1. 丸紅の位置付けと学生の志向
丸紅というと、文句なく五大商社の一角を占め、トップ校のシェアも高いし、年俸も他の大手商社と特に変わらない。
しかし、相対的な順位は、五大商社の中では5番目である。このことによって、偏差値とか順位が大好きな、高学歴のハイスペック学生は気になるところがあるようである。
例えば、東大から五大商社への入社人数を見ると、丸紅だけ7人と、一桁である。(ちなみに住友商事は13人、伊藤忠は15人である)
また、最上位の学生である外銀・外コン内定持ちは、丸紅までは回らないのではないかと推察される。また、大阪起源で関西カルチャーがある程度含まれている点も、好みがわかれるところである。
いずれにしても、超難関で表面倍率100倍超の世界であることには違いないが、五大商社の中では若干は内定をもらいやすい気がしないでもない。
言い換えると、外銀・外コン落ちで、五大商社が本命の学生は何としてでも内定を取りたいところであるので、しっかりと企業研究をして臨みたい。商社はそれぞれ個性が大きく異なるので、併願するのは結構疲れるのであるが、外銀・外コンの内定が無いと、そういうことは言っておれない。
2. 丸紅のビジネスの特徴
それでは、王道の企業分析の手法であるが、中期経営計画を見てみよう。「GC2018 Global Challenge 2018」という資料であるが、2017年5月9日付で、「中期経営計画 GC2018の修正」が出ているので注意しよう。
<2017年修正版>
https://www.marubeni.com/jp/company/plan/pdf/gc2018_re_jpn.pdf
<元のバージョン>
https://www.marubeni.com/jp/company/plan/pdf/gc2018_JPN.pdf
①修正版 2. 定量目標の修正 ~丸紅は非資源の会社~
まず、理解しておくべきことは、丸紅は「非資源」の会社であるということだ。商社のビジネスはいろいろな切り口で分類・整理できるのであるが、資源ビジネスか非資源ビジネスかという分類法がある。
この点において、修正後の連結純利益目標が2018年度 2000億円とあり、わざわざカッコ書きで(非資源 1800億円以上)と親切にも書いてくれている。
さらに、新規投融資を見ると、修正後、2016~2018年度 4000~5000億円とあるが、ここでもわざわざ、「非資源を中心に」戦略的に厳選とある。
以上から、丸紅は、わざわざ非資源ですと言ってくれているので、OB/OG訪問で、「資源やりたいです」とかいうとその時点でアウトである。(もちろん、あえて資源を強化したいという理屈がつかなくもないが、説明も面倒でリスクが高いので止めた方がいい。)
資源がやりたければ、三井物産にどうぞということになる。
これが最初のポイントである。
②修正前の資料 5-IV 海外戦略の強化 アグリ、インフラ、輸送機
順番が前後するが、ここに丸紅のビジネスモデルに関するキーワードが出ている。「アグリ、インフラ、輸送機」という、丸紅の稼ぎ頭であり、競争力を有する部門である。この分野に関心がある学生は、丸紅はフィットしており、具体的な内容を掘り下げよう。
③修正前の資料 5-I 事業・投資方針
ここには、今後の重点事業・投資分野が記載されているので重要である。
セールス&マーケティング事業
ファイナンス事業
安定収益型事業
資源投資
の4分野である。ここには、資源投資も含まれていることに留意しよう。
具体的に、資源以外の3つの重点投資事業が何を意味するのか、ぱっと見ではよくわからない。そこで、5-Iの文章を読むと、先ほどの、「アグリ、インフラ、輸送機」が絡んでいることが見えてくる。これだけでは不十分なので、特に志望したい部門については、ホームページ等で確認しておくこと。
「インフラやりたいです!」と言ったところで、「どういうインフラをやりたい、何故?どうして君が向いている?」といったことを必ず突っ込まれるので、かなり具体的なレベルまで研究して、質問に対応できるようにしなければならない。
PPA、IPP、PPPとかテクニカルタームが出てくるので、チェックしておこう。
④修正前資料 5-II キャッシュフロー経営
これは、会計・ファイナンスのネタである。外銀・外コン受験組(落選組も含めて)は、この手の内容はお手の物のはずだが、抽象的な説明が中心なので、何がいいたいかよく考えよう。
実は書いてある内容は、至極、当たり前のこと。「企業価値の最大化」=株価時価総額の最大化≒株価の上昇、というのは上場企業の共通の目標に過ぎない。
営業利益を増やして、運転資金を効率化して、営業キャッシュフローを最大化しましょうということを言っている。
そして、営業キャッシュフローから新規投資等をして、将来の利益の種を作りましょうと言っている。(CAPEX(資本的支出)が何か、忘れた人は復習しよう)
ポイントは、財務基盤の更なる強化ということで、配当後のフリーキャッシュフローを黒字化させたいと言っている。これは、稼いだお金を将来の投資に回すのだが、借入金等も減らして、財務体質も良くしたいという欲張りなことを言っている。
節約しながら、大胆に投資をしたいという、両立するのが難しいことを
目標としているので、OB/OG訪問等で、「これ両立難しくないですか?これ、実際は投資と財務改善とどっちが優先順位高いのですか?」と質問すると、
「この学生、よくわかっているな」ということになる。
財務のところは、苦手な学生はさっぱりなので、外銀・外コン落選組はこういったところで差を付けたい。
3. 他の商社との比較の視点
丸紅の理解を深めるには、他の4商社との比較の視点が重要である。それぞれ、個性的であり、比較をすると丸紅の特徴がより鮮明になるからである。
例えば、中期経営計画の資料、一つとっても、かなり各社の色が出ているのではないだろうか?
丸紅の資料は分量が少なく、非常にあっさりしている。対照的なのが、住友商事で、几帳面に各部門ごとに作った詳細なデータを寄せ集めている。
三菱商事はあっさりとしているが、バランスがよく、全社的な方向感、まとまり感がうまく表現されている。(もっとも、実態は縦割りなのだが、社長のリーダーシップ、意気込みは伝わるところである。)
伊藤忠は、中国・アジア、非資源の消費・生活・B to C、というビジネスモデルが良く伝わってくる。
三井物産は、典型的な金属資源・エネルギーの会社であるが、それ一辺倒だとリスクが高いので、他の収益源も広げたいという意図は伝わる。
従って、面接では必ず、「何故、他商社ではなくて丸紅?」と必ず聞かれるので、他社の社風・ビジネスモデルに言及した上で、そちらよりも、丸紅がいいという理由をうまく説明できれば、説得力がでてくるものである。
その他
五大商社の中で、数字的には厳しい位置づけかも知れないが、待遇は他とそれほど変わらず、社風が良さそうで若手の転職希望者が少ないとも聞く。また、嘘か本当かはわからないが、女の子がかわいいという話もある。商社は各社の個性が様々であるが、丸紅は十分に魅力があるので、しっかりと企業研究をして、OB/OG訪問、そして、面接に臨みたい。