ベーリンガーインゲルハイムのリストラについて

意外感の強い製薬会社のリストラだが、通常は40代以上が対象である。

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2017年末の第一三共のリストラ発表を始め、MSD、サノフィ、ベーリンガーインゲルハイム、大正製薬と国内系、外資系を問わずリストラが行われている。
高給で安定性が強いと思われていた製薬業界だけに、特に業界事情に詳しくない他業界のサラリーマンからすると、意外感が強く、安全な世界はどこにも無いのかと寂しい気持ちになる。

その中で、30代まで早期退職の対象としたベーリンガーインゲルハイムは異色である。
リストラというと、一般に金融業界のものはエグイとされる。何故なら、他業界と比べて若手も対象とするからだ。特に、リーマンショックの頃はひどく、みずほ証券、SMBC日興証券、新生銀行などがドラスティックな早期退職制度を実施した。

30代というと、まだ社会人になってせいぜい10年程度の経験しかなく、定年まで半分以上残っている人たちである。
したがって、30代まで対象の早期退職制度を実施するということは、「この会社の未来は暗い」というようなメッセージとなり、会社に残るものにとってもショックは大きい。

30代の場合は、40代と比べて遥かに選択肢が広いが…

転職ということを考えると、30代は40代と比べると遥かに選択肢が多く、その点では有利である。特に、日本の転職市場においては、30半ばまでであれば尚更求人は多い。

しかし、安易に割増退職金という餌に飛びつかない方がいい。
まず、注意しなければならないのは割増退職金が魅力的に見えることだ。
例えば、第一三共の場合には「5000万円割り増しも」とあったが、転職により年収が300万円さがると、17年くらいでトントンになってしまう。30代だとそれ以上働けるわけなので長期的にみると、割増退職金の効果は見た目以上に薄まるものだ。

しかも、注意しなければならないのは「実質年収」を転職先企業と比べないといけないということだ。日本の大手企業、特に製薬会社の場合には、福利厚生が手厚い。

営業手当、住宅補助、保険代、企業年金、社員食堂等、これらが結構な金額になるので、転職先企業とこれらを含めた上で比較しないといけない。
特に、ベンチャー系企業の場合には、こういった福利厚生が薄いので要注意だ。
日本の場合、バイオベンチャーはあまり強くない…
米国と比べて日本の場合、バイオベンチャーはあまり強くない。80年代から注目されるバイオベンチャーはあるものの、アムジェンのような巨大企業に育たない。
日本の規制とかカルチャーといった背景があるのだろうが、目先の給与アップ(特に福利厚生の差をチェックしなければならない)に飛びつかないのが賢明だ。

ネット周りが得意であれば、業種転換が可能な人もいるだろうが…

製薬会社の30代であれば、ネット周りも詳しい優秀な人材もいるだろう。
そのような場合には、ネット系ベンチャー企業というのも選択肢になり得る。
ただ、証券会社と違って製薬会社の社員の場合には、山っ気がある人が多いとは思えず、カルチャー的に馴染むかどうか留意しなければならない。
結局は、同じ製薬業界をベースに、少し先を見据えて意思決定するのがオーソドックスな対応になろう。

やはり一番転職しやすいのは、同じ業界だ。ただその際には、目先よりも中期的な視点から考える必要がある。10年以上先は予測できないが、3年~5年位を見据えたい。

製薬会社の場合には、企業分析になれていない人も少なくないだろうが、国内系大手製薬会社の場合にはIR資料で詳細な情報開示をしているので、そういった客観的なデータを見てみることも重要だ。転職エージェントや同業他社の友人の話だけだと、目先の善し悪しにとらわれがちだ。

30代の早期退職の場合には、40代以上と比べると転職の選択肢が広い点では恵まれている。他方、先が長い分、割増退職金の効果は薄れていく。
このため、今の会社に残るという選択肢をすぐに放棄することは無く、福利厚生や中期展望も踏まえた上で、転職対象企業と比較していく他ない。

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