野村證券のIBD(投資銀行部門)に中途採用されるために必要なキャリア(職歴、資格他)について

1. 野村證券のIBDの魅力

① 安定していて高水準な給与レベル

野村證券は常時部門別で中途採用を行っている。人気のIBDの場合、外銀のIBDには敵わないものの、安定していて高水準な給与は魅力的である。

例えば、入社4年目~7年目のアソシエイトレベルの場合、基本給が800~1000万円で、年1回のインセンティブ・ボーナスが100万~600万円である。年収だと、1000~1300万円が20代後半でもらえるわけである。そして、順調だと30代前半ではVPに昇格できるため、ベースで1200~1400万円、ボーナスが200~700万円位と、年収1500万円を突破する。

更にその上のEDになれば、年収は2000万円を越える。
外資のようなリストラリスクがなく、終身雇用であることを考えると、大変魅力的な給与水準だ。

② 豊富なM&A案件のパイプラインと日本におけるネームバリューの高さ

野村證券は国内ではダントツナンバー1の証券会社である。国内案件については、ゴールドマン・サックスも敵わない。豊富な上場企業とのネットワークを有し、M&Aの案件には事欠かない。また、記念碑的なディールに関与できるチャンスもあるし、国内ではネームバリューが高い。

このため、野村のIBDで頑張れば、VP以上で外銀に転職する可能性もある。要するに、良質な案件に数多く関わるチャンスがあり、自分の実務経験やスキルを磨くことが十分可能な環境である。

2. 野村證券IBDで中途採用されるための条件

このような魅力的な野村證券のIBDのポジションであるが、中途採用で雇ってもらうにはハードルは高い。
例えば、平成31年4月10日時点でオープンとなっていた、M&Aバンカーのポジション(アソシエイト/VP)には以下のような条件が付されている。(なお、2020年5月26日時点においては、野村證券の採用HP上ではIBD関連の求人情報は無い)。

① 職歴:国内外の金融機関、法律・会計事務所、コンサルティング会社でM&Aの実経験が3年以上あること

まず、M&Aの職歴が求められているので、金融機関でのリテールやバックオフィスは対象外である。となると、結局同業他社のIBDスタッフしか応募できないこととなる。「国内外」というのがミソで、外銀もOKということだ。

もっとも、案件で競合する外銀は野村は伝統的に好きでないので、外銀が選好されるというわけではない。また、昔は大手4社間(野村、大和、日興、山一)で相互に中途採用は行わないという取り決めがあったので、大和から野村は難しいかも知れない。となると、三菱UFJとかみずほ証券あたりは相性が良さそうだ。

また、証券会社でなくとも、法律事務所、会計事務所でM&Aに従事している人もOKということだ。このため、渉外事務所のM&A弁護士や、FAS系の公認会計士も大いに可能性がある。

コンサルティング会社もOKということなので、MBBのような戦略系や、総合系ファームもウエルカムということだ。

② 企業価値評価、企業財務分析、ストラクチャリング等のスキルを備えていること

企業財務的なスキルを要求しており、現役のIBDの社員は問題ないが、弁護士とかコンサルの場合には、面接で財務知識が弱いと判断されると落とされるリスクがある。

③ M&A助言に関連する資格があれば尚可(弁護士、公認会計士、CFA等)

法律事務所・会計事務所出身者もOKということなので、弁護士と公認会計士は理解できるが、CFAというのがポイントである。

CFAとはアメリカの証券アナリスト資格でUS CPAよりも難関である。また、日本の証券アナリスト資格であるCMAとは比べ物にならない位難しい。UC CPAとかCMAを例示列挙していないということは、求められるスペックの高さを示唆している。

④ 英語(ビジネスレベル)

野村の場合、IBDの面接で英語面接を受けることは無いだろう。これは、当然あった方が望ましいが、他の職歴・資格が良ければ、多めに見てもらえる可能性があるかも知れない。

もっとも、野村證券の場合、IBDを増員しようと思えば社外から中途採用しなくても、社内から異動させれば済む話である。ただ、野村の生え抜き社員(総合職)は英語が得意でない者が結構多い。このため、中途採用で野村證券のIBDへの入社を考えると、英語が出来た方が明らかに有利であろう。

3. 結局、どういったスペックの人達であれば採用してもらえそうか?(M&Aバンカーのポジションの場合)

上記2で述べたように、求める条件は厳しく、また応募する人は少なくないだろう。とはいえ、外銀でVPに就任したり、外コンでマネージャーまで昇格している人達は応募しないであろうから、結局、以下のような人達が採用されるのではないだろうか?

