慶應義塾大学経済学部の進路と就職

1.  慶應義塾大学経済学部の進路の概要

慶應の場合、進路や就職に関する情報開示が非常に良い。
大学全体、学部別の上位就職先に加え、詳細な3名以上の就職先のリストも作成・開示してくれている。

<慶應大学の進路、就職:公式サイト>
https://keio.app.box.com/v/keiogijukushinrodata-ay2021-02

上記サイトによると、慶應義塾大学経済学部の場合、22年3月卒の生徒数は1227名である。そのうち、大学院等への進学者は52名である。理系と比べると遥かに大学院への進学率は低いが、経済学部としては特に低くは無いだろう。
その他が102名で、この中には資格試験(公認会計士等)の受験者が含まれる模様だ。
未報告者は55名となっている。

進学者、その他、未報告者を除いた、1018名が就職した。
そのうち公務員となる者は、国家公務員と地方公務員を合わせて20名なので、割合としては非常に少ない点も特徴である。

イメージ通り、慶應の経済学部生の大半は民間企業に就職する。

2. 慶應義塾大学経済学部生(2022/3卒)の主な就職先

<慶應義塾大学、上位就職先企業:公式サイト>
https://keio.app.box.com/v/keiogijukushinrodata-ay2021-01

経済学部の就職先、上位20社のランキングは上記リンクから抜粋すると、この通り。

順位 企業名 人数
1 PwCコンサルティング 21
2 アクセンチュア 20
3 三菱UFJ銀行 18
4 ベイカレント・コンサルティング

みずほ銀行

15
6 デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー

野村證券

有限責任あずさ監査法人

14
9 EYストラテジー・アンド・コンサルティング

楽天グループ

13

13

11 大和証券

有限責任監査法人トーマツ

12
13 三井物産 10
14 PwCあらた有限責任監査法人

アビームコンサルティング

NTTデータ

デロイトトーマツコンサルティング

東京海上日動火災

博報堂

三井住友信託銀行

9

(出所:慶應義塾大学公式サイト 「就職・進路」より外資系金融キャリア研究所編集)

3. 慶應義塾大学経済学部生(2022/3卒)の主な就職先の特徴

①総合コンサル、大手金融が多い

上の表を見ると一目瞭然だが、総合コンサルと大手金融が多い。
そのうち、特に総合コンサルの伸びが近年顕著である。上位20社には、トップのPwCコンサルの他、アクセンチュア、ベイカレント、EY、アビーム、デロイトと合計6社が入っている。これだけで87名であり、慶應義塾大学経済学部の就職者のシェアの約9%を占める。

大手金融機関は伝統的に多いが、メガの採用減の傾向もあり、経済学部に占める大手金融機関のシェアは低下気味だ。上位20社のうち大手金融機関は、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、野村證券、大和証券、東京海上日動火災、三井住友信託銀行の6社を占めるが、合計77名である。かつては大手金融機関が長年業界としてトップシェアだったが、最近のIT/DXブームの流れで、逆転されてしまった。

②商社、大手広告代理店でも存在感

上位20社だけみると、商社からは三井物産、広告代理店からは博報堂がランクインしているだけだが、慶應義塾大学経済学部はこれらの業界にも強い。

慶應義塾大学は就職者が3名以上の就職先を学部別に開示してくれているが、これを見ると、商社や電博での就職が非常に強いことがうかがえる。
https://keio.app.box.com/v/keiogijukushinrodata-ay2021-03

5大商社については、三菱商事が8名、三井物産が10名、住友商事が8名、伊藤忠が7名、丸紅が2名で合計35名である。学部単位で見ると、これは全国トップクラスであろう。

また、電通は6名、博報堂が9名と、こちらも安定的に強い。

③外銀と比べ、MBBは意外に少ない?

