1. 明治大学商学部と慶應義塾大学商学部との就職に関するデータ
野球やラグビーにおいては、ライバル同士の慶應、明治両校であるが、就職においてはどうだろうか?
もっとも、就職に関するデータは不完全であるし、異なる業種の企業間の優劣をつけることは難しいので、どちらがいいかを定量的に比較することは難しい。
しかし、ある程度の特徴・傾向を把握することは可能であろう。
例えば、今回使用したデータベースは、明治と慶應、それぞれの大学がHP上で開示されているものであるが、いずれも完全開示ではない。明治大学の場合は、上位30社までの開示にとどまっている。
他方、慶應義塾大学商学部の場合は、3名以上の就職先について学部別に開示をしてくれているのでほぼフル開示に近い充実した情報が提供されている。
このため、それなりの就職に関する概要を把握するには足りると考えられる。
なお、総合職と一般職とに関する開示は通常取れないため、この点はよくわからず、不便である。
<明治大学商学部のデータソース>
https://www.meiji.ac.jp/shushoku/6t5h7p00000c2zmv-att/6t5h7p00000c2zv1.pdf
<慶應義塾大学商学部のデータソース>
https://www.students.keio.ac.jp/com/career/service/files/3_3ijo_2018.pdf
2. 明治大学商学部の就職の状況
①明治大学商学部の主な就職先について
2018年度において、明治大学商学部の卒業生は1,030人。
そのうち、進学者・海外留学等をする者が合計13人である。
そこから、不明者を除くと、就職者数は943人となっている。
2018年度における、明治大学商学部の主な就職先上位30社は以下の通りである。
(就職者数943名) | |
企業・団体名 | 人数 |
有限責任監査法人トーマツ | 13 |
りそなホールディングス | 13 |
みずほFG | 10 |
東京特別区 | 9 |
NTTドコモ | 8 |
国歌公務員 一般職 | 8 |
三井住友海上火災 | 8 |
あいおいニッセイ同和損害保険 | 7 |
野村證券 | 7 |
三菱UFJ銀行 | 7 |
キーエンス | 6 |
大和証券グループ本社 | 6 |
みずほ証券 | 6 |
三菱UFJモルガンスタンレー証券 | 6 |
明治安田生命 | 6 |
有限責任あずさ監査法人 | 6 |
ANAホールディングス | 5 |
千葉銀行 | 5 |
凸版印刷 | 5 |
日本IBM | 5 |
三菱食品 | 5 |
山崎製パン | 5 |
伊藤忠テクノソリューションズ | 4 |
SMBC日興証券 | 4 |
KDDI | 4 |
損害保険ジャパン日本興亜 | 4 |
第一生命 | 4 |
日本電気 | 4 |
日本ハム | 4 |
富士通 | 4 |
(出所:明治大学HP 「主な就職先」)
②明治大学商学部の就職先の特徴
上記の上位30社のリストを一覧しただけでは読み取りにくいかも知れないが、
明治大学商学部の場合、業種別での最大シェアは情報通信業で18.7%である。
具体的には、NTTドコモ、伊藤忠テクノソリューションズ、KDDIがランクインしている。
そして、業種別で2番目のシェアは、製造業で17.8%である。
これも若干意外かも知れない。上位30社リストの中には、キーエンス、凸版印刷、日本IBM、三菱食品、山崎製パン、日本ハム、NEC、富士通などが見られる。
金融・保険業は16.3%のシェアであり、業種別で見ると3番目である。
過去と比べて、メガバンクを始めとする銀行が新卒採用を抑制したため、シェアは下がってしまった。それでも、りそな、みずほFG、三菱UFJ銀行、野村證券、大和証券、三井住友海上火災、明治安田生命等の大手金融機関が上位に入っている。
それから、明治大学商学部の大きな特徴として、監査法人が上位に入っていることが指摘できる。これは、明治大学が公認会計士試験の合格者数で継続的にトップ10入りしていることに起因するものだろう。
https://www.meiji.ac.jp/shushoku/6t5h7p00000c2zmv-att/6t5h7p00000c2zuv.pdf
③気になる金融機関の新卒採用者数の減少トレンド?
