関西学院大学経済学部の就職と課題について。神戸大学経済学部との比較はどうか?

1. 関西学院大学経済学部の基本情報

関西学院大学は、関関同立という、関西では人気の私立大学群の一角を占める大学である。

東京でいうところの、MARCHのような存在かも知れないが、関西には早慶に該当する私立大学群は存在しないため、相対的には関西ではトップグループの私立大学の1つということになる。

とりわけ、関西学院大学の経済学部は看板学部であり、関関同立の中でもトップクラスの人気・難易度を誇る。

学風としては、西宮の一等地に美しいキャンパスを構え、ミッション系ということもあり、MARCHでいうと立教や青学のようなイメージで、泥臭いイメージはない。

一学年は680人であり、男女比率は2:1で男性が多い。

2. 関西学院大学経済学部の就職状況

関西学院大学の就職先に関する開示はまずまずであるが、学部別に上位20社を開示しているのみである。従って、経済学部の場合には4名までの企業名しか開示されていないため、3名以下の就職先の状況については不明である。

なお、卒業生の人数は648名で、13名が進学する。就職者数は、公務員になる者も含めて約600名である。

神戸大学経済学部の就職者数は公務員を含めると約240名なので、規模的には、関西学院大学経済学部は神戸大学経済学部の2.5倍程である。

以下は大学が公開しているランキングに、ご参考までに神戸大学経済学部からの就職者数を付記してみた。但し、神戸大学経済学部のデータは平成28年度のものである。

就職者数合計 約600名 約240名
関西学院大学経済学部 神戸大学経済学部
三井住友銀行 10 13
第一生命 8 3
みなと銀行 7 0
スズキ 6 0
京都銀行 6 0
住友生命 6 0
日本生命 6 0
富士通 5 2
三菱電機 5 4
東京海上日動火災 5 4
三井住友信託銀行 5 0
三菱UFJ銀行 5 6
あいおいニッセイ同和損保 4 1
尼崎信用金庫 4 0
阿波銀行 4 0
池田泉州銀行 4 2
近畿大阪銀行 4 1
商工組合中央金庫 4 1
損保ジャパン日本興亜 4 1
野村證券 4 2
みずほ証券 4 1
みずほFG 4 10
三菱UFJ信託銀行 4 2
三菱UFJMS証券 4 0
りそなグループ 4 3
神戸市 4 3

※関西学院大学経済学部のデータは平成29年度のもので、大学HPより引用

※神戸大学経済学部のデータは平成28年度のもので、大学HPを基に作成

3. 関西学院大学経済学部の就職先の傾向・特徴

ここのランキングに載っている企業への就職者数合計は138名であり、関西学院大学経済学部からの就職者のうち四分の一弱しかカバーできていない。

従って、正確な評価は難しいところであるが、このランキングからは、とにかく金融機関が多いということである。

神戸市役所を除くと、民間企業25社であるが、そのうち何と22社が金融機関である。非金融機関はスズキ、富士通、三菱電機のメーカー3社のみである。金融以外のサービス業も一社もランクインしていないのは驚きである。

有力大学の経済系学部では、金融機関が最大のシェアとなっているが、コンサル、情報通信、マスコミあたりもランクインしたりするので、関西学院大学経済学部との金融への集中は驚きである。

また、地銀・信金といった地方金融機関の割合が多いのも特色である。民間企業上位25社中、6社が地方金融機関である。

この点、神戸大学経済学部の場合は、金融機関の比率が高い点では共通しているが、地方金融機関の比率はこれほど高くない点が相違点である。

4. 神戸大学経済学部との比較

関西学院大学の就職先の情報開示は限定的であり、上位20数社のみでは全体の四分の一弱しかカバーされない。残りの四分の三についてわからないので、神戸大学経済学部とは正確な比較をすることができない。

他方、神戸大学経済学部の就職については全て大学が開示してくれているので、参考までに、上位の就職先等について紹介すると以下のようになる。

13人 三井住友銀行
10人 みずほFG
6人 三菱UFJ銀行
4人 三菱電機、信用農業協同組合連合会、東京海上日動火災
3人 クボタ、あおぞら銀行、ゆうちょ銀行、りそな銀行、伊予銀行、紀陽銀行、第一生命
2人. サントリー、村田製作所、日立、富士通、アドヴィックス、トヨタ、住友倉庫、丸紅、住友商事、三菱UFJ信託銀行、三井住友信託銀行、

