PERSOL社の決算内容と、今後の人材関係ビジネスの将来について考えてみた

1. PERSOL(パーソル)とは?

上場している人材関連企業の大手のPERSOLの決算資料(2018年11月12日付)から、人材ビジネスの今年の方向性を読み取ってみたい。

なお、PERSOL社とは、テンプスタッフ、DODA、an等の運営会社である。ビジネスにおける比率は、派遣ビジネスが大半である。

人材関連ビジネスの最大手はリクルートだが、リクルートは人材以外の各種マッチングビジネスも手掛け、また、海外事業の割合も小さくないことから、日本の人ビジネスにフォーカスするという意味では、むしろ、PERSOL社が参考になるかと考えた。

2. 2019年3月期第2四半期の決算内容は概ね順調の模様である

https://ssl4.eir-parts.net/doc/2181/ir_material_for_fiscal_ym/55551/00.pdf

①人材ビジネスは、派遣ビジネスを中心に全体的に好調

決算説明会用資料によると、2018年3月期実績の売上7221億円、営業利益360億円に対して、2019年3月期決算予想は、売上9400億円、営業利益425億円と、20%程度の成長であり、順調である。

②好調な派遣ビジネスと派遣事業における法改正の影響

PERSOL社の強みは、テンプスタッフブランドによる人材派遣ビジネスだが、決算数値的には順調のようだ。

加えて、法改正の影響がポジティブに効いてくるようだ。2018年10月以降、派遣法改正に伴う雇用安定措置の対応のために、これまでと比べて無期化が進むと見込まれている。

無期化に伴い、約5~10%の請求単価UPを実現することができた。

一定の経験者の派遣社員は、安定した雇用契約を求めて無期転換を希望する傾向があるという。

③リクルーティングセグメントの人材紹介の売上拡大

PERSOL社は、転職ビジネスにおいてはDODAブランドでビジネスを展開している。人材紹介の売上高成長率(対前年度比)は+25%超の高水準で推移しているという。

この転職ビジネスも順調な背景としては、20代から30代の転職に対する意識が変化していること、企業の中途採用時の年齢上限の変化や、地方における人材紹介会社の活用拡大ということがあるという。要するに、転職市場自体が拡大しているということだ。

PERSOL社は、市場の拡大に合わせて、コンサルタントを積極採用するとともに、これまでに蓄積した求職者のデータを最大限活用し、コンサルタントの属人的な経験に過度に依存しないオペレーションを実現しようとしているという。

④重点施策としての、国内既存事業領域や新規事業領域におけるM&Aの積極化

海外市場における既存事業領域についてはM&Aを通じた規模拡大策は一旦完了という。

ただし、国内既存事業領域については従来通り積極的にM&Aを推進するとともに、新規事業領域については、パーソルイノベーションファンドによる調査・投資活動に加え、「グループイノベーション推進本部」を設置し、グループ全社視点でのオープンイノベーションを加速するという。

3. PERSOL社の方向性を参考にした人材ビジネスのトレンド予想

以上のPERSOL社の決算や方向性を参考に、人材ビジネスの方向性を予想してみると、以下のイメージとなった。

①人材の流動化の進展と企業の人的資源管理スキルの巧拙の差の拡大

せっかく一生懸命新卒採用をしても、3年後には約3割は辞めてしまうということが知られている。しかし、20~30代の転職に対する意識の変化は避けようがなく、好調な派遣市場のことも考え合わせると、人材の流動化の進展の方向性は
否定しようがないのではないかと考えられる。

まだまだ多くの日本の優良企業は新卒採用一辺倒で、中途採用はお付き合い程度に少しの若手(非管理職)を対象にのみ実施しているところが少なくない。

そうなってくると、人が抜けても外から採用できないし、成長事業が出てきても既存人材の配置換えで対応せざるを得なくなる。

これは人的資源管理(HRM)における、リソース・マネジメントやモチベーション・マネジメントを駆使しなければならないということで、人事部門のスキルの差が、業績の差につながっていく可能性があることを意味する。

人的資源管理、特に中途採用のスキルが不十分な旧来的に日本の大企業に大して、クオリティの高いサービスを提供できる人材関連会社には大きなビジネスチャンスがあると言えるだろう。

②コモディティ人材に対するニーズの存在とAIによる省人化の実現

AIによってヒトが要らなくなる旨強調されているが、それは時間軸を無視し過ぎている嫌いがある。今すぐに、AIがヒトに代わって働いてくれるということはないのだ。分野によっては数年後に実現可能な領域もあるだろうが、10年以上経っても、AIによる省人化が達成できないジャンルも少なからずあるだろう。

実際、派遣ビジネスに対する需要は旺盛のようで、AIによって派遣市場が閑散とするのはまだまだ先の模様である。

そうなると、いつまでたっても派遣社員や正社員を抑制することができない
企業と、AIをうまく活用して効率化を実現できる会社との間で大きな差が
付く可能性がある。

そうなると、省人化を推進するようなアドバイスができる人材関連企業には
飛躍的に伸びるチャンスがあるだろう。

PERSOLのような人材派遣事業を手掛ける会社にとっては、痛し痒しのところはあるが、先を見据えると、省人化にむけたアドバイス能力を向上させていく必要があるのではなかろうか。

③HRテックへの期待感の増大

PERSOL社も、リクルート社も、パソナ社も、人材関連各社の業績は好調であるし、利益の規模も大きい。各社ともに潤沢な資金を持って、新規事業に投資をしている。

また、クライアント側である事業会社(採用側)も、外銀などの一部の少数の例外を除くと、人事部門はエリートであり、予算と権力を握っている。

したがって、HRテックという分野への期待感は高く、今後、いろいろと盛り上がってくると思われる。

今からベンチャー起業をするのであれば、この分野が面白いのではなかろうか?

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