職市場における価値は高い。
いずれにしても、GCFとかコーポレートバンキングとかは、就活段階では「IBDぽい仕事」と説明されるが、当然、銀行と証券会社の違いがあり、外銀のIBDの即戦力にはなり得ない。市場部門についても同様である。
このため、GCFにせよ市場部門にせよ、ダイレクトで外銀とか外資系運用会社への転職は難しく、一旦、国内系証券会社や国内系運用会社に転職してから、外資を目指す方がいい。
もちろん、銀行の中ではエリート部門なので、そこの部門を中心にメガバンクで働くという選択肢もある。
② 穴場は、ITシステムに関する企画系の部門
第二新卒で募集されるかどうかはわからないが、穴場はITやシステムに関する企画部門である。三菱UFJ銀行の組織図でいうと、「システム本部」とか「デジタル企画部」である。
この場合、将来的な狙いは「外資系金融」ではなく、「コンサル」或いは「ITベンチャー」だ。
メガバンクは、ITシステム、ITシステムコンサルティングに関する最大の顧客だ。この分野について詳しいと、転職でPwCコンサルティング、アクセンチュア、デロイト・トーマツコンサルティングといった総合系ファームへマネージャークラスでの転身が可能となる。
やはり、「中の人」が詳しいわけだし、ネットワークもできるからである。
また、仮想通貨がこけたこともあり、一時ほどは盛り上がっていないかもしれないが、フィンテックというのは息の長いテーマであり、まだまだこれからいろいろなベンチャーが登場するだろう。
このため、銀行のITシステムやデジタル・フォーメーション(フィンテック対応)に明るいと、幹部としてフィンテックベンチャーに転職することも可能となる。そうすれば、相場にもよるがストック・オプションでワンチャン狙える可能性がある。
また、ITとかシステム周りは、ほとんどの銀行員はサッパリなので、ここでひと頑張りしてそれなりの地位を築くと、居心地がいいのではないだろうか。
③ あまりおすすめでないのが、内部管理部門(企画、人事、経理、コンプライアンス)
そもそも、第二新卒において採用されることは無いかも知れないが、企画、人事、経理、コンプライアンスという管理部門はあまりおすすめではない。
何故なら、銀行特有のノウハウが付かないので、転職価値が高まらないからである。
また、メーカーと違って、経理や人事もローテーションの一環であって、経理や人事のスペシャリストになれるわけでもないからである。
5. 転職の方法
現在(平成31年4月15日現在)のところ、各メガバンクの第二新卒とか中途採用情報は出ていない。だからといって、今年は外部から採用しないというわけではない。
みずほ銀行を始め、業績がイマイチであるし、今は人事異動の時期なので、外部から採用をするタイミングではないということだ。
しばらく、転職エージェントに登録しておいたり、ヘッドハンターと随時コンタクトを取るなどして、その時に備えておくべきである。
転職エージェントを通すと、フィーが余分にかかるから不利だというのは正しいとは思えない。メガバンクはどこもリクルートやJACといった大手転職エージェントとは付き合いがあるので、広く登録してチャンスを拡げておくべきだ。
まとめ
メガバンクの場合、直接外資系金融を狙うのは難しいかも知れないが、国内系金融機関を挟んで外資系に挑戦するということは可能である(市場部門やGCFの場合)。
また、給与水準も特定の最上位金融機関や総合商社などを除くと、まだまだ日本企業の中ではトップクラスだ。
このため、就活の際に何らかの事情で金融機関に就職せず、現在後悔している若手社員(特に入社1~2年目)は結構いるのではないだろうか?
メガバンクの第二新卒での採用は、狭き門ではあろうが、早期にキャリアチェンジをする有効な選択肢の一つである。
就活で失敗したと考えている者は、十分な準備をした上で、挑戦してもいいのではないだろうか?