慶應義塾大学法学部(政治&法律)【22卒向け】の就職と進路

1. 慶應義塾大学法学部(政治&法律)の就職状況

①就職状況の開示について

慶應義塾大学の場合、全学部について、上位就職企業(3名以上上位20社)についてHPで開示してくれている。

これによって、学部別の就職状況について、かなり詳細に把握することができる。現在開示されているデータは、2018年度(2019/3卒)に関するものである(2020年4月3日現在)。

https://www.students.keio.ac.jp/com/career/service/files/3_3ijo_2018.pdf

②慶応義塾大学法学部(政治&法律)の具体的な就職先について

慶應義塾大学の場合、法学部は法律学科と政治学科について別々に開示してくれている。

そこで、まず、法律学科の上位就職先企業は以下のようになっている。

法学部法律学科(就職者数482人)
会社名 人数
1 三菱UFJ銀行 13
2 東京都 11
3 三井物産 10
4 三井住友信託銀行 8
4 日本放送協会 8
6 みずほ銀行 7
6 三菱商事 7
8 キーエンス 6
8 三菱UFJ信託銀行 6
8 大和証券 6
8 東京海上日動火災 6
12 NTTデータ 5
12 りそなホールディングス 5
12 三井住友海上火災 5
12 日本航空 5
12 博報堂 5
12 野村総合研究所 5
18 アクセンチュア 4
18 デロイトトーマツコンサルティング 4
18 外務省 4
18 楽天 4
18 三井住友銀行 4
18 住友生命 4
18 商工組合中央金庫 4
18 日本銀行 4
18 有限責任あずさ監査法人 4

 

また、法学部政治学科の上位就職先企業は、以下の通りである。

法学部政治学科(就職者数567人)
会社名 人数
1 東京海上日動火災 17
2 三井住友銀行 12
3 三菱UFJ銀行 11
3 東京都 11
5 みずほ銀行 10
5 伊藤忠商事 10
5 三菱UFJ信託銀行 10
8 電通 9
9 丸紅 8
9 三井物産 8
9 日本航空 8
9 博報堂 8
13 三井住友信託銀行 7
13 住友商事 7
13 全日空 7
13 日立製作所 7
17 アビームコンサルティング 6
17 住友生命 6
19 アクセンチュア 5
19 リクルートキャリア 5
19 楽天 5
19 三菱商事 5
19 三菱電機 5
19 日本放送協会 5

(出所:慶応義塾大学HP 「慶應義塾大学 2018年度 3名以上就職先」)

以上のように、法律学科、政治学科共に、慶應義塾大学法学部全体の就職状況は極めて良好である。

東京海上、メガバンク、総合商社、マスコミ、大手広告代理店と超人気&高就職偏差値企業がズラリと並んでいる。

また、三菱電機、日立、キーエンスというメーカーや、アクセンチュアやアビームコンサルティングといった総合系コンサルに加え、全日空や日本航空、楽天など、多様性も確保されている。

そして、法学部という性質上、東京都、外務省といった公務員となる者も一定数見られるのが特徴である。

2. 慶應義塾大学経済学部との比較

慶應義塾大学法学部(政治&法律)の就職状況が極めて良好であることはわかった。そうすると、気になるのが、経済学部との比較だ。

歴史的には経済学部が慶応の看板学部であり、入試難易度も長らく経済学部>法学部>商学部、であったため、特に今40代、50代以上のビジネスマンにとっては、経済学部の方が良好なのではないかという認識があるだろう。

他方、今の若者や現役学生の間では、法学部>経済学部という認識があるらしい。このため、就職については、その差がどのように反映されているのか気になるところである。

なお、経済学部の就職状況についてはこちらの記事をご参照下さい。

<慶應義塾大学経済学部の就職と課題について>

https://career21.jp/2019-02-08-145539

①大手金融機関(メガバンク、生損保等)

まず、分母となる法学部と経済学部の就職者数であるが、政治学科と法律学科を合計した法学部の就職者数は1049人、他方、経済学部の就職者数は1032人である。

従って、差は2%と誤差の範囲内であり、上の表について、実数比較すればいいだけなので便利である。

まず、3メガバンクについては、経済学部が44人に対して、法学部が57人である。前年度は経済学部から3メガバンクの合計が74人とかなり多かったが、2018年度についてはかなり減少した。このため、経済学部と言うと伝統的に銀行は多いので意外感はあるかも知れないが、メガバンクについては法学部の方が多くなっている。

