1. 慶應SFC(総合政策学部&環境情報学部)の就職状況
①慶應SFCの就職情報について
慶應SFCは主として、総合政策学部と環境情報学部の2学部から構成されている。慶應義塾大学の場合、全学部について上位就職先企業(3名以上上位20社)について、Web上で開示している。
このため、総合政策学部と環境情報学部の就職状況はここのソースから取ることができる。
https://www.students.keio.ac.jp/com/career/service/date.html
②慶應SFC(総合政策学部&環境情報学部)の就職先について
総合政策学部からの就職者数は367人、環境情報学部部からの就職者数は332人である。
両学部を合計しても約700人であり、経済学部(1,032人)や商学部(838人)と比較すると、存在感の割に小規模な学部であることがうかがえる。
まず、総合政策学部からの主な就職先は以下の通りである。
総合政策学部(就職者数367人) | ||
会社名 | 人数 | |
1 | 全日空 | 9 |
2 | アクセンチュア | 8 |
2 | リクルート | 8 |
4 | みずほ銀行 | 7 |
4 | 三井住友銀行 | 7 |
4 | 東京海上日動火災 | 7 |
7 | 日本IBM | 6 |
8 | 博報堂 | 5 |
9 | 三菱UFJ銀行 | 4 |
9 | 大和証券 | 4 |
9 | 電通 | 4 |
9 | 日本放送協会 | 4 |
13 | EYアドヴァイザリー&コンサルティング | 3 |
13 | NTTデータ | 3 |
13 | 第一生命 | 3 |
13 | 味の素 | 3 |
13 | 野村證券 | 3 |
また、環境情報学部からの主な就職先は以下の通りである。
環境情報学部(就職者数332人) | ||
会社名 | 人数 | |
1 | アクセンチュア | 10 |
2 | 楽天 | 8 |
2 | 東京海上日動火災 | 8 |
4 | サイバーエージェント | 5 |
4 | 日本放送協会 | 5 |
6 | リクルート | 4 |
6 | 三井住友銀行 | 4 |
6 | 電通 | 4 |
6 | 日本IBM | 4 |
6 | 博報堂 | 4 |
6 | 野村證券 | 4 |
12 | キーエンス | 3 |
12 | グリー | 3 |
12 | トヨタ自動車 | 3 |
12 | メルカリ | 3 |
12 | リクルートキャリア | 3 |
12 | 三井住友海上火災 | 3 |
12 | 資生堂 | 3 |
12 | 味の素 | 3 |
(出所:慶応義塾大学HP 「慶應義塾大学 2018年度 上位就職先企業(3名以上上位20社)」より)
2. 慶應SFCの就職の特徴
三田・日吉と異なり、藤沢市(といっても海が見えない、湘南台駅からバス便の不便な場所にある)にキャンパスがあり、場所的に離れていること。
また、コンサバで大企業志向の強い経済学部、法学部、商学部の学生と比べて、自由闊達、ネット等新しいもの好きで自由なカルチャーのSFC。
同じ慶應義塾大学とは言え、ある意味正反対の面もあることから、三田キャンパスの学生からは、好かれていないという説もある(本当かどうかは定かでない)。
とにかく、慶應義塾大学の伝統的なイメージとは異なるカルチャーを持っていそうなSFCであるが、就職においても、違いがあるようである。
以下、その特徴をMECEではなくて申し訳ないが、気づいた点についてまとめてみた。
①金融機関の比率が少ない
まあ、大手金融機関に行くぐらいであれば、わざわざSFCを選択しないのかも知れないが、金融機関の比率は他学部と比べて相対的に低い。
例えば、経済学部や商学部の場合、上位20社のうち、6割位は金融機関が占める。これに対してSFCの場合は、総合政策学部の場合は上位20社のうち金融機関は約1/3、環境情報学部の場合は2割程度と、金融機関の比率は相対的に低くなっている。
また、金融機関のサブセクター毎に見ても、経済学部や商学部においては上位20社に入っている信託銀行、政府系金融機関が、SFCの場合には見られないという特徴もある。
もっとも、総合政策学部、環境情報学部共に、慶應が強い東京海上日動火災、野村證券は上位20社に入っており、SFCの生徒は金融を目指さないという訳でも無い。
<慶應義塾大学商学部の就職と課題>
https://career21.jp/2019-02-14-064610
②総合商社について
総合商社については、大手金融機関以上に、SFCからの就職者の比率は明らかに低い。
例えば、大手5社について見ると、経済学部からは42名であるのに対し、SFCからは11名である。内訳を見ると、以下の様になっている。学部の就職者数を加味しても、明らかに経済学部の方が多くなっている。特に、五大商社の中でも最上位ブランドとされる三菱商事については、経済学部の圧勝となっている。
もっとも、コンサバな三菱商事の社風からすると、自由闊達さを売りにしているSFCとは相性が良くないように思われるが。
SFC2学部合計 | 経済学部 | |
三菱商事 | 0 | 9 |
三井物産 | 4 | 8 |
住友商事 | 3 | 14 |
伊藤忠 | 2 | 5 |
丸紅 | 2 | 6 |
合計 | 11 | 42 |
総合商社は就職偏差値最上位企業であるため、この点は特に、三田キャンパスの学生からすると、「自分たちの方がSFCよりも勝っている」と考える要因になっているのかも知れない。
③マスコミへの就職に強いSFC
総合商社においては、経済学部と比べて劣勢かも知れないが、マスコミについてはSFCは負けてはいない。
例えば、SFCから電通に8人就職しているが、これは経済学部からの5人を上回る数字である。
また、SFCからNHKに9人、博報堂に9人と、ここでもSFCが強みを発揮している。
④ネットベンチャー企業を好むSFC?
