監査法人、金融、ベンチャーCFO、独立?公認会計士が年収2000万を実現するキャリアプランについて

1. 年収1000万円は堅いが、年収2000万円は遠い?

公認会計士は一般的には高収入とされており、監査法人に勤めた場合、初年度の年収は500万円を越えるし、7~8年で1000万円にはほぼ全員到達できる。

他方、そこから先は年収の伸びは鈍化し、年収2000万円となるとかなり厳しそうである。以下のリンクは公認会計士の専門学校であるTACのものである。ここで示されている年収の最高レンジは「1500万円以上~」となっており、公認会計士にポジティブなバイアスが掛かっているTACでさえも、年収2000万円実現については明示していない。

https://www.tac-school.co.jp/kouza_kaikei/kaikei_cpa/kaikei_contents_annual_income.html

そこで、ここでは公認会計士が年収2000万円を実現できそうなキャリアプランについて様々な角度から検証していきたい。

2. 公認会計士が年収2000万円を達成するためのキャリアプラン

公認会計士の場合、オーソドックスな監査法人勤務から金融、事業会社、ベンチャーへの転職、起業・独立までいろいろなキャリアプランを描くことができる。
そのうち、年収2000万円実現の可能性があるパターンとしては、以下で大体カバーできるのではないだろうか?

(1) 監査法人のパートナー
(2) 金融機関に転職する場合
   ・外銀IBD
   ・外銀ファイナンス(経理)
   ・外資系運用会社ファイナンス(経理)
   ・国内系証券会社IBD(プロ職)
(3) 外資系事業会社ファイナンス(経理・財務)
(4) ベンチャー企業CFO
(5) 独立・起業

3. 監査法人でパートナーを目指すプラン

公認会計士にとって最もオーソドックスなキャリアが大手監査法人に勤務することだろう。その場合、年収とタイトルが比例するので、昇格していくことが必要となる。

シニアアソシエイトの3年目位で年収1000万円には到達する。しかし、そこから1ランク上のマネージャーに昇格しても、残業代が付かなくなるため、年収は950万円~1100万円位と、あまり上昇しない。

そこから更に頑張って、シニア・マネージャーに昇格すれば、年収1200~1300万円位にはなるが、まだまだ年収2000万円にはほど遠い。

そうなると、最高位のパートナーになる他ないが、一般のパートナーだと年収1500万円~2000万円、シニア・パートナーで2000万円~3000万円程度ではないだろうか。ここまで到達するのは難しく、しかも20年位かかってしまうので、待ちきれない場合には、監査法人以外の選択肢を検討することになるだろう。

4. 金融機関に転職する場合

金融機関に転職した場合の年収イメージは、こちらの過去記事の通りである。

https://career21.jp/2019-04-10-160636

外銀IBDに転職することに成功すれば、年収2000万円はほぼ実現可能であろう。
また、外銀のIBDではなくファイナンス(経理)に転職した場合でも、IBDよりは低いが、VPになると年収2000万円はほぼ実現できるだろう。

外資系金融機関の場合、バイサイド、すなわち外資系の運用会社という選択肢もある。全般的に外銀と比べて年収は落ちるので、ファイナンス(経理)でのVPだと年収2000万円は上限水準であり、できればSVP/Directorクラスに昇格したいところである。

国内系金融機関の場合には、年収2000万円の途はかなり制限される。普通の総合職の場合には、IBDでも管理職で1500~1600万円レベルなら可能であるが、年収2000万円は総合職だと部長クラス、或いは、プロ職のEDレベルにならなければならない。もっとも、リスク・リターンのバランスは取れたキャリアだと考えられる。

5. 外資系の事業会社に転職する場合

外資系企業の場合も、国内系企業と同様に、年収水準は金融機関と比べて事業会社の場合は相対的に低くなる。
このため、外資系と言っても、なかなか年収2000万円を達成するのは難しいのであるが、GAFA、マイクロソフト、シスコシステムズ、オラクルあたりのIT系企業の場合にはRSU(ボーナスの一部として支給される自社株式)を含めるとファイナンス(経理)のシニアポジションであれば到達可能である。

外資系の場合には同じポジションでも人によってかなりの給与差がある。というのは、前職での年収水準に基づいて給与額を決定するので、前職の給与水準が低いとそれに引きずられて不利である。

このため、外資系事業会社を狙う場合には、シニア・マネージャーあたりから部長位のポジションで移れるところを探したいところだ。

6. ベンチャーCFOの場合

公認会計士の転職先の選択肢の一つとして、ベンチャー企業のCFOポジションについて言及しているWeb情報等を散見するが、これは要注意である。

というのは、未上場のベンチャー企業の場合、CXOとは言え、年収2000万円どころか、年収1000万円がもらえればいい方だからである。

結局、ストック・オプション勝負ということになるが、これはかなりの水物である。IPOまで無事に到達できるベンチャー企業はほんの一握りであるし、仮にIPOまで行けたとしてもそれまでに長い年数を要することも少なくない。

そのベンチャー企業でうまく行かなくても、公認会計士の場合には、次の転職先には事欠かないだろうが、ベンチャーでの失敗はキャリア上プラスにならない場合が多い。

従って、安易に年収ダウンを受け入れた転職にならないよう、また、ストック・オプションについては十分な分量をもらえるよう、転職前に慎重に吟味をする必要がある。

7. 独立・起業を目指す場合

https://heikinnenshu.jp/shi/kaikeishi.html

ここでいう独立というのは、税務・監査・コンサル等を業務内容として独立する場合を言うのであるが、これも要注意である。

こちらのサイトには、独立して「成功」した場合には「年収2000万円くらいになるそうです。」とあるが、かなり抽象的である。何をもって「成功」というのかが不明であるし、独立して監査業務を受注するのは容易ではなく、結局税理士業務がメインになることが多いのではないだろうか?その場合は、既存の税理士との戦いになり、飽和状態に近い税務マーケットに参入して成功するのはそれほど容易なこととは思えない。

もっとも、個人事務所を独立・開業した場合には、経費が使えるようになるメリットがあるので、そこそこの売上を実現することができれば、この点は魅力であろう。

年収2000万円ではなく、遥か上、例えば資産数億を狙うというのであれば、ベンチャー起業という選択肢もあるだろう。この場合、公認会計士資格が直接ものをいう世界ではないが、IPOだけではなくM&AによるEXITも増えてきている今日においては、興味がある人は狙ってもいいだろう。
公認会計士の場合、監査法人のネットワークを通じて、有力VCと接点を持つことも可能であろう。

まとめ

どんな職業においても、年収2000万円というのは結構ハードルが高い。
一番堅いキャリアプランは、金融機関を狙うことではないだろうか?

ただ、そのためには英語を磨いておく必要がある。公認会計士の場合、帰国子女等でなければ、資格試験に労力を費やすため、なかなか英語にまで手が回らないことが多いからである。

また、年収2000万円には届かない場合もあるが、外資系IT大手のシニア経理ポジションというのも悪くないと思われる。

アップサイドに拘るのであれば、ベンチャーCFOとか独立起業という途もあるが、これらは全くの水物であるので、何とも言えない。

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