また、慶應が強い、東京海上については、法学部が23人に対して、経済学部が19人とこちらはほぼ互角である。

証券会社や信託銀行についても両学部とも多く就職している点は同じである。

さらに、法学部から日銀に6名、政策投資銀行に3名就職している点である。なお、経済学部からは日銀に5名、政策投資銀行に5名就職している。

以上のように、大手金融機関については両社ほぼ互角であろうか。

②総合商社(5大商社)について

さて、気になるのは上記①の金融機関よりも、こちらの総合商社、特に5大商社である。

何故なら、就職偏差値・難易度が最上位であり、大手金融機関よりも就活生的には上位にランクされるからである。

5大商社の就職者数の合計で見ると、法学部からは57人、経済学部からは44人である。

その内訳は以下の通りである。

法学部(法+政) 経済学部
三菱商事 12 9
三井物産 18 8
住友商事 8 14
伊藤忠 10 5
丸紅 9 6
合計 57 42

(出所:慶應義塾大学HP 「慶應義塾大学 2018年度 3名以上就職先」より外資系金融キャリア研究所が集計)

何と、法学部の圧勝である。特に三菱商事についても、法学部から12人、経済学部から9人であり、ここでも法学部の勝利である。

これはかなり意外感のある結果(特に年配のビジネスマン)だろうが、総合商社については、法学部>経済学部、というのが現実である。

もっとも、上記の就職者数は一般職をも含んだものである。法学部の女子学生比率は4割と、経済学部の2割に対して比率が高い。このため、一般職が多いのではという意見もあるが、銀行とは異なり、商社の新卒採用者数に占める一般職の比率は高くない。このため、総合商社において、法学部の就職力は経済学部に劣らないと言えるのではないだろうか。

③マスコミその他について

法学部の特色は、入社難易度が極めて高い大手マスコミへの就職が目立つ点である。

例えば、NHKに13名、日テレに4名、TBSに4名、テレビ朝日に2名入社している。

また、電通については、法学部から12名、経済学部からは5名、博報堂については、法学部から13名、経済学部からは5名入社しているが、就職難易度が最難関の電通・博報堂においても極めて良好な実績を残している。

なお、外銀については、ゴールドマン・サックスの場合、経済学部から5名、法学部から3名入社している。JPモルガン証券については、経済学部から3名、法学部から1名となっている。

以上のように、経済学部と比較しても法学部の就職状況は劣っておらず、総合商社やマスコミについては、法学部が優位とさえ言えるのではないだろうか?

3. 慶應大学法学部の就職に関する課題について

①民間企業への就職について

慶應大学法学部の就職状況は極めてよく、私立大学ナンバー1というか、日本の中でも、ここに勝てるとすれば、東大(文系学部)か一橋くらいしか見当たらないだろう。

この点については、後日、比較してみたい。

いずれにせよ、民間企業への就職については特に課題は無いのではないだろうか?

強いて言えば、多様性ということで、ネットベンチャー系に行く者がもう少し増えても悪くないのかも知れない。

②弁護士(法科大学院進学者)をどう考えるか?

法学部での最高の勝ち組は、大学名を問わず、弁護士であった。旧司法試験の何度は極めて高く、司法試験の合格者数が大学の法学部の格を示していた。

しかし、司法制度改革における弁護士数の急増によって、弁護士の人気は急低下してしまった。

今では、弁護士がうらやましいと思う学生は多くないのではないだろうか?

旧司法試験時代は、司法試験合格者数において、早稲田>慶応であったが、新司法試験制度になって、合格「率」が判断基準となり、今では、慶応法科大学院>早稲田法科大学院、であろう。

ただ、残念なのは弁護士人気が低下してしまったことで、大学として法科大学院や弁護士というのをあまりアピールできない点である。

とはいえ、弁護士というのは法学部(他学部からでもなれるが)の象徴的な職業であるので、ここをうまくPRしていきたいところである。

まとめ

慶應大学法学部の民間企業就職状況は極めて良好というより、日本ナンバー1といえるレベルではないだろうか?

長年の評価であった、経済学部>法学部、というのも時間が経つにしたがい、解消されていくのかも知れない。

これには、入試の方法も影響しているのかも知れない。入試科目に数学が無いと、馬鹿にされがちな傾向にあるので、いっそ法学部の入試科目にも選択でいいので数学をいれてみてはどうだろうか?

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