金融プロフェッショナル狙いの就活生が、外銀と国内系金融の専門職コースを全落ちした場合の、善後策について考える。

1. 優秀層ほど金融プロフェッショナル志望のようだが…

東大、一橋、早稲田、慶応の文系の学生の場合、プロフェッショナル志向が全体的に強く、外銀や国内系金融機関の専門職コースに人気が集中するようである。

他方、同じ国内系金融機関でも、リテール部門が中心のメガバンクや保険会社の総合職はあまり人気がないという。

2. しかし、外銀や国内系金融機関の専門職コースの難易度は極めて高い

しかし、外銀の新卒採用数は全部合わせても数百人程度である。

また、国内系金融機関は総合職は大量採用するものの、専門職コースの枠大変狭く、1社あたり数十人程度だという。

そうすると、外銀と国内系金融機関の専門職コースの採用者数を全部合わせてもせいぜい500人といったレベルである。

これに対して、応募者数はかなりのものであろう。

東大、早慶、それから京大とか一橋あたりの就職者数(文系)は1万人を超え、そのうち2割程度が外銀や国内系金融の専門職コースに挑戦するとすれば、8割位がどちらからも内定を得られない結果となってしまう。

これはイメージに合っているだろうか?

いずれにせよ、文系トップ校の学生の大半が、外銀と国内系金融の専門職コースには入社できないということは言えるだろう。

3. それでは、内定を得られなかった学生はどこを目指せばよいのか?

内定を得られなかっと判明してからでは、他に切り替えることもできない。

したがって、外銀や国内系金融機関の専門職を志望する学生は、予め全落ちする場合も想定して、善後策を練っておく必要がある。

とはいえ、金融プロフェッショナルになれないのであれば、業界を切り替えるということで、広告代理店、メーカー・マーケティング職といった人気度の高い業種を併願するのはあまり賢明ではないだろう。

そういったところは、相応の準備が要求されるため、下手をすると共倒れになる可能性が高いからである。

4. 金融業界の専門職にこだわる場合

外銀や国内系金融機関の専門職がダメだったとしても、金融業界のプロフェッショナルを目指したいという場合には、以下の業界を目指すのが良いのではないだろうか?

①国内系運用会社の総合職

一番のおすすめはこちらである。要するに、国内系のバイサイドである。

コース別採用ではない単なる総合職については、抵抗がある学生も多いかも知れない。

しかし、運用会社の場合は、銀行や証券会社のようなリテール部門というのが無いので、リテール営業に回されるリスクが無い。

また、基本的にファンドマネージャーを目指すキャリアパスが伝統的に用意されているので、希望すればファンドマネージャー育成コースに乗っかれる可能性はあるし、セールスやプロダクトに配属された場合でも将来いくらでも外資系運用会社に転身できる可能性はある。
blacksonia.hatenablog.com

②VC(ベンチャー・キャピタル)

もう一つのおすすめがVCである。

ジャフコ、大和企業投資、三菱UFJキャピタル、ニッセイ・キャピタル等である。

大手金融機関のグループ会社に加え、ベンチャー企業系、事業会社系など30社以上存在する。

VCの場合、金融と言っても投資先のベンチャー企業に経営的な視点でアドバイスをする立場なので、ファイナンス以外の企業経営に対するスキルが要求される。

このため、専門性の強いプロフェッショナル職であるが、ベンチャーに興味がない人には合わないことになる。

また、全ての企業が新卒採用しているわけではないので、募集枠は多くなく、外銀や国内系専門職の滑り止めにはなりにくいという懸念がある。

また、国内系大手(ジャフコ、大和企業投資等)の場合、必ずしも給与水準が高い訳では無いことに留意しなければならない。

将来、ストック・オプションをもらってベンチャーに転身をしたいという学生は検討の余地はあるだろう。

5. 総合商社

将来の転職を想定した金融プロフェッショナルと、終身雇用を前提とした総合商社とは、キャリアに対する考え方が全く異なるとも言える。

他方、外銀・国内系専門職を志望する学生は、プライドが高い、周りの評価を気にするという側面がある場合もあるだろう。

そういった場合、総合商社も併願したいという学生もいるだろう。

しかし、難易度が高い総合商社に有力な内定先を持たずに挑戦するのはメンタル的にあまり宜しくはない。

ただ、外銀等を志望するということは、英語とか基本的なファイナンス知識といった素養を持っているわけだから、スペック的に商社から内定をもらえる可能性はある。

もっとも、商社の中でも三菱商事は別格ということであり難易度は特に高く、次に財閥系が続くということであるので、非財閥系と双日、豊田通商にフォーカスするというのが堅いやり方である。

商社と一口に言っても、会社毎に事業内容やカルチャーが大きく異なるので全部受けるのではなく、絞り込んでフォーカスをした方が良いだろう。

6. リクルート

金融プロフェッショナル狙いの、東大、早慶のハイスペックな学生からすると、リクルートというのは若干プレミアム感に欠けるのかも知れない。

また、金融とは全く異なる業界である。

しかし、金融という業界ではなく、「プロフェッショナル」「専門職」という面について考えると、リクルートは「人」や「ニュービジネス」に関するプロフェッショナルであり、転職力も高い。

また、リクルート本体にM&Aを行う部門でハイスペックな人材を求めていたりもする。

ここは好き嫌い別れるかも知れないが、十分検討に値する代替案ではないだろうか?

7. ベンチャー

こちらも金融プロフェッショナル狙いの学生からすると、全く異なる業界ということになる。

しかし、年収等のアップサイドが欲しいという場合、既上場の大手ベンチャーからストック・オプション狙いの未上場ベンチャー企業というキャリアパスは有り得るだろう。

大手ベンチャーと言ってもいろいろあるが、ヤフー、楽天、メルカリあたりがおススメである。

ネットベンチャーの間では、ネームバリューがある会社であるし、教育システムも整っている。

また、副業もOKで、ワークライフバランスも優れているので、ここでじっくりと勝機をうかがうという戦略は悪くないと思う。

8. あまりおすすめしない選択肢:弁護士になってリベンジ

「外銀がダメなら、渉外弁護士のパートナーになって年収で逆転してやる!!」という心情はわからないでもない。

しかし、金融プロフェッショナルを狙っていて、大学4年の段階で法科大学院に切り替えるのは少々厳しい気がする。

中途半端な法科大学院に進学してしまうと、司法試験の合格すらあやしい。

行き当たりばったりで法科大学院狙いというのはリスクが高いだろう。

最後に

外銀、国内系金融の専門職コースというのはトップ校の中でも内定をもらえる方が少数であり、多くの者は全落ちしてしまう。

そういった場合、メガバンクに行く者が多いようだが、金融の中にもバイサイドやVCがあるし、金融という枠を外すと、可能性は拡がる。

外銀に内定したと浮かれていても、3年後位までには、約半数のものが外銀を去るのである。

大学4年生の時点ではまだまだ勝負は始まったばかりなので、長期的な視点でキャリアを考えるべきだろう。

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