サノフィやMSD等のリストラで不安視される製薬業界への就職について、考察してみた

1. 高給・安定で知られる製薬業界に、度々リストラの報道が?

従来、製薬業界というと高給・安定というイメージがあった。しかし、近年、大正製薬、MSD、ベーリンガーインゲルハイム、アステラス、サノフィといった大手製薬会社においてかなりの規模のリストラがなされたことが報道され、業界外の者からは、業界自体が変容していくのかという衝撃を受けた。

2. しかし、外資系製薬会社的には、リストラは今に始まったものではない

この点、外資系の製薬業界の管理職(研究開発)の人に話す機会があったので聞いてみたところ、外資系の場合は、働かない人の面倒までは見れないというスタンスなので、リストラは従来から不可避的に発生しているという。

そして、昨今の社会保障費高騰に伴う、薬価切り下げの圧力や、各社のパテントクリフの事情、MRの人件費の増大等によって、大手製薬会社とはいえ安泰ではないということらしい。

例えば、MSDなんかの場合、グローバルで6兆円の売り上げの内、1つの薬で1兆円を稼ぐ状況なので、パテントクリフと営業費用の増大は無視できる余裕はなく、常にリストラの脅威というものは存在するのだという。

3. 製薬業界に就職することのメリット

確かに、社会保障料の問題など、今後も外部環境的に不安はあるが、だからといって、急速に業界自体が悪くなるというものではない。むしろ、グローバルには人口増大、国内では高齢化により、一定の製薬事業に対する市場は必ず存在するので、メガファーマも何らかの形で将来的にも生き残っていけるだろう。

製薬業界は特殊な業界であるが、他の業態と比べて、以下のようなメリットも存在している。

①外資系の参入も多く、人材の流動性が見られ転職の機会が多い

日本の大手製造業というと、中途採用のマーケットは極めて限定的であり、人材の流動性は極めて低い。

他方、製薬業界は多くの外資系企業が参入しており、昔から、転職市場は発達していた。このため、何らかの専門スキルを身に着けていれば他の製薬会社(特に外資系)に転職することも可能である。

このため、各専門分野(研究開発、営業、マーケティング、経理、知財、リスク管理、人事等)で専門スキルを磨いていれば、リストラの話があっても、同業他社への転職が可能となるのだ。

②アップサイドの可能性

金融業界においては、リスクは高いが、給与面においては、外資系>国内系であり、生き残ることができればという前提だが、軽くメガバンクの2~3倍の年収を得ることができる。

他方、製薬会社の場合は、国内系も外資系もあまり大きな差はない。しかし、外資系の場合は、役職による差が日本企業より大きいので、部長クラスになると、1700~2000万円位の年収が期待でき、執行役員クラスになると、更に多くなる。
このように、外資系に上のポジションに就くことができれば、かなりの年収を得ることも可能となる。

③ワークライフバランスについて

製薬会社の場合、他の高年収の業界と比べると、ワークライフバランスは総じて良い。勤務時間も短く、休みも取りやすい。

国内系金融でもIBDなどに所属していると、案件によっては夜中までの勤務が連日続くということも珍しくはない。

その点、製薬会社はワークライフバランスに優れており、今後副業の緩和が始まるということを踏まえると、将来に備えていくつか準備をできる余裕もあり、恵まれている。

4. 就活における視点

学生の就職人気ランキングとか就職偏差値があてになるものかどうかは別として、地味目なイメージがあるからか、キャリタスとかマイナビのランキングなどを見ても製薬会社は上位に出てこない。(特に、男子文系)。

給与・待遇・知名度などを加味すると、結構穴場と言えるのではなかろうか?

従って、トップ校の学生であれば、相応の準備さえすれば、内定を得ることは十分であろう。

今後、製薬業界においては、リストラリスクは存在し続けるだろう。しかし、少子高齢化の国内経済事情を見ると、それは、他の業界も同じである。いまだに就活市場における人気度が高い、メガバンクや大手生損保は海外で稼ぐことができず、将来の厳しさは製薬会社以上と言えるだろう。

他方、外銀、外コン、総合商社という、いわゆるグローバル人材を求める企業は内定を得るのが著しく困難で全落ちする有力校の学生も少なくない。

したがって、本命にするかしないかは各自の判断だが、製薬業界も選択肢の一つとして検討する価値は少なくともあるのではなかろうか。

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