1. 洋菓子屋のベンチャー企業が100億円以上で売却?
今となっては、古いニュースであるが、焼きたてチーズタルト専門店等の複数の洋菓子製造・販売を手掛けるBAKEの株式が、投資ファンドのポラリスに100億縁以上で売却されたことが2017年7月に公表された。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1707/31/news069.html
日本のベンチャービジネスで、100億円越えのM&Aというのはかなり珍しく、更に、対象ビジネスがAI関連とかゲーム等ではなく、洋菓子屋というのが注目される。
2. 何故、BAKEはこれほど短期間に成功することができたのか?
https://maonline.jp/articles/bake
BAKEは創業1年目の売り上げは1億円でスタートし、2年目には10億円、3年目には37億円、4年目には90億円と急成長している。
その理由、BAKEの凄さについては、上記の引用記事が詳しいが、インターネットを駆使したブランディング、メリハリを効かせた生産管理とコストコントロール、お菓子の魅力を熟知した上での新商品開発等、ありとあらゆる経営スキルをフル活用しているのである。
代表者(創業者)の長沼真太郎氏は、北海道の洋菓子屋「きのとや」の三代目であり、洋菓子についてはもともと詳しい人である。しかし、最初から洋菓子屋を志したのではなく、慶応大学を卒業後、丸紅に入社した後で、起業をしているのだ。
コアプロダクトである洋菓子を熟知していたことに加えて、現代的なビジネススキルを持ち合わせていたというところが成功のカギでは無いかと推察される。
3. 実は魅力に乏しいように見える旧ビジネスにこそチャンスあり?
起業というと、インターネット技術を駆使して、まだこの世の中に存在していない新しい市場を開拓しようというイメージがあるかも知れない。
確かに、今市場が存在していないようなビジネスであれば、成功した暁には自社がその市場を総取りできるかも知れない。
しかし、今現在無いような市場は本当にニーズがあるのかどうか怪しかったりするし、そもそも、市場が成立するまでにはどれほどの時間がかかるのかよくわからない可能性がある。
他方、BAKEがターゲットとしている洋菓子業界もそうだが、外食業界、小売業界、塾業界などの業界は成長性や新規性の魅力は乏しいし、それに、既に市場参加者(競合)が多く存在して、うま味が無い市場のように見える。
しかし、見方を変えると、既に一定上の市場(ニーズ)は明らかに存在しており、成長はしないかも知れないが、すぐに無くなるということはない。また、競合の数は多いかも知れないが、非効率な個人経営や中小企業が大半であることが多く、手ごわい相手はほとんど存在しないという見方もできる。
このため、既に明らかなニーズがある市場なのだから、競合先である個人や中小企業が思いつかないスキルを導入したり、効率性を高めるための仕組みの導入に成功したりすると、一気に市場に食い込むことができる場合がある。
実際、BAKEの長沼氏も、個人経営がメインの洋菓子業界の非効率性、硬直性を意識していたため、上手くやれば勝てると踏んでいた模様だ。
4. BAKEのような面白いベンチャー企業は他にあるだろうか?
流行りのテーマであるAIを活用した受託開発企業とか、フィンテックのようなテクノロジー系ではなく、BAKEのように敢えてローテク産業を狙った新進気鋭のベンチャー企業が他にないか、Wantedly等で検索してみた。
しかし、ほとんどがネット系技術に着眼したテクノロジー系ベンチャー企業
ばかりであり、BAKEのような企業の求人情報は見当たらなかった。
これは考えようによっては、起業家、特に若くて優秀な人達は、テクノロジー系ばかりを見ているので、ローテク系に着目している起業家はまだまだ少数であるという見方もできる。
これは大いにチャンスありということだ。最新のネット系ビジネスの知識に加え、経営スキルを備えていたら、いろいろと狙い目はあるだろう。ラーメン屋、小学生を対象にした塾、喫茶店、ネイルサロン、定食屋等、身近なところにビジネスアイデアのネタが転がっている。
もちろん、飲食店等は何らかの土地勘があった方がいいだろうが、塾とかの教育ビジネスであれば、いろいろと可能性があるように思える。
若くて優秀な起業家こそ、こういったマーケットに着眼したらどうだろうか?