東京大学法学部の就職と課題について。京都大学法学部と比較するとどうか?

1. 東京大学法学部の就職事情は他の大学の法学部とは大きく異なる

一般的に、就職というと民間企業への就職を想像し、どこそこの企業に何人くらい就職したかというのが関心事項となる。

ところが、東大法学部の場合は、こちらの大学公式HPの通り、その他の大学とは、以下の点で全く異なっているのだ。

http://www.j.u-tokyo.ac.jp/admission/wp-content/uploads/sites/4/2017/11/H2903shinro.pdf

(1)公務員(特に中央官庁)への就職者が非常に多い

(2)法科大学院等、大学院への進学者が非常に多い。

(3)「その他」留年する人数が非常に多い。

官僚、弁護士(法曹関係)志望者が多いというのはイメージ通りであるのだろうが、民間企業への就職者数・割合が思っていた以上に少ない(低い)気がした。

せめて半分位は民間企業に就職すると思っていたが、実際は1/3位であった。

東大法学部生の進路(平成29.3卒業生)
法科大学院進学者 78 20%
公務員 91 24%
民間企業就職 129 33%
それ以外 88 23%
合計 386
※大学HPの数値を基に作成

京都大学法学部の場合は、法科大学院進学者の割合が高い(約四分の一)点は類似しているが、公務員への就職者の割合がこれほど高くなく、また、「それ以外」というカテゴリーもこれほど多くはない。

(なお、京都大学法学部の就職状況はこちら。)
blacksonia.hatenablog.com

また、慶応大学、早稲田大学、一橋大学の各法学部についても、民間企業への就職者の割合は7割位はあるので、東大法学部のように1/3というのは驚きの数字では無いだろうか?

2. 東京大学法学部から公務員(特に中央官庁)になる者は今でも多い

東大法学部というと、財務省、経済産業省、外務省といった中央官庁を想像する人は多いであろうが、以前ほどは官僚の人気も低下したと聞く。

給与水準が低い、世間からの評価が低下してきた、年功序列といった要因から、官僚の人気が低下し、若くから活躍出来て高給がもらえる外銀・外コンのようなところを目指す学生が増えたからだという話もある。

しかし、それでも公務員(中央官庁81人、地方公務員10人)になる者の比率が24%もあるので、まだまだ官僚志向は弱くは無いのではないだろうか。

3. 東京大学法学部から法科大学院に進学するパターン

①思ったよりも弁護士志望者は多くない?

昔は「上位1/3が法曹を目指す」というように言われたこともあったが、法科大学院に進学する者の比率は約20%であり、思ったよりも多くは無かった。

もっとも、近年では、法科大学院に通うよりも、予備試験経由で弁護士を目指す学生も増えてきたという。従って、法科大学院に進学する者以外に弁護士を目指す学生もいるだろう。

むしろ、最優秀層は面倒で回りくどい法科大学院経由よりも、在学中から受験ができる予備試験ルートを好むという話も聞く。

そういった学生も「その他」のカテゴリーに一定数はいるのだろう。

②今から弁護士を目指すのは勝ち組か?

文系トップの東大法学部から、今更、弁護士を目指すのは果たして勝ち組と言えるだろうかというのが気になるところである。

弁護士の総数は減るどころか、今後も増え続ける。

他方、需要が拡大するという見込みはあまりない。

そうであると、弁護士の年収は、今でも厳しいと言われているのに、20年後、30年後は更に厳しくなるのではないかという見方もある。

しかし、東大法学部の場合は事情が異なる。

何故なら、大手渉外法律事務所のパートナーというプラチナ・キャリアが残されているからである。

各大手渉外法律事務所のHPで開示されているが、パートナーの過半数は東大法学部出身である。

今でも、大手渉外法律事務所のパートナーに就任すると、年収4000~5000万円スタートで、エクイティ・パートナーともなると、1億円を余裕で超える。

しかも、外銀のように45歳実質定年とか、突然リストラをされるリスクというのは低い。

もちろん、パートナーになれるのは同期入所の5人に1人と予想されたり、就任年齢が40歳以降になったりと、昔よりは厳しくなったが、まだまだ美味しいポジションであることは間違いない。

従って、東大法学部⇒法科大学院(或いは予備試験)⇒新司法試験合格⇒司法研修所⇒大手渉外法律事務所⇒パートナー、という長い長い道のりではあるが、東大法学部生に限ると、弁護士での勝ちパターンはまだ残っているのだ。

他方、東大法学部出身でも、大手渉外法律事務所ではなく、いわゆる街弁になるのであれば、学歴は関係ないのでかなり厳しいキャリアになるのではないだろうか?

