就活生なら知っておきたい、企業分析の基本について

1. そもそも、企業分析は社会人でもまともに出来ない人は多い

自己分析、自己PR、志望動機とともに、企業分析というのが就活における必須項目となっているようだ。

ところが、企業分析がまともにできない学生が非常に多い。これはまだ就業経験が無く、誰が正しい企業分析の手法を教えてくれるわけでもないので仕方がないことだ。

実際、昔の就活ではこのようなスキルは要求されなかったし、金融とかコンサル
のような企業分析を生業とする仕事に就いていなければ、社会人もよその業界の企業について企業分析をする機会とか必要性も無いからだ。

2. 企業側が求めるニーズとビジネスに弱い学生とのギャップの存在

近年では、企業側はグローバル・リーダーシップとか事業創造能力とか、実際のビジネスで稼げる能力を学生に求めるようになっているようだ。少子高齢化に伴い国内市場は確実に縮小するし、また、ITの世界では米国のGAFAに主導権を握られ、このままだと20年後、30年後は自社はやっていけるのか不安に思っている経営者は多いからだ。

他方、学生の方は、昔と大きく変わっておらず、体育会、サークル、バイト、ゼミといった稼ぐこととは無縁のネタについて、それをいかに大きく見せるかばかり腐心している。

企業がどのような事業を展開し、どういったビジネスモデル、商材で利益をあげているのかと言ったビジネス面については、会社に入ってから覚えたらいいと思っているのだ。

ここに、採用側の企業と、学生との間に大きなギャップがあり、双方にフラストレーションが貯まってしまっている。

しかし、見方を変えると、ここは学生にとってチャンスである。他の大半の学生が得意でない企業分析をキッチリと遂行することができれば、大いなる差別化要因になるからだ。それに、一旦企業分析のスキルをつかむことができると、業界横断的に使用可能だからだ。

3. 企業分析のイロハ

企業分析といっても、人事担当者はアナリストとかコンサル的なスキルが無いのが大半なので、それほど高度なものが要求されるわけではない。極めて、基本的なところを押さえればいいので、特に難しい話ではない。

以下、ごくごく簡単な企業分析ができているかどうかをチェックするために、松竹梅の3ランクに分けて説明してみた。

なお、企業分析については「ホームページにある情報は隅から隅まで読め!」
というのが理想なのだが、現実的には浅く広く眺めても結局は何も頭に残らないので、とりあえず、最低限以下の2つの資料だけは目を通して欲しい。

(1)決算説明会用資料(四半期ごとに開示)。
⇒パワポで20~30p位。とりあえず、直近分だけで良い。

(2)中期経営計画(2~3年毎に更新)
⇒パワポーで10~20p位。

①企業分析レベルチェック 「梅」レベル

以下の質問を資料を見ずに答えることができるか?
1)現在、企業は何のビジネスでどれくらい利益をあげているか?
2)現在、企業はどこで稼いでいる(利益をあげている)か?

例えば、トヨタ。
1)は、「自動車」で半期で1.2兆円位の利益をあげている。しかし、そのうち金融収益が1,700億円超もあることはご存じだろうか?トヨタは自動車+自動車ローン等の金融ビジネスで稼いでいるのである。これには気づいていない学生も多いのではないか?

2)は、グローバル企業を目指すのであれば、絶対に落としてはいけない視点であるが、常識だけではわからない問題である。同じく、トヨタの場合だと、営業利益の6割を国内、1割を北米、2割をアジアで稼いでいる。欧州の営業利益のシェアは5%しかない。

意外に北米比率が低く、国内とアジアの比率が高いのではないだろうか?従って、「欧州行きたい、欧州行きたい!」と面接で連呼すると、「こいつはわかっていない」と思われるのがわかるだろう。

こういった情報は、決算説明会用資料を見ると10分でわかる。これだけで常識ではわからないいろいろな発見をすることができるし、OB/OG訪問や面接のネタが出てくるのではないだろうか?
(ネタ元の直近の決算説明会用資料はこちら)https://www.toyota.co.jp/pages/contents/jpn/investors/financial_results/2019/semi/presentation.pdf

②企業分析レベルチェック 「竹」レベル

1ランク上のレベルは、中期経営計画である。これについては、以下の質問について資料を見ずに答えることができるだろうか?

1)企業が戦略的に重点を置いているビジネスは何か?
2)企業が近年実施した大型M&Aとその狙いは何か?

なお、これは「梅」レベルの話なのだが、総合商社の基本的な業務やビジネスモデルをわかっていない学生が多いので、注意すること。トヨタだと車、銀行だと融資、ドコモは携帯電話の通信料で稼いでいるのは明らかなのだが、総合商社はそうではない。

数年前に、就活の模擬面接を題材にしたYouTubeがあったのだが、総合商社志望のMARCHの学生が、志望動機に関して、「個人経営の農家を支援したい。」と言って、面接官から「それは商社の仕事じゃないよ。スーパーとか行けば?」と返され、撃沈している事例があった。

実際に、このようなズレた発言をすれば総合商社などの人気企業の場合、即終了が確実であろう。

薄い資料なので、決算説明会用資料と中期経営計画には目を通しておこう。

③企業分析レベルチェック 「松」レベル

最高レベルの「松」レベルであるが、これにスラスラと答えることができれば、当該企業に対する企業分析はOKと考えてよい。質問はこちら。

〇あなたが当社の社長であれば、何をしたいか?

極めてシンプルであるが、全体像、競合環境、市場の将来予想等を把握した上で、自分自身の独自の分析力が試される難問である。本命企業については、一応このレベルを目指して、考えてみたいところだ。

最後に

企業分析は学校とかでは教えてもらえないので、パンフレット類の読み込みぐらいしかできていない学生も多いだろう。しかし、会社が用意した就活生向けのコンテンツはイメージ重視なので、ビジネスの全体像が的確に示されていないことが多い。

他方、決算説明会用資料とか中期経営計画は、経営企画やIR部門の人達が全世界の投資家に向けて発信する会社の正式な資料であるので、内容的に練られているものが多い。

時間が無いと、まず、IR関係資料である、決算説明会用資料と中期経営計画から読み込むのが効率的ではないだろうか?

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