政治経済?国際教養?早稲田大学の学部別就職力を総合商社への就職者数と率とで分析してみた。

1. 学部別の就職力の比較が難しい理由

①そもそも学部別のデータが不十分

早稲田大学にせよ慶應大学にせよ、大きな大学で、学部数が多く存在し、学部毎の難易度、伝統、学習領域がそれぞれ異なるため、就職力がどのように違うのか気になるところだ。

学部別の就職力を調べるには、大学がHPで開示してくれている学部別の就職状況を参考にすればいいのだが、各学部上位20社という場合、各学部から5名未満の就職状況が把握できないので不便である。

というのは、本当にトップの企業の採用数は相対的に少数であることが多く、例えば、外銀・外コン(MBB)、電通・博報堂、キー局、三井不動産・三菱地所、P&Gあたりへの学部毎の就職状況が把握できないことが多い。

早稲田とか慶応クラスになると、ある程度の人気企業には就職できるので、このあたりの超難関企業への採用状況が、学部毎の就職力を知る上で気になるところなのだ。

②業界が異なる企業同士を比較するのは難しい

一般的に、メガバンク、大手信託銀行、大手損保、大手生保、大手証券といった大手金融機関や、アクセンチュア等のコンサル、総合商社、マスコミ等の就職者数が多いと、就職力は良いと世間一般的に判断しやすい。

しかし、学部間の微妙な比較になると、このあたりの大手への就職割合はあまり変わらない場合もあるし、業界が異なる企業同士を比較することが難しい。

例えば、日本航空や全日空と、損保ジャパンや明治安田生命とどちらが上とか、サントリー、キリン、味の素等のトップ食品メーカーとメガバンクのどちらが上かとか、なかなか判断できないので、学部同士の就職力を厳密比較するのは難しい。

2. 総合商社への就職者数と就職率は就職力のバロメーターか?

上記のような就職力の比較を厳密に行うのは難しいのだが、一つ参考になると思われる方法が、総合商社への就職者数と就職率に着眼する方法である。

例えば、早稲田大学の場合には、早稲田大学全体で5名以上就職者がいる企業について、学部別に詳細な情報を開示してくれている。

また、総合商社は超トップ企業の中でも100人以上採用しているので、早稲田の学部別の詳細な数字を把握することができる。

もちろん、「学生がみんな総合商社に行きたいわけではないよ。」という批判は承知の上だが、総合商社の場合は広範な商品/サービスを扱い、世界中に拠点がある業態なので、金融、コンサル、メーカーよりも普遍性はあるのではないかと考えられる。

3. 早稲田大学の学部別の総合商社(五大商社)への就職状況

結果はこの通りである。

なお、理系の場合は商社志向が文系よりも弱いと考えられるため、対象外とした。

また、総合商社の定義は、五大商社及び双日と豊田通商の7社であるが、今回は五大商社を対象とした。

三菱商事 三井物産 住友商事 伊藤忠 丸紅 五大商社合計 就職者数 五大商社比率(%)
早稲田トータル 17 30 31 20 18 116
政経 6 10 10 7 3 36 801 4.5
3 2 3 2 5 15 615 2.4
教育 0 0 2 1 2 5 745 0.7
0 4 3 2 0 9 893 1.0
社学 0 1 2 1 2 6 579 1.0
人科 1 0 0 0 0 0 499 0.2
スポ科 1 0 1 1 1 4 328 1.2
国教 1 5 2 4 3 15 442 3.4
文構 1 0 3 1 1 6 772 0.8
文学 0 2 0 0 0 0 531 0.4

(出所:早稲田大学HP 「2018年度 早稲田大学進路状況」を基に外資系金融キャリア研究所作成)

①結果は、入試における偏差値を反映したものとなっている?

総合商社以外の優良企業、例えば、東京海上火災、日本生命、NHK、アクセンチュア、日本航空といった企業では、いわゆる上位学部以外の学部も検討していたりするのだが、総合商社について比較すると、見事なまでに大学入試における偏差値・難易度・伝統を反映した結果となってしまった。

政経がダントツの36人、法学部が15人、商学部が9人と、いわゆる上位学部が商社の就職においては強い。もっとも、2018年度は商学部は不調だったようで、前年の2017年度は五大商社への就職者数合計が18人だったので半減してしまった。

また、偏差値が極めて高い流行りの国際教養学部は検討し、合計15人を総合商社に送り込んでいる。

他方、伝統のある学部でも、文学部からは2人、教育学部からは5人という結果である。

なお、社会学部は6名、人間科学部は1名、スポーツ科学部は4名という結果であった。

②「率」で見ると更に違いが浮き彫りに?

単純な五大商社への就職者数だけで比べると、定員が少ない、要するに就職者数が少ない学部は不利になるため、五大商社への就職者数を各学部の就職者数全体で割った「率」を上記の表の一番右側に加えてみた。

その結果、

政経(4.5)>国教(3.4)>法(2.4)>スポ科(1.2)>商(1.0)>社学(1.0)

~1%の壁~

文構(0.8)>教育(0.7)>文学(0.4)>人科(0.2)

と、受験におけるヒエラルキーが反映されている。もっとも、2018年度においては、社会科学部が前年度合計3人から倍増した6名となり、スポーツ科学部の4名(前年度は3名)の奮闘が目立つ。もちろん、学部単位で見ると分子が小さくなるため変動は大きい指標かも知れないが、入試の難化に伴って、それなりの就職力を付けている可能性もある。

③注目される国際教養学部

注目されるのは、新興の人気の国際系学部、国際教養学部である。

率で見ると、政治経済学部に次ぐナンバー2である。

しかも、国際教養学部は総合商社のみならず、ゴールドマン・サックス証券、Google、プロクター&ギャンブルといった難関外資系企業でも実績を有しており、年々存在感を強みているように思われる。

受験の難易度が就職にもきっちりと反映されており、今後も注目される学部である。

感想

やはり総合商社の採用責任者である40代、50代の人達はコンサバなのか、同じ早稲田と言っても政経、法、商に拘るようである。

また、注目されるのが国際教養学部の躍進である。

いかに、企業がグローバル人材を求めているのかということがうかがえる。

ということは、上位学部でなくとも、留学経験があったり英語が非常に得意な学生はチャンスがあるということなので、英語磨きをすれば就職の可能性は広まると言えるのではないだろうか?

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