慶應義塾大学商学部の進路と就職

1.  慶應義塾大学商学部の進路の概要

慶應の場合、進路や就職に関する情報開示が非常に良い。
大学全体、学部別の上位就職先に加え、詳細な3名以上の就職先のリストも作成・開示してくれている。

<慶應大学の進路、就職:公式サイト>
https://keio.app.box.com/v/keiogijukushinrodata-ay2021-02

上記サイトによると、慶應義塾大学商学部の場合、22年3月卒の生徒数は989名である。そのうち、大学院等への進学者は24名である。また、資格試験(公認会計士等)の受験者は32名である。

進学者、その他、未報告者を除いた、857名が就職した。
そのうち公務員となる者は、国家公務員と地方公務員を合わせて24名なので、割合としては非常に少ない点も特徴である。

慶應の経済学部生と同様、慶應の商学部生の大半は民間企業に就職する。

2. 慶應義塾大学商学部生(2022/3卒)の主な就職先

<慶應義塾大学、上位就職先企業:公式サイト>
https://keio.app.box.com/v/keiogijukushinrodata-ay2021-01

商学部の就職先、上位20社のランキングは上記リンクから抜粋すると、この通り。

順位 企業名 人数
1 ベイカレント・コンサルティング

有限責任監査法人トーマツ

15
3 大和証券

有限責任あずさ監査法人

13
5 PwCコンサルティング 12
6 野村総合研究所 11
7 三井住友銀行

三井住友信託銀行

三菱UFJ銀行

10
10 EY新日本有限責任監査法人 9
11 アビームコンサルティング

NTTデータ

みずほ銀行

楽天グループ

8
15 アクセンチュア

キーエンス

損保ジャパン

日本IBM

日本生命

NEC

博報堂

みずほ証券

7

(出所:慶應義塾大学公式サイト 「就職・進路」より外資系金融キャリア研究所編集)

3. 慶應義塾大学商学部生(2022/3卒)の主な就職先の特徴

①総合コンサル、監査法人が多い

経済学部同様、商学部の就職先としては、総合コンサルと監査法人が非常に多い。
ベイカレント、PwC、アビーム、アクセンチュアの4社だけで42人となり、商学部の就職者シェアの約5%を占める。

監査法人については、トーマツ、あずさ、新日本37名である。
これは慶應自体が公認会計士試験の合格者数でトップなので理解できる。

上位20社の総合コンサルと監査法人を合わせると79名で、これだけで商学部の就職者シェアの9%超なので、かなりの集中度である。

②大手金融機関が多い

慶應商学部の場合、伝統的に大手金融機関への就職者数は多い。
大和証券、3メガバンク、三井住友信託、損保ジャパン、日本生命、みずほ証券が上位にランクされており、これだけで65人となり、商学部の就職者シェアの7.6%を占める。

ただ、5年以上前の、メガバンクが大量採用をしている頃と比べると、大手金融機関への就職者数は大いに減った。その減少分が、総合コンサルに流れたというイメージであろうか。今後の大手金融機関の戦略を考えると、大手金融機関への就職者が以前の様に増えるとは考えにくい。そうなると、何時まで総合コンサルが大量採用を続けるのか、続けなくなったとしたら、どこの業界に流れるのか?このあたりは気になるところである。

③IT、メーカーにも分散

商学部の場合、経済学部と比べて、広義のIT系やメーカーにも分散しているのが特徴である。経済学部は、上位20社のうち、IT系は楽天とNTTデータの2社のみで、メーカーはゼロだ。他方、商学部は、野村総合研究所、NTTデータ、楽天、キーエンス、日本IBM、NECと、ITとメーカーが6社も上位20社にランクされている。

大手金融機関の総合職(オープン)よりも、給与水準は落ちたとしても、将来性や職種を考慮してIT系という選択肢には十分理由があると思われるので、今後どうなるか興味深い。

