HRテックの雄、Culture Amp、日本では従業員調査(サーベイ)のニーズはあるか?

1. Cutlure Ampとは?

X-Techという各種テクノロジー企業の中、人的資源に着目したHRテックが注目される。

この手の業態は、大抵米国のベンチャー企業が注目されるが、Culture Ampという企業はHRテック分野で最も成功している企業の1つである。

https://thepedia.co/article/%E7%B1%B3%E5%9B%BD%E3%81%AE%E5%BE%93%E6%A5%AD%E5%93%A1%E5%90%91%E3%81%91%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%84%E3%83%BC%E3%83%ABculture-amp%E3%80%81%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA/

業務内容は、従業員の会社に対する満足度や忠誠心などのデータ分析プラットフォームの提供だ。

具体的には、社内文化、ライフサイクル、パフォーマンス、パルス、スペシャライズの5タイプの従業員アンケート結果をもとに、従業員と企業の状況を一元管理を可能とする使い勝手の良いWebサービスの提供だ。

2. そもそも従業員調査(サーベイ)とは?

そもそも、従業員調査(サーベイ)とは何かということだが、実は米国の大手上場企業は、年1回、或いは数年に1回、全従業員を対象とした会社(経営者)に対する各種の満足度調査を実施することが多い。

これは、米国の上場企業の場合、株主のプレッシャーが強いので、経営者は真面目に経営上の施策を取っていることを外向きにアピールするために、この種の調査を利用するというニーズがあるのだ。

いわば、米国企業の経営陣の株主に対する、アリバイ作りのようなイメージである。

但し、経営陣が会社の予算を取って、トップダウンで実施するので、外部コンサル(BCG等の著名なファームが雇われることもある)を活用した上で、グローバルでの本格的な調査が実施され、その結果も、きっちりとフォローされることが多く、結構大掛かりで真面目なプロジェクトなのである。

3. 従業員調査(サーベイ)の従業員にとっての意義・役割は?

従業員にとっての従業員調査の位置づけであるが、アンケートに答えるのが面倒なだけということはない。

外資系のローカルな1拠点であっても、ローカルな拠点の経営陣は、従業員調査の結果やフォローアップの状況を、本社の経営陣に説明することが求められるので、ローカルな拠点でも他人事ではない。

具体的な調査結果について、何からのアクションを取ってもらえる可能性があるのだ。

従業員調査の典型的な調査項目としては、以下のようなものがある。

・金銭的待遇の満足度(基本給、ボーナス、ストック・オプション)
・昇格における満足度
・社内異動に対する満足度
・休暇の取得状況に対する満足度
・社内のリソース(人が足りているか?)に対する満足度
・人事評価の満足度
・キャリア相談に対する満足度
・社内教育研修制度に対する満足度
・社内の設備(オフィスの立地、環境、広さ、設備等)の満足度
・福利厚生に対する満足度
・経営陣に対する評価
・今の会社で働き続けたいか等

こういった各種項目のうち、特に評価が低い事項を重点改善課題とし、そのフォローアップがなされたりする。その意味で、従業員にとっても何らかの不満な点が解消してもらえる可能性があるわけだから、それなりの意味がある制度といえるだろう。

4. 日本では従業員調査(サーベイ)は流行るか?

アメリカと日本では、社会状況や諸制度が大きく異なるので、アメリカで流行ったからと言って、日本でも同様に流行るとは限らない。

従業員調査においても、日本の経営陣は米国企業程も株主からのプレッシャーは
受けないし、人事部門は伝統的に強いので、わざわざ下々の従業員の声を調査して反映させてやろうという雰囲気は無い。

実際、Cutrure Ampは、数年前に英国オフィスを開設したが、日本進出の話はまだ聞こえてこない(2019年1月11日時点)。

従って、ベンチャー起業家がこれをそのままパクッて、日本で流行らそうとしても資金は簡単につかないだろう。

5. 浸透のカギは、著名な有力企業をクライアントにすることができるか?

こういったサービスは米国で流行っているという事実だけでは、コンサバな日本の人事部の重い腰は動かないだろうが、インフルエンサー企業が導入しだすと、すぐに模倣して導入したくなるものである。

Cutrure Ampの場合、初期のクライアントにAirBnbやSlackが存在し、瞬く間に、NIKE、ORACLE、Adobe、GoProなどが導入するようになったという経緯がある。

日本の場合であれば、メルカリ、楽天、ヤフー、LINEあたりが使用すると、他の経団連企業に波及する可能性は十分にある。

人事部門は企業の生命線であるので、一旦イケそうだということがわかると、後手に回るとまずいからだ。

最後に

HRテックには既に米国に成功モデルがいくつもある。その中には、日本で流行りそうなものとそうではないものとが混在している。そうしたサービスの中から適切に取捨選択を行い、うまくインフルエンサー企業に導入をさせると、一気に浸透するチャンスはある。これから、日本版のHRテックサービスに注目したい。

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