中央大学法学部の進学と就職について。都心移転は大きなプラス材料?

1. 中央大学法学部の概要と進路

中央大学法学部の1学年約1400-1500人。
法律学科、政治学科、国際企業関係法学科の3学科体制である。
男女比率については、約6:4で男子学生がやや多い。

中央大学法学部というと、伝統的に「司法試験」のイメージがあり、それを強みとしているのだが、法科大学院進学者の割合はそれ程高くは無い。

大学のHPによると、2020年度卒業生については、進学率は約14%である。
もっとも「受験準備者」が6.8%とそれ以外に「無業」が4.2%なので、予備試験ルートを狙う学生も少なからずいるので、法科大学院組と合わせて約1/4位が法曹を目指すというイメージであろうか。
https://www.chuo-u.ac.jp/career/center/employment_data/2020/

こちらの大学のHPによると、卒業生の約75%は就職をしているようである。

2. 中央大学法学部の就職状況

中央大学の就職状況の情報開示は非常に良い。就職者が1人以上の企業・団体は全て開示している。このため、興味がある方は、こちらのリンクをご参照ください。

<2020年度法学部卒業生 就職企業データ>
https://www.chuo-u.ac.jp/uploads/2021/05/career_center_employment_data_2020_03.pdf?1638940844802

①公務員になる者が多い

上記のリンク先のデータを見ると、中央大学法学部性の就職先の特徴としては、公務員が多いことがあげられる。

民間企業と官公庁の中で、上位5位までを全て公務員が占めている。
東京都庁(15名)、地方裁判所(12名)、国税庁(11名)、国土交通省(8名)、横浜市役所(8名)等である。

②民間企業の就職状況

民間企業については、3名以上の就職先を全て抽出すると以下の表のようになる。

就職者数 企業名
7人 楽天、三井住友銀行
6人 三井住友信託銀行、積水ハウス、日本政策金融公庫、日本生命、明治安田生命
5人 あいおいニッセイ同和損保、みずほFG、りそな、三井不動産リアルティ、第一生命、東京海上日動火災、日本電気
4人 ベイカレント・コンサルティング、NTT東日本
3人 NTTコミュニケーションズ、きらぼし銀行、JCB、セコム、パーソルプロセス&テクノロジー、ゆうちょ銀行、レイス、三井不動産レジデンシャル、三菱UFJ銀行、大和証券、JR東日本、凸版印刷、日本マクドナルド、日本銀行、福岡銀行、有限責任監査法人トーマツ

(出所:中央大学HP、「進路・就職データ 2020年度」 法学部より、外資系金融キャリア研究所編集)

なお、恣意的にはなるが、2名以下の就職先で注目される企業としては以下のものがある。

PwCあらた有限責任監査法人、Zホールディングス、アクセンチュア、アフラック、キーエンス、セールスフォース・ドットコム、ソフトバンク、パナソニック、みずほ証券、三菱UFJリース、三菱UFJ信託銀行、住友生命、住友電工、新生銀行、大日本印刷、日本IBM、日本郵船、富士通、芙蓉総合リース、本田技研、野村證券、Donuts、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング、JFE商事、LINE、NTTドコモ、Sansan、Schoo、あおぞら銀行、アップル、アビームコンサルティング、NTT都市開発、オリエンタルランド、サントリー、ジーニー、シグマクシス、デロイトトーマツコンサルティング、ユニリーバ、レバレジーズ、三井住友カード、鹿島、住友商事、東京建物、野村不動産

3. 中央大学法学部の就職先の特徴

①金融機関が最大シェアだが業種はかなり分散している

中央大学法学部の民間企業の最大シェアは金融機関である。
上位にはメガバンク、日本生命、第一生命、東京海上日動火災、大和証券等の大手金融機関が並ぶ。中央大学法学部の特徴としては、渋めの選択をしている点が指摘できる。JCB、三井住友カード、三菱UFJリース、芙蓉総合リース、新生銀行、あおぞら銀行、アフラック等、リース・カード業界の優良企業を選択したり、業界最上位ではないが個性的でWLBの良い金融機関を選択している。この点は、堅実な校風と合致するように見える。

金融機関以外では、IT、コンサル、メーカーからベンチャーまでかなり分散しているのが特徴である。例えば、人気の総合コンサルではベイカレント、アクセンチュア、EY、デロイトトーマツ、PwC、シグマクシス、アビーム等の就職実績がある。また、ベンチャーでは、レバレジーズ、Schoo、Donuts、Sansan、ジーニーなどが見られる。

外資系企業については、セールスフォース、ユニリーバ、日本IBM等の実績がある。

②商社についてはどうか?

学生から人気ナンバー1の総合商社については、残念ながら2020年度卒(21/3卒)については、住友商事1名のみである。年度によっては、もう少し多い年もあるかと思うが、MARCHトップクラスの中央大学法学部でも総合商社は難しそうだ。

他方、キーエンス、日本郵船、東京建物、博報堂等の難関企業の実績はあり、挑戦すれば可能性はあるのではないだろうか。

4. 中央大学法学部の就職における課題

①従来の様に司法試験関連で存在感を示すのは難しい?

中央大学法学部の就職状況については良好で、希望すれば、超難関企業を除けば、チャンスは十分にある。

もっとも、司法試験制度改革に伴う弁護士数の急増と平均的な年俸水準の低下に伴い、学生における法曹人気は低下してきている。

また、法科大学院については合格者ではなく合格率で評価される傾向が見られる中、合格率では東大、京大、一橋、早慶には大きく引き離されている。だからと言って、法科大学院よりも予備試験を重視してもそれが評価につながるとは限らないので、その点は悩ましいところであろう。

そうなると、司法試験での強みだけでは勝負しにくくなり、また、各校の国際系学部が存在感を高める中で、就職力を高めて行く必要があるのではないだろうか。

②都心キャンパスへの復帰は大きなプラス材料

MARCH、或いは早慶と比較した場合において、中央大学法学部の最大の弱みともいうべき点は、キャンパス立地であった。都心から電車で1時間、さらに最寄り駅から山道を登って通うというのはライバル校のキャンパスが都心に存在することと比して、明らかに不利であった。

しかし、遂に2023年4月から中央大学法学部は念願の都心復帰となる。茗荷谷キャンパス(文京区)は都心からも近い上に環境も良く、これは長い目で見てかなりのプラス材料だと思われる。当然、優秀な学生を集めやすくなるわけなので、就職においてもポジティブに効くだろう。そうなると、早慶の上位層にも負けない様に、外資系や商社を狙う学生が増える可能性はあるだろう。

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