慶應大学文学部の就職と課題について。文学部は本当に就職は良くないのか?慶應大学法学部との比較はどうか?

1. 慶應大学文学部の就職状況

①慶應大学文学部の就職状況の開示

慶應大学の場合、全学部について上位就職先企業(3名以上上位20社)についてHP上で開示がされている。但し、経済学部のように、これ以上の詳細な開示については、文学部の場合、見当たらなかった。

http://www.gakuji.keio.ac.jp/life/shinro/3946mc0000003d8t-att/a1530669479061.pdf

②慶應大学文学部の具体的な就職先企業

上記の大学が開示している上位20社ランキングは以下の通りである。なお、後程行っている慶應大学法学部との比較のために、表の右側に法学部(政治学科+法律学科)の数字を付け加えている。

また、慶応大学文学部の就職者数が672人であるのに対して、法学部(政治学科+法律学科)の就職者数の合計が982人であることから、参考までに、文学部の就職者数を1.46倍(法学部/文学部)して調整したものを文学部の右側に付け加えた。

比較対象学部を法学部としたのは、どちらも数学を使わない非経済系の学部であり、女性比率が文学部は約65%、法学部は約40%、経済学部と商学部は20%台となっていることから、相対的に女性比率が高い法学部を比較対象の学部とすることとした。

なお、法学部の場合は政治学科と法律学科の人数を単純に足し合わせているが、それぞれ上位20社ランキングに掲載されていない企業についてはゼロとみなすしか無いので、実際はこれより多くの人数が就職している可能性がある。

文学部 (文学部×1.46) 法学部(政治+法律)
みずほ銀行 11 16.1 24
三菱東京UFJ銀行 9 13.1 21
全日本空輸 9 13.1 NA
三井住友海上火災 8 11.7 5
損害保険ジャパン日本興亜 8 11.7 NA
日本放送協会(NHK) 8 11.7 8
楽天 7 10.2 NA
慶應義塾 7 10.2 NA
東京都 7 10.2 7
明治安田生命保険 7 10.2 5
キーエンス 6 8.8 5
伊藤忠 6 8.8 10
三井住友信託銀行 6 8.8 12
大和証券 6 8.8 NA
アクセンチュア 5 7.3 6
三菱電機 5 7.3 6
日本生命保険 5 7.3 NA
コーセー 4 5.8 NA
りそなホールディングス 4 5.8 NA
三井住友銀行 4 5.8 18
三井物産 4 5.8 20
三菱商事 4 5.8 12
第一生命保険 4 5.8 NA
東京海上日動火災保険 4 5.8 26
NTT東日本 4 5.8 NA
日本郵便 4 5.8 NA
日立製作所 4 5.8 NA
博報堂 4 5.8 7

こちらの表を見ると、上位はメガバンク、大手損保、全日空、NHK、楽天と人気の大手企業ばかりが並んでいる。

また、伊藤忠、三菱商事、三井物産という総合商社もランクインしているし、アクセンチュアという人気のコンサルティング企業も見受けられる。

さらに、博報堂、日立、NTT東日本、キーエンス、東京都と、様々な業種を包含していてバラエティにも富んでいる。

ヤフーの知恵袋とか他のメディアでも、慶応の文学部は就職が良くないとネガティブなコメントがされている場合をよく見かけるが、このデータを見ると、とても就職が悪いとは思えない。

むしろ、文学部なのに、大手金融機関が多いし、人気のコンサルや総合商社、マスコミまで上位にランクインしており、トップクラスの就職力なのではないかとすら思えてくる。

2. 慶應大学法学部(政治学科+法律学科)との比較

上記の通り、慶応大学文学部の就職は悪いとは言えないはずだが、それは定説のようになっているので、それは慶応の他学部との比較においてであると思料される。

法学部の比較の上で、文学部の就職が相対的に弱いと思われてしまう原因について、以下考えてみた。

①就職先企業の分散化(ロングテール化)の特徴

まず、全般的な特徴として、文学部の場合は上位就職先20社への集中度が他学部と比べて、相対的に低いようである。

文学部の上位就職先20社(大学が開示している上記リストの企業)への就職者数の合計は164人であり、就職者数は672人であるので、その比率は、164/672=24.1%である。

これに対し、法学部、経済学部、商学部の比率は30%台前半であるので、ある程度文学部の上位就職先企業への集中度が低いのである。言い換えれば、文学部の就職先企業はロングテール化しているということなのだろうか。

これ自体は、多様性の観点から必ずしもネガティブとは限らないのだが、ロングテール化すると、中には就職人気ランキングには入らないような中小/ベンチャー企業が当然含まれてくる。

慶應の経済、商、法学部の生徒はコンサバで大企業志向が強いと思われるので、文学部から中小/ベンチャーへの就職者を見て、大手に入れなかったからそういうところに行ったと考えるのかも知れない。

②金融機関の比率の相対的な低さ

文学部の大手金融機関編の就職者数は決して少なくなく、損保や生保やメガバンク、信託銀行に多く就職しているのだが、3メガバンクの合計で見ると、文学部が24人であるのに対し、法学部は63名である。人数調整をしたところで、圧倒的に法学部が多い。

別にメガバンク自体はそこまで良い就職先・高就職偏差値企業とまでは言えないのだろうが、今までエリートとされてきた経緯もあるので、メガバンク比率の差が悪く見えるのかも知れない。

また、損保の中でも別格のエリート企業である東京海上が、法学部は26人であるのに対して、文学部は4人というところも悪く見えるのかも知れない。

しかし、文学部からは三井住友海上火災や損保ジャパンには数多く就職しているし、生保のトップである日本生命については法学部に負けていないので保険会社への就職は決して弱くは無い。

総合的には、メガバンクの比率と東京海上で大きく法学部より人数が少ないことから、金融は相対的に弱く見えるのかも知れない。

③総合商社

むしろ、法学部というか、他学部と比べて、圧倒的に不利なのが総合商社であろう。大手五社について比べて見ると、法学部からは67人に対し、文学部からは14人と圧倒的に少ない。また、住友商事と丸紅についてはランク外である(3人以下)。この点は、相対的に文学部の就職が弱いと思われる原因であろう。

もっとも、これは総合商社にめっぽう強い慶應大学内の比較であって、他大と比べると悪くは無いはずだ。

④その他マスコミ等

文学部からはNHKに8人、博報堂に4人であるのに対して、法学部からは、電通5人、博報堂7人、日テレ5人、NHK8人と、若干押されているようには見える。この点も、他学部に比べて相対的に就職が弱く見える原因かも知れない。

まとめ

慶應大学文学部の就職は決して悪くは無い。というか、トップクラスである。しかし、他学部がそれ以上に就職が良好であるため、一部の金融機関やマスコミ、総合商社における相対的な弱さがイメージを作っているのかも知れない。

もっとも、就職を気にする人が文学部を目指すとは思えないので、本来は気にする必要は無いのだろうが、就職を重視するのであれば、偏差値はそれほど変わらないのだろうから、少し頑張って、法学部や商学部を目指すのが良いのかも知れない。

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