1. 東大、早慶等の文系のトップ学生がメーカーを選択する理由
文系のトップ学生の就活における最高峰は、外銀・外コン・総合商社とされている。
しかし、そういったところは難易度も高く、東大や早慶でも全滅してしまう場合も少なくない。
また、上位校においても学生の二極化が進んでいるようであり、最初から外銀・外コンを狙わない学生もいる。
そういった場合、候補として出てくるのが、メガバンク、信託銀行、政府系金融機関、大手損保、大手生保、大手証券あたりの大手金融機関である。
メーカーを第一志望にする文系の学生はあまり見当たらないように思われるが、味の素、キリン、サントリーの食品会社3社は何十年も前から人気企業であり続けている。
そこで、文系の学生がどういった理由でこういった食品メーカーを志望するのか
考えてみた。
①純粋にそのメーカーの製品が好きである。
この3社は、消費者向けの著名な商品を製造している会社であり、単純にその商品が好きだから働いて見たいというのは有り得るだろう。
もともとメーカーの場合(消費者向け製品)、その商品に対する興味が無いと落とされる可能性もあるのだが、何十年も働き続けることを前提にすると、その商品が好きでないと勿体ないであろう。
②マーケティングのスペシャリストとしてのキャリアを形成したい。
味の素も、キリンもサントリーも、商品そのものの機能というよりは、その商品の広告宣伝・ブランディングという面が競争力の源泉となる。
したがって、マーケティング部門の存在感が強く、学生からも人気の職種である
マーケティングのスペシャリストを目指したいという考えもあるだろう。
消費者向けマーケティングというと、P&G、ロレアル、ユニリーバ、ネスレといった外資系企業も人気であるが、それらの外資系企業は超難関なのでこれらの企業を併願するというのもあるのかも知れない。
③給料にはこだわるけど、金融は嫌だという消去法的な理由
これは、採用者であるメーカー側からするととんでも無い話なのだが、実際、メーカーを志望する学生にはこのようなタイプが結構多いそうだ。
金融があまり好きでない学生がいても不思議ではない。理由は簡単に思いつく。
リテール営業が嫌、規制業種は堅苦しくてつまらない、周りのみんなが金融ばかり志望するから人と同じは嫌だ、ハードな仕事は嫌だ、等々である。
しかし、給料が安いのは嫌だというわがままがあり、一般的なメーカーには行きたくない。そうなると、メーカーの中でも給与水準は最高位にランクし、世間体もいいということで、この3社がクローズアップされるのだ。
2. 味の素、キリン、サントリーの年収について
①味の素の年収水準
味の素の場合、初年度は他の会社とだいたい同じで400万円スタートである。4年目から6年目で、年収600~700万円程度となる。
30代に入ると、残業代込で800~900万円となる。
大台である1000万円を突破できるのは、早ければ30代後半で昇格できる課長になってからである。課長になると、1000~1200万円位の年収水準である。
そこから上は、早ければ40代半ばで昇格できる部長になることであり、そうなると、年収は1400~1500万円かそれ以上ということになる。もっとも、どこの会社でもそうだが、課長にはほぼ全員なれても、部長にはなかなか昇格できないものである。
②キリンの年収水準
キリンの場合、初年度は他の会社と同様で400万円スタートであるが、20代の場合、営業職と内勤とで手当等が大きく異なるようだ。営業職の場合は手当てが充実しており、入社2~3年目で600~700万円に到達し、大手金融機関以上の待遇である。他方、内勤の場合は3~4年目で500万円代半ば位であり、特段高くは無い。
30歳の時点で800万円程度であり、早ければ35歳くらい、通常は30代後半で昇格できる課長になると、1100~1200万円と大台に乗ることができる。
③サントリーの年収水準
サントリーも初年度は他の会社と一緒で400万円スタート。入社4年目で600万円位であり、30歳の時点では800万円位となる。
30代で課長に昇格すると、1100~1300万円位となる。
なお、サントリーの場合は、住宅手当等の福利厚生が充実しており、その点でのプラスアルファがあるようだ。
④3社の共通点
上記の通り、3社の給与水準は似通っている。30歳の時点では800万円位であり、1000万円には到達しない。この点は、大手金融や商社との違いである。
30代半ば~後半のうちに課長に昇格すると、1000万円を突破し、40代では1200万円~と金融機関にかなり近い水準となる。もっとも、1500万円以上となると、部長に昇格しなければならず、これはハードルが高い。
3社とも、完全な年功序列・終身雇用で、ワークライフバランスは良好だ。
福利厚生を考慮すると、サントリーが3社の中では若干高いかも知れない。
大雑把には、昔から「金融の8掛け」などと言われており、金融には負けるが、その差は大きくなく、他のメーカーよりは明らかに多いという位置づけである。
3. 大手食品3社への就職を考えるにあたっての留意事項
それは、金融機関と比べて、募集人員が圧倒的に少ないことだ。味の素もサントリーも、文系と技術系を合わせて100~200人程度、キリンに至っては100人程度であり、会社の大きさや知名度の高さの割には、少数しか採用してくれない。
大手金融機関の1/5程度の採用数であり、難易度も結構高い。
給与水準が、金融>大手食品3社だからと言って、入社難易度がそれに比例するわけでは無いので、舐めてかかると大変だ。
ろくに企業研究もしないで、「人々を笑顔にしたいからです」といった小学生のような志望動機では、早慶と言えどもあっさりと落とされてしまうので十分な準備が必要だ。
最後に
味の素、キリン、サントリーという、人気大手食品3社は、知名度、イメージも良く、年俸水準も悪くない。そして、ワークライフバランスにも優れている。
もっとも、将来は何が起こるかわからないので、いざという時に備えて転職力も磨いておきたい。あるいは、副業でも構わない。
普通に勤務しているだけだと、金融プロフェッショナルやコンサルのような普遍的な転職スキルが身に付かないので、そこのところは各自が磨いておく必要があるだろう。