大和証券、野村證券、池田泉州銀行、中国銀行、明治安田生命

.1人(抜粋) 味の素、キリン、P&G、日本ロレアル、新日鉄住金、神戸製鋼、住友電工、ソニー、デンソー、パナソニック、三菱重工、関西電力、NTTデータ、サイバーエージェント、セプティーニ、ユナイテッド、ワークスアプリケーションズ、楽天、電通、野村総合研究所、JAL、JR西日本、ニトリ、ファーストリテーリング、伊藤忠、三井物産、双日、みずほ証券、三井住友海上火災、商工組合中央金庫、損保ジャパン、農林中央金庫、三菱地所、PwCアドバイザリー、デロイトトーマツコンサルティング、三菱UFJリサーチ、博報堂DYメディアパートナーズ、あずさ監査法人、監査法人トーマツ

(平成28年度卒業生。神戸大学HPの資料を基に作成)

関西学院大学経済学部の隠れた3/4の中に、コンサル、総合商社、マスコミ等への就職者がいるかも知れないので、断言はできないものの、上位就職先企業のランキングを見比べてみると、神戸大学経済学部の方が、いわゆる高就職偏差値・就職人気ランキングの観点で上位の企業に入社している率が高いと思料される。

なお、神戸大学経済学部の場合には、こちらのリストで民間企業への就職者の約7割をカバーできている。

5. 関西学院大学経済学部の就職における課題について

関西学院大学経済学部の場合、就職者の四分の三の就職先がわからないし、また、単に人気度や難易度の高い企業にみんながみんな就職したいと思うわけでは無いので、この情報からは課題というのは考察しにくい。

しかし、神戸大学経済学部のデータとの比較感などから、あえて推察すれば、以下のような点が指摘できるかも知れない。

(1)大手金融機関の比率を高める
これは、個々の学生の努力というよりも、大学とOB/OG会が頑張るべき問題であろう。大手の方がいいとは限らないが、少子化の環境下、就職力が学校の魅力に大きな影響を与えるので、ある程度数値目標をもって取り組むべき課題であろう。

学生サイドからすると、大手にどんどん挑戦する姿勢が大事だ。関西学院大学経済学部であれば学歴フィルターで引っかかることはない。従って、あとは英語力とか、証券アナリスト試験とか、起業経験とかそういったスキルを磨いていけば、可能性は出てくるはずだ。

(2)就職先の幅・多様性を拡げる
これも価値観の問題で、多様性があった方がいいというわけではないが、金融だけでなく、インフラ、マスコミ、IT、メーカー、商社、ベンチャーと幅広く優良企業に人材輩出できれば、選択肢の広さを学外・学内に誇示することができる。

実は、上位25社だけが過度に金融に偏っているのかも知れないが、神戸大学経済学部のように多様な優良企業に人材を輩出できれば就職力の高さをうかがわせることができると思われる。

(3)ベンチャー起業への挑戦環境
ベンチャー起業家によるニュービジネスの創造は、日本産業界全体にとっての課題となっている。
他方、学生で起業を真剣に考えて実行できるのは、ごくごくわずかしかいない。
そこで、ベンチャー起業に挑戦するということは、大変高いヴァリューを産む。

そのまま起業家への途を歩まないにしても、就活においても大いに差別化できるはずだ。従って、学校やOB/OG会は、学生の起業活動をサポートしてあげるべきだと思われる。

感想

関西学院大学経済学部は、関関同立の中でも最上位の学部の1つであり、ライバルは神戸大学経済学部になるのではないか。

とはいえ、神戸大学経済学部並みの就職力を達成するのは容易ではないかもしれないが、慶応大学はOB会のサポートや学生の貪欲な情報収集力や行動力によって、東大や一橋に負けない位の就職力を有していると言える。

従って、関西学院大学経済学部も、慶応大学に倣って、努力をすれば、まだまだ就職力を向上させることは可能では無いだろうか?

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