東京海上日動火災保険の給料、キャリアプラン等について、就活の観点から考えてみた。

1. 東京海上火災は昔からの超エリート企業であったが…

東京海上火災、今は東京海上日動火災であるが、この会社は戦前から存在する超エリート企業であった。1970~1980年代の就職人気ランキングにおいてはトップに輝いたこともあった企業であり、保険会社の中でも頭一つ出ていたのである。

日動火災と合併したからかどうかよくわからないが、今では、東大、一橋、早稲田、慶応の学生の間では、特別な企業というほどのブランド価値は無いそうだ。

しかし、給与水準はメガバンクを上回り、国内系企業の中ではトップクラスだし、安定性や知名度は極めて高いので、就活の対象企業としてどうかについて考えて見たい。

2. いわゆる総合職はグローバルコースという

東京海上日動火災の場合、新卒採用は、グローバルコースとエリアコースの2つのコースに大別される。

このうち、グローバルコースというのがいわゆる総合職である。エリアコースというのは主として昔でいうところの女子を対象とした一般職である。

エリアコースの場合、給料等の待遇はグローバルコースのように突出して高いものではないようだ。

ここでは、グローバルコースに絞って考察することとしたい。

3. 東京海上日動火災の給料、年収水準について

①初任給、主任の年収

学部卒の場合、初任給は22万8670円。これに残業代とボーナスである。初年度は他の会社と大きく異なることはなく、トータル400万円程度である。

入社4年目にはほぼ全員が主任に昇格する。すると、若干給与水準が上がり、残業代、ボーナスを含めて年収が700万円に到達する。

総合商社と比べると、若干落ちるが、メガバンクや大手証券会社と比べると、悪くない水準である。

②課長代理、課長の年収

入社7年目にはほぼ全員が課長代理に昇格する。この時点で年収が大台、1000万円に到達する。

従って、現役、ストレートで就職した学生は20代の内に1000万円プレイヤーになることができる。

その後、じわじわと上がり続け、10年経過時点の、32歳ごろには年収は1200万円程度になる。

その上の課長には最速14年目頃に成る者がでるが、一般的には、30代後半くらいであろうか。

どこの会社も共通であるが、課長からはその人の評価によって昇格時期に差がつき始める。

課長になると年収は1500万円程度になる。

③部長からの年収について

部長にはなかなか昇格できない。部長に昇格できずに定年を迎える者の割合の方が高い。

部長には早ければ20数年目、40代半ばで昇格が可能である。年収は2000万円を越えることとなる。

昔は東京海上の部長だと、2500万円位はあったような気がするが、メガバンク同様、若干下がっているのかも知れない。

以上のように、外銀とか外コンのようなアップORアウト、リストラ、といったプレッシャーが無い中、上記の給与水準はかなりの魅力があると考えられる。

大手金融機関の中でも、メガバンクより高く、生命保険会社では日本生命、証券会社では野村證券と同じ水準だろうか?

東京海上日動火災の場合には、企業年金や退職金も手厚いので、生涯賃金という切り口で見ると、国内系企業ではトップ10には入ると思われる。

4. 東京海上日動火災の問題点、弱点

①中長期的な国内市場の縮小化と待遇悪化の懸念

これは東京海上日動火災に限った話ではなく、内需型、規制型の日本の産業全体に当てはまる話であるが、少子高齢化に伴う国内市場の縮小がある。

そうなると、今の給与水準は維持できるとは限らず、20年後には今の水準の8掛けくらいになる可能性もある。

経営陣もこのことは百も承知で、アジア等の保険会社のM&Aをやったりしているが、海外企業に対するM&Aはリスクも高く、失敗すると大きな特損原因にもなりかねない。

また、フィンテックというか、IT・AI化の進展によって、人件費が削減されていくリスクも否定できない。

②転職力が無い

外資系証券会社(外銀)、外資系運用会社(ヘッジファンドも含む)の場合には、国内系企業から転職するとだいたい年俸アップとなるだろう。

他方、外資系損害保険会社というのは、そもそも企業数が少ないし(アリアンツ、ミュンヘン再保険等)、転職しても特に給与水準が上がるわけではない。

また、東京海上日動火災にも運用部門はあるが、競争力としては運用会社に劣るので、外資系運用会社には転職するのは難しい。

ましてや、東京海上日動にはIBDは無いというか、業法上出来ないので、外銀への転職はほぼ不可能である。

もちろん、コンサルティング・ファームも無理だし、大手製造業に転職するのも難しい。

また、スキル的にもカルチャー的にも、メルカリのようなベンチャー企業には、20代の若手のポテンシャル採用的なものを除くと、厳しいだろう。

もちろん、クビやリストラは基本的にしない会社・業界なので、転職を考える必要は無いが、いざ転職が必要になった場合には転職力が無いというのが大きな弱みだ。

東大を出て、東京海上に入社し、40代で本社企画系・人事系・経理系の課長職(年収1700万円)に就いていても、年収を維持できるような転職先は見つからないのだ。

5. 就活対象企業としての視点

東京海上日動火災は、知名度、安定性、年俸水準と申し分ないが、長年勤めても汎用性のあるプロフェッショナル・スキルを習得できない。

これが最大の不安材料であろうか?

もちろん、転職をする必要は無いのだが、20年後に給与水準が下がった場合には他に動くという選択肢はなかなか見つからない。

もちろん、将来必ず給与水準が下がるわけでも無いし、日本の一流企業の場合転職を前提に就職している学生はまだまだマイノリティであろう。

従って、安定志向の学生には悪くない選択肢の一つだと考えられる。

6. Specエントリー

従来は、総合職(今のグローバルコース)の場合、配属部署は指定できなかった。

しかし、近年はSpecエントリーというのが出来て、職種を特定した就活ができるようになった。

これは、ハイスペックの学生にとっては有難い制度である。

転勤の多い、リテール部門の部署に配属されるリスクを回避できるからである。

もっとも、Specエントリーの資産運用コースに配属されたからと言って、中途で外銀に転職できるとは考えない方がいいだろう。

ただでさえ、外銀に中途で国内系金融機関から転職するのは難しい中、業界違いの保険会社からでは書面さえも通過できない可能性が高い。

また、ユニークなのが「イノベーション」と言われるベンチャー起業系に詳しい学生向けのコースがあることだ。

もっとも、ガチガチの年功序列・規制業種の東京海上日動火災において起業カルチャーがマッチするとは思えず、ここを起点に将来独立・起業を目指すというのは難しい気がする。

しかし、このようなコース別採用をやってくれるのは、ハイスペックの学生にとっては有難い話である。

優秀な学生でも外資系金融はあまり好きでないという学生は少なからずいるはずだ。

そのような学生は、野村證券のIBDコース等とこちらを併願すればいいのではないだろうか。

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