これは好き嫌い別れるところであるが、SFCからの就職先上位企業にネット系ベンチャー企業が多くランクインしている。
これは、経済学部というか、三田の学部には見られない特徴である。
例えば、楽天に10人、サイバーエージェントに6人、DeNAに4人、ヤフーに4人、メルカリ3人といったところだ。
もともと自由闊達で新しいテクノロジーを採用するのを歓迎するといったカルチャーなのだから、これはSFCらしさを期待通りに発揮できていると言えるのではないだろうか?
⑤コンサルティング・ファームについては意外と多くない?
環境情報学部の2018年度の卒業生の就職先企業のトップはアクセンチュア(10人)である。コンサルティング・ファームについてはSFCは強そうなイメージもあるが、思った程は多くはないようだ。
EYアドバイザリー&コンサルティングには4人、アビームコンサルティングには2人、デロイトトーマツコンサルティングには0人、シグマクシスにも0人といった感じだ。また、マッキンゼーについても0人である。
もちろん、年度によるバラツキはあるが、経済学部や商学部と比べて、SFCが特にコンサルティング・ファームに強いということは無さそうだ。
3. SFCの就職における課題
慶應義塾大学の中で、とかく「異端」扱いされがちなSFCではあるが、大手金融、マスコミ、商社、ネットベンチャー、メーカーと幅広い業界に卒業生を送り込んでおり、就職における学部としての課題は特に無いようにも見える。
しかし、課題があるとすれば、むしろ、ネット系、起業、マスコミ等にフォーカスしきれていない点では無いだろうか?
他学部と比べると、大手金融や総合商社の比率が低いように見えるが、結構多くの学生が、こういったコンサバな大手企業に就職している。
しかし、銀行や商社に行くのであれば、わざわざSFCに来る意味は無いのではなかろうか?
大学の視点からすると、SFCはもっとエッジを効かせて、英語で行う授業を増やしたり、プログラミングの授業を強化する等、ITや起業にフォーカスさせた方が面白いのではないだろうか?
ICUの場合だと、少なくともICUの卒業生は英語はOKということになっているが、SFCの場合は一歩進めて、SFCの卒業生は英語とプログラミングはOKというようになると、慶應ブランドと相俟って更に面白いと思われる。
また、クックパッドの佐野さんとか、クラシルの堀江さんとか、若くして成功したベンチャー起業家を輩出し始めているので、ここを更に強化すれば存在価値は高まるであろう。
ベンチャー起業というのは、三田キャンパスとは合わない雰囲気もあるので、ここはSFCに頑張ってもらうところではないだろうか。
最後に
三田の他学部と比べると、大手金融機関や総合商社への就職者比率が低いのは当然想定していたが、それでも思っていた以上に大手企業への就職者はいたように思う。
マスコミやコンサルに強く、行こうと思えば大手金融機関からも採用される。
これは、学生からすると選択の幅が大変広く、魅力的なのでは無いだろうか?
ベンチャー起業を目指していて、うまく行きそうであればそのまま突っ走ればいいし、「やっぱり大手で安泰がいいや」と思えば、金融、商社、コンサル、通信等に鞍替えもできるのである。
慶應ブランドももらえるし、大変魅力のある学部だと思う。
もっとも弱みがあるとすれば立地かも知れない。湘南と言っても、かなり都心から距離があり、また最寄駅からバス便になっている。ネット関係の企業ビジネスにおいては、有力なベンチャー企業やVCは東京都心部にあるので、アクセスが悪いと不便だからだ。
とは言え、起業やネット系ベンチャー企業への就職に強く、マスコミや他の大手企業への就職も満遍なく強い慶應SFCは十分に魅力的な学部と言えるだろう。