④経済学部と比べて、商社が少ないのが気になるが…

国内系企業で最難関の5大商社への就職状況が気になるところであるが、商学部からの就職者数は、三菱商事5名、住友商事2名、丸紅3名の合計10人である。経済学部の5大商社への就職者数は35名であるので、若干寂しい気もする。ちなみに、前年度(21/3卒)の商学部から5大商社への就職者数合計は14名(三菱商事3名、三井物産1名、住友商事5名、伊藤忠2名、丸紅3名)であった。

その理由としては、経済学部のPEARLのような推薦/AO組がいないとか、附属の上澄みが少ないからとも言われているが、データがあるわけでもないので、その点はよくわからない。

ただ、1つの学部だけで5大商社10名というのは、他の有力校と比べて悪くは無いので、商学部から5大商社に就職したいのであれば、留学等、早い段階からスペック上げをする等の対策が必要だろう。

⑤外銀、MBB、電博等、その他業種への就職状況

商学部の特徴として、電博は強く、電通に5人、博報堂に7人が就職している。この点は経済学部(電博合計15人)と比べても遜色はない。

MBBについては、そもそも文系から内定を取るのは非常に大変なのであるが、商学部からもBCG1名、マッキンゼー1名という実績である。

外銀については、UBS証券1名、BofA証券1名という実績である。

4. 慶應義塾大学商学部生の就職における課題

①学部内格差の問題~超難関企業に行くには附属か推薦・AO組が有利?~

「商学部からでも、5大商社/外銀/MBB行けますか?」的な質問をされることが時々ある。確かに、上述の通り、比較すると経済学部の方がこのあたりの内定者数は多い。

しかし、それは学部の問題ではなくて、各個人の問題である。
就活は団体戦ではなくて個人戦なので、学部とかゼミ全体での就職状況で勝った負けたと言っても意味がない。

それは、附属/推薦・AO⇔一般入試組の問題も同様であって、内部や推薦組からも難関企業の内定を取れるのは一部に過ぎない。

商学部の場合も、5大商社、外銀、MBBの実績はあるので、そこへの就職を本気で希望するのであれば、留学、就活塾他、相応の対策を取るしかないだろう。

②自分自身のキャリアプランを持っているか?

商学部から非常に多くの学生が総合コンサルに就職するが、この業界は終身雇用ではないので、セカンドキャリアもいろいろと予め考えておく必要がある。

また、大手金融機関のリテール部門は長期的に好待遇を維持できるかどうかはわからない。そうなると、20年後に好条件で転職ができるように市場価値を高めておく必要がある。

なかなか崩れそうで崩れない終身雇用・年功序列であるが、自分自身のキャリアプランにおいて終身雇用の単一シナリオしか持たないのはさすがにリスクが高いだろう。

これは、慶應商学部の学生だけの問題ではないが、転職を通じたキャリアプランも考えておくのが好ましい。

③テクノロジー、起業・副業の視点はあるか?

テクノロジーの進化によって、産業界は大きな影響を受ける。
世界の時価総額ランキングを見ると明らかで、20年前にはGAFAの存在感はこれほど高くなるとは想像もつかなかっただろう。

今の大学生は、20年後には働き盛りであろうが、テクノロジーの更なる進化によって、日本の産業界は大きく変容している可能性がある。

また、終身雇用は今まで何とか持ちこたえてきたが、将来はどうなるかはわからない。
そうなると、従来の様に1つの会社にのみ依存する生き方はリスクが高く、外部環境の変化に対応して生き残れるようなスキルを磨きたい。

その点、副業が緩和傾向にあるのはチャンスであり、情報発信を始めとした多様な稼ぎ方も意識すべきだろう。

例えば、ドコモとかKDDIといった通信キャリアの給与水準は大手金融に劣るが、WLBは良好で副業を行いやすい環境にある。そこで、副業を磨けば、スキルの習得に加えて、大手金融並の年収を実現できる可能性はある。また、リクルート、サイバーエージェントで将来独立・起業を目指すという選択肢もある。

もちろん、大手金融や総合コンサルに行っても、副業や将来の独立を意識したキャリアプランを構築することも可能なので、70歳まで働く時代といわれる中、多様なスキルや稼ぎ方も視野に入れるといいだろう。

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