① 国内系証券会社のIBDスタッフ

具体的には、大和、SMBC日興、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、みずほ証券の現職IBDである。外銀に行くには英語に自信が無いという人には向いている。

M&Aのスキルが明確に要請しているので、メガバンク系のGCF(グローバル・コーポレート・ファイナンス)系の職種では難しいと思われる。

外銀疲れの若手社員は、リーマンブラザーズの買収の時の苦い思い出もあり、あまり選好されないように思われる。この点は、総合商社の中途採用との違いである。

② Big4系会計事務所のFASの公認会計士

M&Aという職務との親和性から、FASでDDや財務分析の仕事に従事している公認会計士とはフィットするだろう。また、野村證券は国内系金融機関であるので、公認会計士という資格は外銀よりも評価するだろう。

他方、渉外法律事務所のM&A弁護士は、採用されるのであれば、M&Aバンカーではなく、IBD内の法務を専門とする部門(業務部門)での採用になる可能性が高いと思料される。

③ M&Aバンカーに興味がある外コン

いわゆるMBBに代表される戦略コンサル出身でIBDで活躍している人には出くわしたことがない。しかし、MBBレベルのコンサルであれば、従来の野村證券のバンカー達が持っていないスキルや発想法を有しているため、野村證券のIBDとしても採用したい人材だと思われる。

M&Aや財務分析系の知識や経験が少々足りなくても、面接等で相性が良ければ十分に採用される可能性はあるのではないだろうか?

4. 野村證券のIBDを中途採用で狙う場合の留意点

①管理職(VP)、特に40歳以上の場合の転職は極めて難しいと考えた方が良い

野村證券は20世紀時点と比べると、かなり中途採用を積極的に行うようになった。しかし、IBDの場合は若手社員が中心であり、管理職(VP)以上での入社、特に40歳以上の場合には極めて難しいと考えた方が良い。

この点は、総合商社と共通であり、基本線としては生え抜き社員を重視するカルチャーである。リーマンショック前の好況期でさえ、課長以上での中途採用は消極的であった上、リーマンショックの社員とは上手く行かなかった過去がある。このため、今後もシニアポジションでの中途採用は積極化しないことが見込まれる。

この点は、SMBC日興証券やみずほ証券との大きな違いである。外銀IBDでの立場が厳しくなったシニアバンカーにとっては、野村證券IBDは格好の避難先と映るのだろうが、残念ながら野村や大和への転職は年齢や役職で引っかかることが多いだろう。

②採用HPにとらわれることなく、積極的に転職エージェントを活用すべきである

野村證券の場合、採用HPで多くのポジションを募集している。このため、転職エージェントへの報酬が掛からないという理由で、転職エージェントを使うよりも採用HP経由で申し込んだ方が良いという意見を聞いたことがあるが、それは誤りである。

何故なら、野村證券の場合は基本的に終身雇用なので採用は重要な投資である。また、歴史的にも人材の質に対する拘りは強い。このため、転職エージェント代をケチって、自社採用HP経由の候補者を優先するということは有り得ない。

転職エージェントを使うと、レジュメのチェックや、採用のニーズ、面接で聞かれることなど、多くの情報を入手することができる。また、優秀な転職エージェントを使うと、うまく売り込んでくれたりする場合もある。

このため、外資系金融と同様に転職エージェントを活用する方がベターだ。転職エージェントについては、リクルートやJACの様な大手や、金融分野に強いコトラ、プロフェッショナルバンク、アンテロープ、カナエアソシエイツ、ムービンストラテジックキャリア等を幅広く使うのが良いだろう。

最後に

国内系といっても野村證券IBDは経験できる業務や年俸水準は断然トップである。頑張って活躍すれば、30代で2000万円、40代で3000万円以上も可能である。

また、外銀にVP以上で転職したり、SBIの北尾さんのように事業会社に幹部として転職するという選択肢もある。
就活時において、外銀・外コンは超難関であるため、採用されなくても、野村IBDで逆転を図ることは可能であろう。

このため、既存の野村證券のIBDバンカーがもってないスキル・専門性を有する公認会計士とかコンサルの人は狙い目のポジションでは無いだろうか?

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