ヘッジファンドに就職するための転職エージェントの探し方。通常のバイサイド(運用会社)との違いは?

1. 情報が少なく、ミステリアスなヘッジファンド

外銀(外資系証券会社)と比べて、地味目で情報が少ない存在であるバイサイド(運用会社)であるが、その中でも、輪をかけてヘッジファンドの情報は少ない。

実は、現役のバイサイド(運用会社)の社員でさえ、ヘッジファンドの情報はあまり持ち合わせていない。

もし、フィデリティ、ブラックロック、或いは、野村アセットマネジメントや大和投資信託委託の知人がいると、以下の質問をしてみたらいい。

「転職したいと思う、ヘッジファンドにはどういうところがあるか?」

「日本で成功しているヘッジファンドにはどういうところがあるか?」

おそらく、「よくわからない」という回答が返ってくるのではないだろうか?

それほど、ヘッジファンドは知られにくい存在であるのだ。

2. 日本に拠点のあるヘッジファンドの分類

ヘッジファンドは、その投資戦略や投資対象によって分類されることが多いが、ここでは、テーマが「就職・転職」であるので、「免許」「業態」を基準に分類したい。

結構マニアックな情報で、同じ金融業界でも、証券会社とか銀行の人はピンと来ないかも知れないが、イメージをつかんでいただければOKである。

(1)駐在員事務所(REP:Representative Office)

通常、REP(レップ)という呼び方をされる日本への出店形態の1つである。

REPはヘッジファンドに限らず、海外の親会社の業態が、証券、銀行、バイサイドを問わず、採り得る形態である。

REPというのは単なる駐在員事務所で、日本の金融免許を何一つ持っていない。

したがって、営業活動をすることは認めらず、調査活動が認められる程度である。

したがって、スタッフの数も1人とか2人と少人数で、オフィスも小さいローコストで運営されるケースが大半である。

このため、日本のビジネスを本気で展開しようと海外の本社が決断したわけではないので、簡単に撤退してしまうリスクがあることに留意すべきだ。

(2)投資助言業

投資助言業というのは金融庁への登録が必要とされる業態である。

国内、外資系を問わず、小規模な業者が採用する形態であり、通常5人か、せいぜい10人以下の陣容である場合が多い。

海外のヘッジファンドが日本への進出にあたって、この投資助言業の形態を採っている場合は、そこそこ見られると思う。

(3)投資一任業務(+投資助言務)

これは上記(2)のワンランク上の、バイサイド(運用会社)におけるライセンスであり、これ以上のものは無い。

フィデリティとか野村アセットマネジメントが保有している金融免許もこの投資一任業務であり、この投資一任業務をもっているヘッジファンドは日本で本格的にビジネスをしようという意図であると推察される。

とはいえ、証券会社と比べると、従業員数は少なく、国内・外資系を問わず、10人~30人位のレンジであることが多い。

(4)第二種金融商品取引業

これは、バイサイド(運用会社)の社員でもよく知らないであろう、マイナーなライセンスであるが、海外のPEファンド、不動産ファンド、VC(ベンチャーキャピタル)等が保有する場合が多い。

上記(3)の投資運用業のライセンス保有会社が、併有することもある。

(5)適格機関投資家等特例業者

国内・国外を問わずヘッジファンドがこの免許で営業をするケースは多い。

VCなどが好む事業形態である。

ここでは、比較的小規模(従業員数10人以下)のヘッジファンドが選好する形態と覚えておけばいいのではないだろうか。

3. ヘッジファンドに就職するための転職エージェントについて

ヘッジファンドは大手の場合であっても、日本における拠点の従業員数は少なく、求人の募集を掛ける場合も、一斉に多くの大手転職エージェントに声掛けすることは通常見られず、付き合いの深い転職エージェント、或いは、個人経営のヘッドハンターに依頼することが多い。

このため、バイサイド(運用会社)の社員も、普段付き合いがある転職エージェントからは、ヘッジファンドの求人情報をつかめない場合がある。

結局、以下のような方法で、広めに網を張る他ないだろう。

①エグゼクティブ・サーチ・ファームを使う

ヘッジファンドへの就職を真剣に考えるのであれば、これが王道と言える。

エグゼクティブ・サーチ・ファームというのは、求人企業から、特定の人材の一本釣りを依頼されるステイタスの高い転職エージェントである。

ここから話が来ると、独占的な案件である場合が多いため、採用されるかどうかはわからないにせよ、最終的な面接プロセスまで進む場合が多い。

要するに、お声がかかれば、オファーをもらえる確率が高いということだ。

但し、一般の転職エージェントと違って、常時求人情報を多数持っているわけではない。このため、自分が転職をしたいタイミングで案件を紹介されるわけでは無いのが難点である。

また、対象者が少なくとも部長(CXO)以上であるので、若手社員は対象外になってしまう。

エグゼクティブ・サーチ・ファームのうち、ヘッジファンドに強いと思われる以下の2社には登録することをお勧めである。

ラッセル・レイノルズ

Leadership Advisory | Executive Search | Russell Reynolds Associates

ハイドリック&ストラグルズ

Heidrick and Struggles Asia Pacific

②一般的な金融系に強い転職エージェントのうち、ヘッジファンドにも強いところ

金融機関に強い転職エージェントは沢山あるが、その中でも、ヘッジファンドに強いところと、ほとんど、扱っていないところもある。

転職エージェントは転職をする人が多く、こういった案件は属人的であったりするので、常に以下の転職エージェントがヘッジファンドに強いというわけではないことに留意すべきである。

2019年2月時点で、比較的ヘッジファンドの情報を持っている転職エージェントとしては以下のものがあげられる。

もちろん、これらのエージェントに限られるわけではないので、数多くのエージェントにあたれば、掘り出し物が出てくる可能性が拡がる。

マイケルペイジ

外資系転職のマイケル・ペイジ | 世界大手の転職エージェント | 外資系求人5000件以上

モーガンマッキンリー

Morgan McKinley : 外資系転職・国際的な人材コンサルティング会社

アンテロープ

金融&コンサルティング業界専門の転職エージェント アンテロープキャリアコンサルティング

③個人経営のヘッドハンター

ヘッジファンドは小規模な組織なので、元金融機関の個人経営のヘッドハンターを利用して採用活動を行うケースもある。

ただし、どこの個人経営のヘッドハンターが良いのかを個別に検索することはできない。

従って、個人経営のヘッドハンターの多くが依存している転職プラットフォームのビズリーチに登録する他ない。

ビズリーチに登録しているヘッドハンターからの求人情報はハズレも多く、玉石混交であるが、なかなか効率的に活動するのも難しく、とりあえず登録して気長に待つしかない。

4. 通常のバイサイド(運用会社)を対象とした転職活動との違い

最大の違いは、ヘッジファンドの案件数は少なく、情報を持っている転職エージェントが偏在しているので、普通に活動していたらなかなか案件に出くわさないということだ。

しかし、裏を返せば、幅広く的を得た転職エージェントとの付き合い方をしていると良い案件に出くわす可能性が高まるわけである。

そうなった場合、ライバルが少ない分、オファーをもらえる可能性は高いのだ。

長年外資系金融にいて、何回も転職をしているにも関わらず、ごくごく限られた転職エージェントとしか付き合いがなかったり、エグゼクティブ・サーチ・ファームを知らない人が結構いる。

転職活動は情報戦であるので、この辺は面倒かも知れないが、頑張って広く活動する他ない。

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