みずほFGが2019年3月6日に、2019/3期の業績予想を大幅に下方修正する旨の会見を行った。(プレスリリースはこちら)
https://www.mizuho-fg.co.jp/release/pdf/20190306release_jp.pdf
ちょうど、3/1から、いわゆるOB/OG訪問が始まったところであるが、みずほFGへの就職者数が1位の慶応と2位の早稲田の学生は、この業績下方修正のプレスリリースを見て、みずほFGやメガバンクへの就職について改めて考えてみるべきだろう。
1. みずほFGの3/6付の業績予想修正の概要
詳細は上記リンクの通りであるが、約6800億円にも及ぶ損失を2019/3期決算で計上することを発表し、税引後の当期純利益の予想額を5700億円から800億円と、大幅な引き下げを行った。
約6800億円の内訳は、2本立てであり、
1つは、固定資産の減損損失で、国内リテール事業部門に帰属するソフトウェアや閉鎖予定店舗等の固定資産の減損損失であり、これが約5000億円である。
2つめは、市場部門の有価証券ポートフォリオ再構築等に伴う損失であり、要するに、保有有価証券ポートフォリオの評価損を計上するということだ。こちらの金額は約1,800億円である。
2. みずほFGの業績下方修正の評価
巨額の損失をこのタイミングで公表するのはけしからんとか、今までの見通しが甘かったのではといったネガティブな意見がある反面、損失を計上できる余裕がある、膿を前倒しにすることによって、来期以降の収益力が改善するのではといったポジティブな意見もある。
とはいえ、メガバンクの中でもみずほだけというのが気になるところである。
3. そもそもメガバンクで良いのか?
①早稲田、慶應だとメガバンクは「勝ち組」ではない?
これはみずほの話であるが、早稲田や慶応の学生は他のメガバンクにも大量に内定者を出しており、メガバンク全般について考えるいい機会であろう。
そもそも、早稲田や慶応の学生にとっては、メガバンク内定は勝ち組とは見られないらしい。
外銀・外コン・総合商社を落ちたからとか、国内系金融機関の専門職コースに落ちたからとか、体育会で忙しすぎて他をあたれなかったからといった、見方をされるらしい。
②メガバンクの総合職コースでは金融プロフェッショナルにはなれない?
就活の目的が金融プロフェッショナルになってスキルを付けることであれば、メガバンクの総合職コースだと目的を達成できないのではないだろうか?
大半の者が配属されるリテール部門、本社部門であっても、そこから外銀や外資系運用会社に転職することは相当厳しい。
かといって、コンサルとか総合商社に転職をすることも難しい。
同じ金融と言う理由だけで、外銀、国内系金融専門職⇒メガバンク総合職、という発想でいいのだろうか?
金融と言う発想を切り替えて、アクセンチュアやデロイトトーマツなどの総合系ファームは狙えないだろうか?
③給与水準は現行の水準が将来も続くと考えてないだろうか?
最難関の外銀・外コン・総合商社或いは国内系金融機関の専門職コースに落ちた場合、メガバンクを選ぶ理由として給与水準の高さが大きな理由となっているのだろう。
確かに、国内系企業の中では給与水準は明らかに高い方であろう。
しかし、10年後、20年後も今と同じ給与水準が続くという保証はどこにもない。
少子高齢化に伴う国内市場縮小、IT・AIの進展に伴う店舗・人員等の非効率化、海外市場での競争力の無さ等を勘案すると、20年後には、給与水準が20%位下がっている可能性は十分にある。
現に、特に部店長とかの上級管理職については20~30年前と比べて、20~30%は下がっている。バブル期や金融危機前までは、メガバンク(旧都銀)の部店長だと年収2400~2500万円位はあったのだが、今だと1800万円位ではないだろうか。
仮に、給与水準が今より1割或いは2割下がるとしたら、メガバンクを選択するかどうかについても考えた方が良い。
④他に代替案は無いか?
早稲田や慶応のような上位校の学生は、年収面において、
メガバンク>他のメーカー、サービス業と考えているフシがある。
確かに、年収水準が上位のメーカーやサービス業でも、メガバンクには届かないのが現状だ。
しかし、将来1割程度メガバンクの年収水準が下がり得ると想定すると、ワークライフバランス等を加味すれば、選択肢は拡がらないだろうか?
例えば、KDDI、JR東日本といったインフラ系や、味の素、旭硝子、キリンといった給与水準の高いメーカーなどと比較して見るといいだろう。
4. メガバンクの中で何故みずほか?
もともとメガバンクの中でも、みずほだけが銀行システムの統合で失敗したり、今回のような特損計上をしたりと、他の2行より遅れを取っている。
とはいえ、三菱UFJ・三井住友と比較して、それほど難易度が異なることはないだろう。
それは、他のメガと比べて安いという話もあるが、給与水準が大きく違わないからではないだろうか?
みずほ銀行の場合、
初年度は400万円程度で、4年目で600万円、6年目で700万円、
そして8年目にストレートで課長代理に昇格できれば850~1000万円位に上昇する。
そして、10年目に課長職に該当する調査役に昇格できると、年収は1100~1300万円位となる。
さらに、14年目位に副支店長に昇格できると1300~1400万円となる。
部店長クラスにはなかなかなれないが、昇格できると、1800万円位にはなるだろう。昔はもっと高かったのであるが。
総合商社とか、国内系専門職には及ばないが、他のメガバンクと比較して得に劣っているレベルではないだろう。
しかし、今回のような巨額の損失を、みずほだけが今後もちょくちょく計上することになると、年収水準は他の2メガバンクとじわじわ差がついていくことはあり得る話だ。
そうであるならば、メガバンクを志望する場合でも、難易度に大きな差があるわけでは無いので、他の2メガバンクにフォーカスした方がいいのではないだろうか?
最後に
3/1からのOB/OG訪問は、実質的な採用選考なので、下手な質問はできないが、今回のプレスリリースの最後の頁(5P)に載っている、将来の重点領域について質問してみてはどうだろうか?
「更に、ライフスタイルの多様化やシェアリングエコノミーの拡大等の構造変化に対応するために、異業種等とのオープンな協業や戦略投資を通じた事業ポートフォリオの組み換えを積極的に実施し、「金融・非金融が融合する分野」においても、顧客基盤やソリューション領域を拡大していきます。」
「金融・非金融が融合する分野」とは具体的に何のことを言っているのか質問してみたらよい。
おそらく、若手の行員は答えられないのではないだろうか?
場合によっては、このプレスリリースさえ読んでいないかもしれない。
そうだとすると、そういう会社に就職していいかどうか等、いろいろ考えることが出てくるはずだ。