1. 中央大学法学部の概要と進路
中央大学法学部の定員は1学年1,439人。
法律学科、政治学科、国際企業関係法学科の3学科体制である。
男女比率については、約6:4位で、やや男子学生が多い。
中央大学法学部というと、「司法試験」のイメージであるし、
それを強みとしているのだが、法科大学院進学者の割合は
思ったほども高くは無い。
大学のHPによると、2018年度卒業生については、進学・留学者が
13.9%ということである。この中には法科大学院以外の進学者も含まれるので、法科大学院進学者は12~13%位だろうか?
最近では予備試験ルートを狙う学生もいるということだが、
「受験準備者」が5.0%と「無業」が2.4%なので、これらを合わせて7.4%だから、
法科大学院進学者と合わせても、MAX20%位しか法曹を目指さないということである。
結局、中央大学法学部の約8割の学生は就職をするのである。
2. 中央大学法学部の就職状況
大学のHPによると、中央大学法学部の約8割の卒業生が就職することになる。
就職者のうち、公務員となる者の割合は22.3%であり、経済学部や商学部と比べて圧倒的に高い割合である。
(2018年度卒業生)
中央大学法学部の就職者数は約1100名強であるが、中央大学の
具体的な就職先の開示は大変良く、1名でも就職している企業・役所を
具体的に開示してくれている。
https://www.chuo-u.ac.jp/uploads/2019/06/career_center_employment_data_2018_03.pdf?1586755287524
このうち、イメージをつかむために4名以上の就職先について
抽出すると以下のようになる。
企業名 | 就職者数 |
国税庁 | 18 |
東京都庁 | 15 |
大和証券グループ本社 | 13 |
地方裁判所 | 12 |
神奈川県横浜市役所 | 12 |
三菱UFJ銀行 | 9 |
第一生命保険 | 8 |
厚生労働省 | 8 |
りそなホールディングス | 7 |
みずほFG | 7 |
神奈川県庁 | 7 |
東京都杉並区役所 | 6 |
三井不動産リアルティ | 5 |
三井住友銀行 | 5 |
ニトリ | 5 |
総務省 | 5 |
埼玉県庁 | 5 |
東京都大田区役所 | 5 |
自衛隊 | 4 |
日本放送協会 | 4 |
東芝 | 4 |
アクセンチュア | 4 |
アビームコンサルティング | 4 |
凸版印刷 | 4 |
パナソニック | 4 |
明治安田生命 | 4 |
静岡銀行 | 4 |
日本政策投資銀行 | 4 |
三井住友海上火災 | 4 |
JR東日本 | 4 |
NTTデータ | 4 |
日本生命 | 4 |
経済産業省 | 4 |
群馬県庁 | 4 |
東京都練馬区役所 | 4 |
(出所:中央大学HP 「就職先企業データ」より外資系金融キャリア研究所が抜粋)
3. 中央大学法学部の就職先の特徴
①公務員が多い
最大の特徴は何といっても公務員が多いことである。上位には、国税庁、地方裁判所、横浜市役所、厚生労働省、神奈川県庁、杉並区役所、総務省、埼玉県庁、大田区役所と中央官庁から地方公共団体まで官公庁が並ぶ。
②民間企業では、金融、情報通信、メーカーが多いのは、経済学部や商学部と同じ
民間企業への就職先については、比較的分散しているが、業種別で見ると
金融機関への就職者の割合は14.8%と最大である。そして、通信・情報サービスが11.2%、メーカーが11.2%、卸・小売りが7.7%と続く。この傾向は、経済学部や商学部と同様である。
中央大学の看板学部、というより、MARCHの中でもトップクラスの学部
だけあって、光るところ(超難関企業)にもチラホラと就職している。
アクセンチュア(4名)、アビームコンサルティング(4名)、キーエンス(3名)、住友商事(2名)、ヤフー(2名)、シグマクシス(2名)、博報堂(1名)、豊田通商(1名)、三井不動産(1名)、伊藤忠(1名)、野村総合研究所(1名)、日本銀行(1名)、サイバーエージェント(1名)、デロイト・トーマツコンサルティング(1名)、日本政策投資銀行(1名)、といったところである。
なお、5大商社への中央大学からの就職者は2018年度は6名と前年度と比べて余り振るわなかった。しかし、そのうちの半分(住友商事2名、伊藤忠1名)が法学部であり、その意味では存在感を示している。
4. 慶應大学法学部や早稲田大学法学部との比較
何をもって比較するのかが難しいところであるが、
まず、法科大学への進学率は3校ともにあまり変わらない。
卒業生の内、約1割強であり、15%には届かない水準である。
就職先の特徴については、
中央大学法学部の公務員への就職者の割合が、早慶よりも高く、
他方、金融機関への就職者の割合が低いというところが
大きな特徴であろう。
なお、外銀・外コン・総合商社、大手マスコミといった、
いわゆる就職偏差値や人気ランキングの切り口から見ると、
早慶に軍配ということであろうか?
特に、そういう目立つところへの就職については、慶應大学法学部が
抜きんでているようだ。
5. 中央大学法学部の就職における課題
①従来の様に司法試験関連で存在感を示すのは難しい?
中央大学法学部の就職状況については、基本的に良好で、
大手には入れる可能性が高いのではないだろうか。
もっとも、課題があるとすれば、非法曹志望の生徒の就職先を
学校としてどのように考えるかということである。
従来であれば、司法試験の合格実績が法学部の評価の全てといった
風潮もあったかも知れないが、司法制度改革に伴い、弁護士数が急増
したことによって、明らかに弁護士の人気が下がってきている。
また、司法試験においても、合格者数や、特に合格率において、
東大、一橋、早稲田、慶應に差をつけられてきている。
今から、新司法試験の合格率や合格者数で、東大や一橋、早慶の法科大学院に追い付くのは難しいと思われる。また、予備試験の合格者増でプレゼンスを示すというアイデアもあるようだが、予備試験の大学別の成果はあまりとりあげられないので、ここでもアピールするのは難しいと思われる。
中央大学法学部としては、MARCHから抜け出して、早慶と同じ序列に
なりたいところであるが、司法試験でプレゼンスを示すのは難しく、就職先でインパクトを出さないと難しいのではないだろうか?
②都心キャンパスへの復帰は大きなプラス材料
MARCH、或いは早慶と比較した場合において、中央大学法学部の最大の弱みともいうべき点は、キャンパス立地であった。都心から電車で1時間、さらに最寄駅から山道を登って通うというのはライバル校のキャンパスが都心に存在することと比して、明らかに不利であった。
しかし、遂に中央大学法学部も念願の都心復帰が決まった。これは長い視点で見てかなりのプラス材料だと思われる。優秀な学生を集めることができると、司法試験においても、就職においてもポジティブに効いてくるはずなので今後の就職力の向上が期待されるところである。