1. 一橋大学法学部の位置づけ
東大法学部の場合、「上位1/3は法曹、次の1/3が官僚、残りの1/3が民間」というように、伝統的に法曹志向が強いため、弁護士人気が凋落した現在でも、約2割が法科大学院に進学し、予備試験一本組も含めると3割近くが法曹を目指すと思われる。
これに対して、一橋大学法学部の場合には、歴史的にそこまで法曹を目指さなければならないといったプレッシャーは無いであろう。
しかし、一橋大学法科大学院が新司法試験等で検討していることもあり、慶應大学法学部(法律学科)と比べると、法曹志向は強いようにも思われる。
2. 法科大学院か就活かで迷うのは2割位?
一橋大学法学部から法科大学院に進学する学生の比率は約15%である。
予備試験専念組を含めると、合計2割位が就活をせずに法曹を目指すといったところであろうか?
その場合、法学部生の1割位は、何と言われようが最初から法曹一本で、1年生の時から伊藤塾に通っているのだろう。
しかし、全体の2割位の学生は、法科大学院に進学するか、民間企業への就活を始めるか迷っているのではないだろうか?
3. 法科大学院か就活かの判断軸
法曹を目指すか就活を選ぶかの判断基準は、その人の価値観によるということだが、大体こういったところであろうか?
渉外事務所パートナー>勝ち組民間企業>街弁>負け組民間企業>∞>新司法試験三振(五振?)・フリーター
おそらく、迷うということは、年収水準を気にすることなく、何があっても「弁護士>民間企業」という程の法曹優位という価値観を持っていないわけであろうから、弁護士になる場合にはそれなりの待遇・コスパを意識するということであろう。
従って、晴れて弁護士になれた場合でも、渉外事務所のパートナーになれないと、民間企業に負けてしまう場合があるということであろう。
そして、間違いないのは、最終的に弁護士になれなかった場合は、最悪だということである。旧試よりも優しくなったとは言われつつ、合格率は20%台しかない
難関試験なので、この最悪シナリオも念頭に置かざるを得ない。
4. そうすると、カギは就活に切り替えた場合は、勝ち組に就職できるか?
法科大学院を選択した場合には、試験に落ち続け最終的に弁護士になれないというリスクと、弁護士になれてもコスト(費用、時間)が高いという問題点がある。
そして、上の基準軸を前提とした場合、勝ち組企業に就職できれば、渉外弁護士パートナーというベストシナリオの夢は断たれるわけだが、かなり良いキャリアということになる。
そうなると、カギは就活に切り替えた場合、勝ち組企業に就職できるかどうかということになる。
すると、ここで問題となるのが、何をもって「勝ち組企業」と考えるかだ。
これは、その人によって定義は異なるであろう。
もし、メガバンクや生損保の総合職で「勝ち組企業」と認識するのであれば、決まりである。
しかし、学生の主観的な満足度は、周りの学生の就職先や評価によって左右されるのであろうから、「勝ち組企業」というのは、外銀、外コン、総合商社、国内系金融(専門職コース)、電博/キー局、三菱地所・三井不動産、このあたりであろうか?
そうなると、難易度は高く、きっちりした準備を早くからやらないと内定をもらえる保証は無いだろう。
5. しっかりとした就活の対策をすれば、非財閥系商社は何とかなる?
民間への就活に切り替える場合、課題となるのが英語である。
予備試験/法科大学院関係の勉強というのは、英語とは無縁の世界であるし、英語の勉強をやっている余裕はない。
このため、帰国子女等でなければTOEIC860以上のスコアを持つにはゼロから準備を始める必要がある。
一橋法学部生で、法科大学院かで迷っている学生の場合、外コン(MBB)を志望することはなさそうである。
となると、狙いは、外銀、国内系金融専門職コース、総合商社の併願パターンか?
そうであれば、法律から、英語と証券アナリスト等の勉強に切り替えることとなる。もっとも、法科大学院を目指すハードな勉強と比べれば楽なものだろう。
これはこれで結構厳しい戦いになるのだろうが、総合商社のうち、
非財閥系(要するに、伊藤忠、丸紅)あたりであれば何とかなる可能性はある。
また、外コンでもアクセンチュアとかベイカレントのような総合系であれば何とかなる可能性は十分にある。
とはいえ、外銀とは別の準備をしなければならないのだが。
最後に
法科大学院への途を諦めたところで、勝ち組への就職を決めることは、それはそれで、楽ではない。
新司法試験のリスクや、法科大学院の費用・時間・手間を考えると、迷っている位なら、行かなくても将来後悔はしないと思う。
何故なら、街弁の待遇は厳しく、将来は更に悪化する可能性もあるからだ。
でも、就活に切り替えるのであれば、しっかりと準備をして納得いくところから内定をもらえるよう頑張るべきだろう。