慶應経済は伝統的に金融に強く、ゴールドマン・サックス等、外銀においてはプレゼンスは非常に強い。

他方、外銀と並んで、就職偏差値的に最難関とされるMBBについては、どうか?22/3卒の場合には、マッキンゼー3名、BCG2名である。これを見ると、総合コンサルへの就職者の多さや、最近のMBBの採用者増を考えると、意外と少ない感じがする。

もっとも、一般的に、文系からMBBは厳しいので、仕方が無いのかも知れない。

<文系の学生がマッキンゼーから内定を取る難易度>
https://career21.jp/2019-08-22-140957/

4. 慶應義塾大学経済学部生の就職における課題

①学部内格差の問題~超難関企業に行くには附属か推薦・AO組が有利?~

慶應経済の場合、金融、商社、電博、総合コンサルの他、MMデべ、政府系金融、外資系メーカー、人気メーカー、業種を問わず非常に就職に強い。

ただ、就職の場合、団体戦ではなく個人戦なので、「自分のゼミからは、三菱商事、ゴールドマン・サックス、三菱地所、電通に就職した」と言ったところで、自分が満足の行くところに就職できないと意味が無い。

この点、気になるのが学部内格差が大きいのではないかということである。
もちろん、1つの学部だけで千人以上の就職者がいるので、学部内格差があっても当然なのだが、超難関企業に行くのは附属か推薦・AO組が圧倒的に強いという噂である。

これについては、データが無いので検証するのは難しいが、経済学部の学生に聞いてみると、確かにこの様な傾向は感じられるということである。

ただ、企業は別に附属や推薦・AO組に無条件に加点する訳ではない。
今の就活ではグローバル経験が重視されるので、帰国子女組とか留学経験者が有利であったり、また、就活は情報戦でもあるので情報力という点において附属組に優位性があるというだけの話しである。

そうであるならば、一般入試組も英語対応や情報収集を強化すればいいのである。
就活は、スペックと情報力がカギであるので、入学後の早い段階から英語対策や会計の勉強等を行い、内部生或いは他校の学生から情報収集を行えば、一般入試組にも十分勝機はあるはずだ。

②自分自身のキャリアプランを持っているか?

上位校の学生ほど、特定の人気業種に行きたがる傾向がある。
慶應経済の場合も、上位20社に254名が就職し、これだけで全就職者の約四分の一を占める。

外部環境によって、人気の業界は変化するもので、5年ほど前は圧倒的に大手金融が多かったが、今では総合コンサルに逆転されている。ただ、総合コンサルの場合は、大手金融や商社とは違って、年功序列でも終身雇用でもない厳しい競争社会である。周りの学生やトレンドに引っ張られて総合コンサルに入社した場合、入社後に自分とは合わないと気づいた場合には大変である。総合コンサルに就職する場合は、その後のキャリアプランも用意しておくべきなのだが、それが出来ていないと、ヤバくなった時に困ってしまう。

また、それは大手金融機関も同様である。
特に、メガバンク、大手証券、大手生損保でリテール部門に入った場合、給与水準、ネームヴァリュー、安定性は文句は無いが、海外で働きたいとか、金融専門職に就きたいと悩む人は一定数いる。

就活生の憧れの総合商社に就職できても、10年間で約三分の一は辞めてしまう。非常に勿体ない話である。

慶應経済の場合、一般的に就職状況は良いので、相応の準備と対策を採れば希望のところに就職できる可能性は十分あるが、就職後のキャリアプランも同時に考えておきたい。
(これは慶應経済の学生に限った話ではないが…)

③テクノロジー、起業・副業の視点はあるか?

テクノロジーの進化によって、産業界は大きな影響を受ける。
世界の時価総額ランキングを見ると明らかで、20年前にはGAFAの存在感はこれほど高くなるとは想像もつかなかっただろう。

今の大学生は、20年後には働き盛りであろうが、テクノロジーの更なる進化によって、日本の産業界は大きく変容している可能性がある。

また、終身雇用は今まで何とか持ちこたえてきたが、将来はどうなるかはわからない。
そうなると、従来の様に1つの会社にのみ依存する生き方はリスクが高く、外部環境の変化に対応して生き残れるようなスキルを磨きたい。

その点、副業が緩和傾向にあるのはチャンスであり、情報発信を始めとした多様な稼ぎ方も意識すべきだろう。

例えば、ドコモとかKDDIといった通信キャリアの給与水準は大手金融に劣るが、WLBは良好で副業を行いやすい環境にある。そこで、副業を磨けば、スキルの習得に加えて、大手金融並の年収を実現できる可能性はある。また、リクルート、サイバーエージェントで将来独立・起業を目指すという選択肢もある。

もちろん、大手金融や総合コンサルに行っても、副業や将来の独立を意識したキャリアプランを構築することも可能なので、70歳まで働く時代といわれる中、多様なスキルや稼ぎ方も視野に入れるといいだろう。

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