神戸大学経営学部の就職について。金融、商社に強い?

1. 神戸大学経営学部の基本情報

①関西と首都圏における評価のギャップが大きい

実は、神戸大学経営学部に対する評価は、関西と首都圏とではかなり差がある。

神戸大学経営学部は旧三商大の流れを汲み、一橋大学の商学部がライバルである経営・商学系の名門校である。難易度においても、センター試験得点率82%、偏差値65程度が求められ、大阪大学経済学部とほとんど難易度は変わらないとも言われ、立地・環境も良いことから、関西での評価・人気度は非常に高い。

他方、首都圏においては、神戸大学の場合「旧帝大」ではないということと、早慶より下というイメージが強く、せいぜい、横浜国大、千葉大、筑波大学と同じ位というイメージではないだろうか?

なお、定員は260名、2021年入学生の場合は男女比率が約2:1と、男子比率が高くなっている。この傾向についてはあまり変化がない。

https://passnavi.evidus.com/search_univ/0620/department.html?department=030

②神戸大学経営学部の進路の概要

神戸大学経営学部の卒業生279名の内、9名が大学院に進学する(2021年3月卒業生)。就職者総数は250名であり、そのうち公務員になる者が13名であるので、民間企業就職者数は237名である。

2. 神戸大学経営学部の具体的な就職先について

神戸大学の就職先に関する情報開示は大変良く、京都大学と同様、1名でも卒業生が就職している企業については全て学部別に開示してくれている。

神戸大学経営学部の就職先企業については、結構分散化されており、2名以上のところを以下抜粋してみた。

それに加え、恣意的になってしまうが、いわゆる人気企業は就職者1名のところが多く、これらについても主な企業については抜粋してみた。

9名 EY新日本有限責任監査法人、三井住友銀行
6名 有限責任あずさ監査法人
5名 東京海上日動火災
4名 楽天
3名 ゲンキー、住友化学、みずほFG、野村證券
2名 凸版印刷、丸紅、ブリヂストン、PwCあらた有限責任監査法人、NTTファイナンス、三井住友海上火災、三菱UFJ銀行、第一生命、NTTドコモ、シンプレクス、読売広告社、神戸市役所、シャープ、ブラザー工業、三井住友ファイナンス&リース、住友重機械工業
1名(抜粋) レバレジーズ、TOTO、任天堂、テルモ、大日本印刷、近鉄、阪急阪神、日本航空、セブンイレブン・ジャパン、兼松、双日、旭化成、三菱ケミカル、昭和電工、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー、ベイカレント・コンサルティング、みずほ総合研究所、有限責任監査法人トーマツ、SMBC日興証券、アフラック、JCB、みずほ証券、りそな銀行、三井住友カード、三井住友信託銀行、滋賀銀行、住友生命、信金中金、新生銀行、大同生命、日本政策金融公庫、積水ハウス、日揮、KDDI、NTTコミュニケーションズ、ソフトバンク、キリン、サッポロビール、伊藤ハム、日本ハム、バンダイナムコ、日本マクドナルド、東洋紡、JFE、クボタ、住友電気工業、神戸製鋼所、関西電力、大阪ガス、ソニー、ダイキン工業、NEC、日本電産、日立、富士通、TDK、野村不動産、東急

(出所:神戸大学HP 「2020年度 神戸大学卒業者、修了者の就職・進学状況」より外資系金融キャリア研究所作成。2021/3卒業生対象)

ご興味がある方はこちらのリンクをご参照ください。

http://www.career.kobe-u.ac.jp/images/various_data/07_buss.pdf

3. 神戸大学経営学部の就職に関する評価

上記の通り、神戸大学経営学部の就職状況は概ね良好であり、希望すれば、ほぼ大手企業への就職は可能と思われる。

特徴としては、まず監査法人への就職者が多いということが指摘できる。これは、神戸大学経営学部は伝統的に公認会計士試験に強いからであろう。また、三井住友銀行を始めとするメガバンク、大手証券会社、大手生損保にも例年一定数が就職している。

一つ気になったのが、商社への就職実績である。2020年度(2021/3卒)の場合、総合商社は、丸紅2名、双日1名のみである。

例えば、2年前の2019/3卒については、住友商事3名、丸紅3名、伊藤忠1名、豊田通商1名という結果であった。就職者数が250名程度ということを考えると検討していると思われた。

神戸大学経営学部の場合、旧三商大の伝統を汲んでいるため、商社への就職には強かったのであるが、この点は気がかりである。

なお、任天堂、ベイカレント・コンサルティング、アセットマネジメントOne、キリン、ソニー、日本電産、野村不動産、東急など、新旧の人気業種に非常に幅広い就職実績を有している。

ローカル色については、旧地方帝大の経済系の学部よりも薄く、いわゆる人気企業への就職という点においては、神戸大学経営学部の方が良好と言えるだろう。

4. 一橋大学商学部、慶応大学商学部との比較

課題があるとすれば、在京の有力大学との比較においてであろう。就職偏差値上位企業・就職人気ランキング上位企業に限ってという限定は付くが、超人気企業・超難関企業への就職者数や就職率について、一橋大学商学部と比較すると、かなりの差があると言わざるを得ない。