前年度と比べて、若干気になるところがあるとすれば、銀行を始めとする大手金融機関のシェアが低下していることである。
例えば、3メガバンクで見ると、前年度は、みずほFG22人、三菱UFJ11人、三井住友8人と、これだけで44人もの就職者数となった。
しかし、2018年度においては、みずほFG10人、三菱UFJ7人、三井住友に至ってはN.A.(3人以下)となり、半減している。
他方、大手証券会社(野村、大和、SMBC日興、みずほ)については、前年度が4社合計で24人だったところ、2018年度においては23人とほぼ横ばいである。
もっとも、手数料ゼロ化の新興や、主要顧客の高齢化というトレンドを考えると、大手証券会社の新卒採用者の抑制のリスクがある。
そうなった場合、大手金融機関は狭き門となるので、その点を踏まえた上での業界・企業選択がキャリア戦略上重要になって来るだろう。
大雑把な方向感としては、金融機関の減少を情報通信と製造業でカバーするということだろうか。
3. 慶應義塾大学商学部との比較
①慶應義塾大学商学部の就職状況について
慶應義塾大学商学部の就職者数は838人であり、明治大学商学部よりは若干少ない。
その上位就職先は以下の様になっている。
(就職者数 838人) | |
会社名 | 人数 |
三井住友銀行 | 16 |
アビームコンサルティング | 14 |
東京海上日動火災 | 13 |
大和証券 | 12 |
三井住友海上火災 | 11 |
野村證券 | 11 |
みずほ銀行 | 10 |
日本生命 | 10 |
三菱UFJ銀行 | 9 |
有限責任監査法人トーマツ | 9 |
SMBC日興証券 | 8 |
三菱電機 | 8 |
富士通 | 8 |
(出所:慶応義塾大学HPより外資系金融キャリア研究所抜粋)
なお、慶應義塾大学商学部の就職についてはこちらをご参照下さい。
<慶應義塾大学商学部の就職と課題>
https://career21.jp/2019-02-14-064610
明治大学商学部、慶應義塾大学商学部共に、大手金融機関と監査法人が上位に入っている点や、大手電機メーカーがランクインしていることが共通している。
②明治大学商学部と慶應義塾大学商学部における就職の比較
まず、大きな違いがあるとすれば、総合商社への就職者数である。
5大商社については、慶應義塾大学商学部からは20名が就職している。
他方、明治大学商学部についてはN.A.である。そもそも、明治大学は全学部を合わせて、5大商社への就職者数は11名であるので、この点は圧倒的に慶應義塾大学商学部優位である。
また、電通・博報堂については、慶應義塾大学商学部からは合計11名も就職している。
これに対して、明治大学商学部はN.A.である。
このように、一般的な大手企業については、明治大学商学部からも十分就職は可能なのであるが、商社、大手マスコミ、政府系、外資といった、特に難易度が高いところについては、慶應義塾大学商学部が有利であると考えられる。
もっとも、こういった超難関企業については、慶應義塾大学商学部から内定を取れる学生はごく一部であるので、この点は本人次第ではあるのだが。
3. 明治大学商学部の就職における課題
明治大学商学部の場合、大手企業への就職率は高く、業種もそれなりに分散していて、バランスが取れていると考えられる。
また、公認会計士試験に強いということもあり、監査法人への就職者数の多さにおいても、存在感を示すことができていると思う。
もっとも、明治大学の場合は、MARCHの中では間違いなく最上位を争う位置にいるのだろうが、MARCHという枠組みから抜け出して、早慶に近づこうと考えれば、超難関企業での就職力で追い付く必要があるだろう。
この点については、学生の自助努力だけでは限界があるので、大学側がプロジェクトを作って、OB会の協力も仰いで全力で取り組む必要があろう。
ターゲットとしては、総合商社、大手マスコミ、外資系企業全般、コンサルあたりとなるのだろうが、対策としては、選抜コミュニティのようなものを作って、one on oneでの指導が必要になるのではないだろうか。