4. 東京大学法学部から民間企業へ就職するケース

ようやく、民間企業である。

大学の公式HPの、民間企業への就職状況についての開示状況は極めて悪い。ある意味、京都大学法学部とは対照的である。

具体的な企業名の開示は無く、セクター別の就職人数を開示しているのみである。

このため、推察という要素が多くなってしまうが、東大法学部からの民間企業への就職については、以下のような特徴があると思料される。

①企業側の立場からすると、東大法学部生を採用するのは極めて困難である

そもそも、東大法学部から民間企業に就職してくれる学生数はわずが129人しかいない。

従って、採用側である企業の立場からすると、東大法学部生を採用するのは極めて困難である。

「うちは学歴には興味が無いから、無理して東大法学部生を採る気はないよ。」と言えればいいが、そうは言えない業種・企業が沢山あるのだ。

例えば、以下のような業種については、役員に占める東大比率が高く東大法学部生を採れないとなると、人事部長は厳しい立場に置かれてしまうことは想像に難くない。

(もちろん、こういった企業もタテマエとしては「うちは学歴だけを見るわけでは無いので気にしません。」というのだろうが、大企業で採用関係の仕事に就いたことがある人なら、それはウソであることがわかるだろう。)

〇銀行(政府系金融機関含む)

〇大手生損保、大手証券、

〇重厚長大系、素材系メーカー(重工業、鉄鋼、化学など)

〇インフラ系(NTT系、JR系、電力・ガス)

時々メディア等で、「東大(法学部とは限らないが)でも内定が全然取れない」的な話を過度に協調して取り上げたりするので、東大でも就活は楽勝とは言えないというイメージを持つ人がいるかも知れないが、少なくとも東大法学部に限ると、通常そういうことはあり得ない。

多くの需要に対して、供給が全然足りないのは明らかである。

外銀・外コン・総合商社クラスになると、東大法学部でも全落ちするケースもあるかも知れないが、それ以外の大手だとフリーパス状態のはずだ。

②トップ層の一部は外銀・外コンに?

従来だと、東大法学部のトップ層は司法試験を目指していたのだろうが、最近では、法曹には興味が無く、最初から外銀・外コンを志望するトップ層が出てきているようだ。

確かに、外銀・外コンの新卒採用においては、大抵東大法学部がいるので、そういった傾向は出てきたのであろう。

もっとも、リーマンショック以降、外銀のパイ自体が今後拡大するとはあまり期待できない。

また、外コンについても、マッキンゼーやBCGは最近では1学年40-50人もの大量採用をしているようだ。従来は、MBBは1学年4~5人位しか採らなかった時代が長かったので、ここ最近の業界全体の採用急拡大は将来のコンサルの価値下落を招きかねないところが気になるところである。

少なくとも、あと4~5年位は東大法学部生の外銀・外コン人気も続きそうであるが、中長期的にはどうなるかはわからない。

5. 東京大学法学部の就職における課題

東大法学部生は結構フレキシビリティも高いようで、弁護士や官僚がイマイチかも知れないとみると、素早く外銀・外コン・総合商社という流行りに切り替えることが出来ている。

また、起業という点においても、マネックス証券の松本大氏、

村上ファンドの村上世彰氏、ライフネット生命の岩瀬大輔氏、

と有名起業家を輩出している。

それに、弁護士や官僚が将来的に人気や年収が低減していくとしても、トップ層はそれなりなはずなので、ここのトップ層を押さえている東大法学部は強いだろう。

従って、特に課題というのは見当たらないのだろうが、強いて言えば、以下の点があげられるだろうか。

①内需型非グローバル企業に就職し、転職力を欠く場合

少子高齢化に伴い、国内市場はほぼ確実に縮小が見込まれる。

そこで、海外で稼いだり、新規事業を創造しないと長期的には生き残れない、或いは、今の収益性を維持できない。

グローバル対応やIT周りに弱そうな、内需型企業に就職し、語学や専門性において競争力を欠くまま、40代に突入してしまうといくら東大法学部出身とは言え、それだと転職するところがない。

例えば、銀行(特に地銀)、生損保、地方のインフラ企業、などは要注意である。

②稼げる個人事業者の輩出

東大法学部生の優れたところは、フレキシブルに稼げそうな業種・職種に素早く目を向けることが出来る点である。

このため、ベンチャー起業に着眼している学生もいる。

とはいえ、東大法学部卒の(稼げる)ユーチューバーやブロガーはまだいないはずだ。

トップクラスのユーチューバーの年収は5億円以上で、ブロガーでもトップクラスは1億円以上を稼いでいる。

2020年から予定されている5G時代の到来に伴い、動画化の流れが来ると、個人メディアの影響力は今以上に高まって来ることが予想される。

個人で面白いコンテンツを作成し、動画、SNSを絡めて発信すると、一気に億単位の収入を得ることが可能になるのだ。

東大法学部生に唯一弱みがあるとすれば、エンターテイメント性が弱いかも知れないということかも知れない。

要するに、一般大衆の笑いや娯楽を理解できるかという点だ。

これは、学力とは全く別物だからだ。

しかし、東大法学部生からも、笑いや娯楽のセンスを持つものがいると、優秀なので桁違いの成功を収めることが可能だ。

起業を飛び越えて、成功するユーチューバーやブロガーを東大法学部から輩出するとなると、ますます無敵になるだろう。

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