1. 野村證券の中途採用の場合、バックオフィスにも妙味が?
国内系証券会社への転職というと、IBDとか機関投資家セールスといったいわゆるフロント部門を想像する人が多いかも知れない。
しかし、野村證券の場合には、バックオフィスであるコンプライアンス部門についても中途採用の可能性がありそうだ。
例えば、平成31年4月11日現在、以下のようなコンプライアンスのポジションがオープンになっている。
https://progres02.jposting.net/pgnomura/u/job.phtml
2. 野村證券のコンプライアンス部門の年収
現在募集中のポジションについては、アナリスト、アソシエイト、VP、EDとMD以外のポジションが広く対象となっている。
野村證券の場合、外銀ほどはバックとフロントとの年収格差が激しくなく、ベースサラリーと言われる基本給については、タイトルに応じてIBDと同一水準である。
従って、入社3年目位までのアナリストの場合、400~700万円、
アソシエイトの場合、800~1000万円、VPの場合、1200~1400万円、
EDの場合は、1600~1800万円位となっている。
IBDのようなフロント部門と異なるのはボーナス水準である。
採用対象のボリュームゾーンであると思料されるアソシエイトの場合はトータル年収が千数百万円、VPの場合には1600~1800万円位の着地になるのではないだろうか?
EDのようなシニアなポジションも中途採用の対象とされていることは注目され、この場合、トータル年収は2000万円を越えると思われる。
全体的に、外銀のコンプライアンスと比べると、若干少ないようであるが、会社やポジションの安定性を考えると十分魅力のあるポジションではないだろうか?
3. オープンとなっているコンプライアンス業務の内容について
① 4種類のポジションがオープンになっている
Web上では、4種類の職種についてのポジションがある。
このうち、「コンプライアンス・オフィサー」というのは、アソシエイトかVPが対象であるのに対して、「コンプライアンス・マネージャー」というのは、VPかEDが対象で1ランクシニアなポジションとなっている。
「コンプライアンス・オフィサー」の職務内容は、いわゆる売買管理であり、相場操縦やインサイダー取引管理の業務であり、主としてエクイティ業務に係るコンプライアンスである。
他方、「コンプライアンス・マネージャー」というのは、トレーディング部門に対するコンプライアンスであり、株式、債券、デリバティブの全てのプロダクトについて広く募集されている。
こちらは、「海外拠点のコンプライアンスと連携するための英語能力が必要」とあり、高度な英語力が求められる点が特徴である。
また、AMLコンプライアンスについても広く募集されており、こちらも英語力が必須の模様である。
なお、引受審査関連のポジションがあるが、これは狭義のコンプライアンスというより、IBD内の内部管理業務に近い。
② 中途採用されるための職務経験、能力について
これは、野村證券に限った話ではないが、社内に十分に人材がいるのに、わざわざ社外から採用を考えるということは、既存の社員が持っていないようなスキルを持った人が欲しいということである。
コンプライアンスの場合、それを一言で言うと、「英語力」であろう。国内系の金融機関の場合、法務・コンプライアンスや審査部門には優秀な社員はいるのであるが、英語が苦手な人が多い。帰国子女とか留学経験がある有能な社員は、IBDとか機関投資家営業といったフロント部門を志向する人が多い。このため、英語ができて、かつ、法務・コンプライアンス業務に精通した人材が社内で不足しがちなのである。
現在募集中のポジションでいうと、「コンプライアンス・マネージャー」とAMLコンプライアンスは英語力を求めている模様であり、対象者となると現職の外銀のコンプライアンス業務従事者か、元外銀で現在みずほ証券とかSMBC日興証券に勤務中の者が対象になるのではなかろうか?
AMLについては、銀行の人が強い分野なので、シティバンクのような外資系商業銀行のコンプライアンス担当者も候補となるだろう。
英語ができなくても採用される可能性があるのは、「コンプライアンス・オフィサー」のポジションであろう。こちらは、売買管理の仕事であり、コンタクトするのは社内、東京証券取引所、監視委員会といったところがメインであろう。従って、英語はできた方が望ましいが、特にアソシエイトのポジションであれば英語が弱くても他が良ければ採用される可能性はあるだろう。
③ 野村證券のコンプライアンス部門で採用された後のキャリアプランについて
外銀よりは若干年俸水準は落ちるものの、安定性を考慮すれば、長くいてもいいのではないだろうか?
もちろん、転職することも可能であり、その場合には外銀が対象となるのであろう。
また、リーマンショック前と比べると、グローバルでの仕事の割合が多くなっているので、海外勤務の可能性も残されているだろう。
まとめ
新卒の場合、業種でいうと「外銀」、職種でいうと「IBD」に過度に集中しがちである。当然、トップ学生でも競争が厳しく、「外銀」に全落ちし、国内系証券会社のIBD或いはマーケット系のポジションにもなかなか合格できないという状況にある。
しかし、長い目で考えると、バックオフィスでもそれなりの高収入を得られる途はあるし、生涯賃金で考えるとフロント部門よりも多いケースは十分にある。
バックオフィスは人気が無いので、逆に穴場という考え方もある。
コンプライアンス部門については、将来、当局の管理が緩くなることは基本的に考えられず、需要が弱まらないという魅力がある。
興味がある学生や若手社員は証券会社のコンプライアンスのキャリアに目を向けてもいいのではないだろうか?