1. 外銀・外コン内定持ちの学生にとっては、伊藤忠はブランドか?
就職難易度が高いということで、本命が外銀・外コン内定持ちの東大、慶大生も、一応内定をもらいたいのが総合商社である。しかし、本命が外銀・外コンであれば、内定を取っておきたいのはナンバー1の三菱商事である。
2社内定を狙うとすると、財閥系の三井物産となるだろう。
しかし、3社目となると、好みによって、業績的には物産と2位を争う伊藤忠か、「財閥系」というブランドが付く住友商事か違ってくるだろう。
総合商社が本命であれば、大手5社完全制覇を狙う猛者もいるかも知れないが、外銀・外コンが本命であれば、モチベーションも落ちるし、疲れるので、せいぜい併願するのは3社位までではなかろうか?
となると、企業研究に充てる時間も限られてくるので、なるべく短時間で効率的に企業研究をしたいところだ。
2. 三井物産とは対照的な伊藤忠
大手5社といっても、事業内容、ビジネスモデルは様々である。特に、外銀・外コン内定持ちの学生が志向する三井物産と比べると、伊藤忠は独特の事業内容、ビジネスモデルだ。
基本的には、三井部産が金属資源・エネルギー特化型のバリバリのB to B企業であるのに対して、伊藤忠は、非資源・エネルギー、食料・住生活・情報/金融特化型のB to C企業である。
また、東京起源の三井物産に対して、伊藤忠は大阪発祥の関西の遺伝子が強く残っている企業である。これは採用実績校にも表れ、神戸大学7名、大阪大学5名と、三井物産とは微妙に出身校も違っている。
このあたりの特徴を踏まえた上で、伊藤忠か住友商事かを選択することとなる(もちろん、両方でもいいが)。
3. IR(投資家情報)からのポイント
①4p:セグメント別の当期純利益の通期見通しより
ここでのポイントは何といっても、セグメント別の利益のシェアを知ることである。まず、18年度修正見通しを見ると、何と5000億円の利益のうち、4割超を食料が占めている。1事業セグメントが4割超を稼いでいるわけだ。
グラフの右側のコメントを読むと、「ユニー・ファミリーマートの連結子会社化に伴う再評価益等により増益」とある。コンビニ事業が柱であり、伊藤忠の収益を支える事業である。
そして、次が700億円の利益を稼ぐ、住生活部門である。次に3番手が、金融・情報部門である。この3事業で大体利益全体の7割を稼ぐのだ。
もっとも、金属とエネルギー・化学品も小さくはなく、会社全体の1/4超を占めている訳だから、三井物産よりはバランスが取れている感はある。
まあ、外銀・外コン内定持ちはこの手の企業分析はお手の物だろう。
②CITICに注意!
伊藤忠において、必ず押さえておくべきキーワードはこのCITICである。4pにおいて、830億円もの減損損失を計上している。
CITICは中国最大のコングロマリットであるが、伊藤忠は巨額の出資を実施し、どっぷりと中国ビジネスを行うつもりだ。
CITICについては、特設のHPまで作成されているので、目を通しておく必要がある。
https://www.itochu.co.jp/ja/business/alliance/index.html
③重点エリアについて
重点エリアは、CITICにも関連するところであるが、中国とアジアである。したがって、このエリアに関心が高い、或いは、赴任してみたい学生にとっては、伊藤忠は打ってつけだ。個人投資家向けのIR情報でも、「アジア全域、世界へ。」という見出しで示されている。
https://www.itochu.co.jp/ja/ir/investor/story/01.html#anc03
4. その他もろもろ
以上のように、独特の個性を持った伊藤忠商事である。好き嫌いが分かれるところではあるが、アジア・中国での駐在チャンス、商社らしからぬB to Cビジネスの強み。ここはコンビニも持っているし、第一次インターネットバブルの時もしっかりネット系に投資をしていて儲けることができた企業であってネットビジネスも他の商社より強い。
それに、東京本社は、他が丸の内近辺であるのに対し、おしゃれな超一等地、青山である。
他方、給与水準については、5年目で1000万円到達、10年目で1300~1400万円到達ということで、国内系企業のなかでは文句なくトップクラスなのであるが、三菱商事、三井物産と比べると、1割位少なかったりする。
また、部門にもよるが、出張する時の飛行機が、財閥系がビジネスクラスであるところ、伊藤忠はエコノミークラスだったりすることがあるそうだ。
その辺、総合的に考えて、決めればいいだろう。