1. 慶應SFC(総合政策学部&環境情報学部)の就職状況
①慶應SFCの就職情報について
慶應SFCは主として、総合政策学部と環境情報学部の2学部から構成されている。
慶應大学の場合、全学部について上位就職先企業(3名以上上位20社)について、Web上で開示している。このため、総合政策学部と環境情報学部の就職状況はここのソースから取ることができる。
http://www.gakuji.keio.ac.jp/life/shinro/3946mc0000003d8t-att/a1530669479061.pdf
②慶應SFC(総合政策学部&環境情報学部)の就職先について
総合政策学部からの就職者数は332人、環境情報学部からの就職者数は299人である。両学部を合計すると、その主な就職先は以下のようになっている。
総合政策学部+環境情報学部 | |
デロイトトーマツコンサルティング | 13 |
野村證券 | 11 |
アクセンチュア | 10 |
電通 | 10 |
みずほ銀行 | 10 |
三井住友銀行 | 10 |
三菱UFJ銀行 | 9 |
楽天 | 9 |
三井住友信託銀行 | 6 |
アビームコンサルティング | 4 |
損害保険ジャパン日本興亜 | 4 |
日本放送協会(NHK) | 4 |
野村総合研究所 | 4 |
三井物産 | 4 |
三菱商事 | 4 |
DeNA | 3 |
NTTコミュニケーションズ | 3 |
PwCコンサルティング | 3 |
伊藤忠 | 3 |
サイバーエージェント | 3 |
住友商事 | 3 |
全日本空輸 | 3 |
ソフトバンク | 3 |
東京海上火災 | 3 |
東京都 | 3 |
日本生命保険 | 3 |
日本マイクロソフト | 3 |
博報堂 | 3 |
富士通 | 3 |
ヤフー | 3 |
リクルートキャリア | 3 |
2. 慶應SFCの就職の特徴
三田・日吉と異なり、藤沢市(といっても海が見えない、湘南台駅からバス便の
不便な場所にある)にキャンパスがあり、場所的に離れていること。また、コンサバで大企業志向の強い経済学部、法学部、商学部の学生と比べて、自由闊達、ネット等新しいもの好きで自由なカルチャーのSFC。
同じ慶応大学とは言え、ある意味正反対の面もあることから、三田キャンパスの
学生からは、好かれていないという説もある(本当かどうかは定かでない)。
とにかく、慶応大学の伝統的なイメージとは異なるカルチャーを持っていそうなSFCであるが、就職においても、違いがあるようである。
以下、その特徴をMECEではなくて申し訳ないが、気づいた点についてまとめてみた。
①金融機関の比率が少ない
まあ、大手金融機関に行くぐらいであれば、わざわざSFCを選択しないのかも知れないが、金融機関の比率は他学部と比べて相対的に低い。
例えば、3メガバンクについては、経済学部だけで74人であるが、SFCは29人である。就職者数が経済学部の約2/3であることを考慮しても少ない。
また、東京海上火災については、経済学部から23人であるのに対し、SFCはわずか3名と明らかに少ない。証券会社、例えば野村證券については、経済学部から22人に対して、SFCからは11人と少ない。
他の大手生損保、信託銀行、政府系金融機関についても似たような傾向で、大手金融機関についてはSFCはその比率は明らかに低い。
②総合商社について
総合商社については、大手金融機関以上に、SFCからの就職者の比率は明らかに低い。
例えば、大手5社について見ると、経済学部からは33名であるのに対し、SFCからは14名である。
総合商社は就職偏差値最上位企業であるため、この点は特に、三田キャンパスの学生からすると、「自分たちの方がSFCよりも勝っている」と考える要因になっているのかも知れない。
③コンサルティング・ファームへの比率が高い
大手金融機関や総合商社への就職者数比率は低いかも知れないが、SFCが検討しているのがコンサルティング・ファームである。
例えば、デロイト・トーマツコンサルティングには、SFCから13名であり、経済学部の7名を上回っている。また、SFCからはアクセンチュアに10人、アビームコンサルティングに4人、PwCコンサルティングに3人と、コンサル業界に就職する学生の比率が高い。
この点は、SFCが独自性を発揮しているところであろう。
④マスコミへの就職に強いSFC
また、マスコミへの就職に強いのがSFCの特徴でもある。例えば、SFCから電通に10人就職しているが、これは経済学部からの8人を上回る数字である。
また、SFCからNHKに4人、博報堂に3人と、ここでも検討している。
⑤ネット系ベンチャー企業を好むSFC?
これは好き嫌い別れるところであるが、SFCからの就職先上位企業にネット系ベンチャー企業が多くランクインしている。これは、経済学部というか、三田の学部には見られない特徴である。
例えば、サイバーエージェントに3人、ソフトバンクに3人、DeNAに3人、ヤフーに3人、といったところだ。
もともと自由闊達で新しいテクノロジーを採用するのを歓迎するといったカルチャーなのだから、これはSFCらしさを期待通りに発揮できていると言えるのではないだろうか?
3. 慶應SFCの就職における課題
慶應大学の中で、とかく「異端」扱いされがちなSFCではあるが、大手金融、マスコミ、商社、ネットベンチャー、メーカーと幅広い業界に卒業生を送り込んでおり、就職における学部としての課題は特に無いようにも見える。
しかし、課題があるとすれば、むしろ、ネット系、起業、マスコミ等にフォーカスしきれていない点では無いだろうか?
他学部と比べると、大手金融や総合商社の比率が低いように見えるが、結構多くの学生が、こういったコンサバな大手企業に就職している。しかし、銀行や商社に行くのであれば、わざわざSFCに来る意味は無いのではなかろうか?
大学の視点からすると、SFCはもっとエッジを効かせて、英語で行う授業を増やしたり、プログラミングの授業を強化する等、ITや起業にフォーカスさせた方が面白いのではないだろうか?
ICUの場合だと、少なくともICUの卒業生は英語はOKということになっているが、SFCの場合は一歩進めて、SFCの卒業生は英語とプログラミングはOKというようになると、慶応ブランドと相俟って更に面白いと思われる。
また、クックパッドの佐野さんとか、クラシルの堀江さんとか、若くして成功したベンチャー起業家を輩出し始めているので、ここを更に強化すれば存在価値は高まるであろう。
ベンチャー起業というのは、三田キャンパスとは合わない雰囲気もあるので、ここはSFCに頑張ってもらうところではないだろうか。
最後に
三田の他学部と比べると、大手金融機関や総合商社への就職者比率が低いのは当然想定していたが、それでも思っていた以上に大手企業への就職者はいたように思う。
マスコミやコンサルに強く、行こうと思えば大手金融機関からも採用される。
これは、学生からすると選択の幅が大変広く、魅力的なのでは無いだろうか?
ベンチャー起業を目指していて、うまく行きそうであればそのまま突っ走ればいいし、「やっぱり大手で安泰がいいや」と思えば、金融、商社、コンサル、通信等に鞍替えもできるのである。慶應ブランドももらえるし、大変魅力のある学部だと思う。
私が今高校生で、慶応大学を選択するとすれば、SFCを選択するだろう。
ただ、キャンパスが海を臨める本当の「湘南」にあれば完璧なのにと思うのは私だけだろうか?