<一橋大学商学部の就職と課題>

https://career21.jp/2018-12-31-002951/

まず、難易度トップの外銀・外コンという観点からは、一橋大学商学部からは少数ではあるが就職実績がある。

また、国内系企業では最難関の総合商社についても、一橋大学商学部は存在感を示している。

また、慶応大学商学部と比較しても、慶応大学商学部の就職内容は、一橋大学商学部と遜色ないので、ここと比べても、神戸大学経営学部の方が不利だと思われる。

<慶應義塾大学商学部の就職と課題>

https://career21.jp/2019-02-14-064610/

5. 東京の有力大学商学部との差異の原因は何か?

①情報量の差か?

そもそも、神戸大学経営学部の学生が、外銀・外コンを志望しているのかどうかはよくわからない。ただ、十分に理解した上で志望しないのであれば問題ないが、そもそも、情報が不十分だから志望しないというのであれば問題であろう。

外コンといっても、MBB等の戦略系の場合には、採用人数が少なく、同じ大学であれば理系が優位なので、志望者が少ないのは理解できなくもない。

しかし、近年大量採用を行っている総合系ファーム、例えば、アクセンチュア、デロイトトーマツ・コンサルティング、PwCコンサルティング、ベイカレント・コンサルティング、アビームコンサルティング、シグマクシスといったところには興味を示しても良さそうな気もする。

キー局、電通、博報堂といった大手マスコミ関係は、どうしても東京が有利なので仕方が無いが、総合商社の場合は、住友商事、伊藤忠、丸紅という伝統的に神戸大学が強い企業があるので、人数的に合わせてコンスタントに10名くらい内定者を出したいところである。

②東京に出ていくのは費用も労力もかかるが…

神戸大学経営学部の場合、個々の学生が希望して相応の準備をすれば、コンサルティング・ファーム、総合商社、大手マスコミ等から内定を得ることも可能であろう。

そのためには、東京に出て行って、東大、一橋、早稲田、慶応といった大学の優秀層を知る必要がある。そのためには、費用も労力もかかり、大変ではあるが、地域的な不利さはいかんともしがたいので、ここは踏ん張るしかない。また、学校やOB会もサポートすべきであろう。

この点、関西の有力大学で検討しているのが京都大学経済学部である。ここの就職内容は、東京のトップ大学の経済系の学部とほとんど変わらない。学生は、夜行バスとかを利用して東京での就活を行うといった努力をしているようだ。

神戸大学経営学部の学生の場合、京都大学経済学部の知り合いがいる場合もあるだろうから、東京メインの就活をする友人を見つけて一緒に活動をするのもいいかも知れない。

<京都大学経済学部の就職と課題>

https://career21.jp/2019-02-26-064501/

③コロナ後は、状況が変わるか?

2020年初頭に発生したコロナウイルスの問題は世界中に拡がり、2021年にはワクチンが普及し始めたが、2021年12月時点ではかなり落ちついた状態になっている。もっとも、変異株の登場など、気になる点はまだまだ多く、完全収束はまだまだ読みにくい状況にある。

ただ、リモートによる会社説明会や面接が導入された点は、非首都圏の神戸大学の学生にとってはプラスであろう。もっとも、他大学の学生やOBとのコミュニケーションは取りにくくなった面もあるので、この点、人気企業を目指す場合には意識的に情報を取りに行かねばならない点は従来通りである。

感想

①難関企業への就職を志望する際には、東京の有力校を意識することが重要

神戸大学経営学部の就職状況は全般的に良好と言える。関西に存在する分、他の地帝系の経済学部よりも就職力は高いと言えそうだが、反面、一橋や慶応などの東京の有力校と比較すると不利な点は否めない。

外銀・外コン・総合商社、或いは、大手マスコミ等を狙うのであれば、情報を収集し東京に出向いていく他は無い。それは在京の有力校と比べると振りであるが、同じ関西の国立大学である京都大学経済学部の学生は対応できているようなので、参考になるのではないだろうか。

②地元関西に残るのか、就職を機に東京で働くことにするのかよく考えた方がいい

早慶、MARCH、関関同立といった私立の有力校については、学生の数が多いので、就活力に関する学生間格差が大きいと言われている。神戸大学は国立大学で生徒数は少ないのであるが、その割には、就職力に差があるように見える。これは、外資系、大手金融機関、商社などの難関企業を目指す学生と、地銀や地元の製造業に就職する学生とがいるからであろう。

地元企業を志望すること自体は悪くはないが、将来も有望なIT系や金融等のサービス業は東京に過度に集中している。また、金融機関については、地銀は将来かなり厳しい状況に置かれることが懸念されている。従って、何となく地元企業へ就職という発想はリスクが高い。家庭の事情で地元に残らざるを得ないというケースもあるかも知れないが、そうでなければ、就職を機に東京で働くことも検討した方がいいだろう。このあたりの事情は、十分なOB訪問をすれば、判断を下すための情報は十分集めることができるだろう。

 

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