PEファンドの年収、転職、キャリア等について。ヘッジファンドとの違いは?

1. PEファンドとは

①PEファンドについて

PEファンドとは、プライベート・エクイティ・ファンド(Private Equity Fund)の略で、未上場会社の株式を取得・売却によって利益をあげることを目的としたファンドである。

未上場株式といっても、ありとあらゆる未上場株が投資対象になるのではなく、ベンチャー企業のようなシード・アーリーステージの企業の株式は投資対象とはしない。それは、VC(ベンチャー・キャピタル)の投資対象である。

また、ハイテクのような売上や設備投資が不安定な業種は基本的に投資対象とはならず、外食とか消費等のキャッシュフローが安定した業種が投資対象として選好される。

具体的には、日本の事例だと、ベインキャピタルによるドミノピザ、大江戸温泉、ユニゾンキャピタルによるあきんどスシロー、アドバンテッジパートナーズによるポッカコーポレーション等の事例が知られている。

なお、近年では、成熟企業の事業再編の際の子会社・事業部門の売却にPEファンドが関与するケースが見られる。例えば、日立グループの事業再編にKKRが買収側として関与したケースや、アサツーディ・ケイの事業構造改革においてベインキャピタルが買収側として参画したケース、東芝メモリーの案件にベインキャピタル等が関与したケース等が有名である。

この点については、こちらの野村資本市場研究所のレポートが参考になるので、ご参照下さい。

<野村資本市場研究所:日本企業のM&Aにおけるプライベート・エクイティの台頭と今後の展望>

http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2018/2018sum11.pdf

②ヘッジファンドとの違い

オルタナティブ資産(株式、債券以外の非伝統的資産)という意味ではヘッジファンドと投資対象のカテゴリーは共通している。

しかし、転職者、キャリアの観点からすると、両者は全く異なっている。ヘッジファンドは、株式、債券、FX、デリバティブ等、証券市場によって利益をあげることを企図しており、キャリアとしては、外銀のトレーディング、運用会社(バイサイド)のファンドマネージャーのキャリアである。

これに対して、PEファンドは、大量の株式を取得して長期間(3~5年)保有し、財務モデリングによる負債の減少や優先株等による低価格での取得等のIBD的なスキルを駆使して利益をあげることを企図したファンドである。

このため、外銀IBD出身者がPEファンドの最大派閥である。従って、PEファンドに転職を希望する者としては、外銀IBDを目指す必要がある。もちろん、国内系証券会社のIBDから直接、又は、外銀IBD経由でPEファンドに転職する手もある。最近では、MBB等の戦略コンサルティング・ファームからPEファンドに転職するケースもあるようだが、主流はIBD畑であろうか。

ヘッジファンド、VC、PEファンドについては、オルタナティブ・インベストメントのカテゴリーということで同じように扱われることもあるが、就活生や若手でPEファンドを目指す者は明確に違いを把握しておくべきだろう。

<ヘッジファンドの年収と就職について>

https://career21.jp/2018-11-12-132108/

2. PEファンドの年収について

①外資系、国内系、金融機関系の違い

まず、PEファンドも外資系PEファンドと国内系PEファンドに大別される。そして、国内系PEファンドは、独立系PEファンドと金融機関系PEファンドに大別される。

一般的には、外資系PEファンドの方が国内系PEファンドよりも年俸水準は高い。

そして、国内系PEファンドでは、ユニゾンキャピタルとアドバンテッジ・パートナーズの老舗2社は外資に準じた高給も可能である。

②PEファンドの年俸の仕組み

これは、外銀のIBDと類似しているが、ベースといわれる基本給と、年1回のボーナス(キャリーともいう)の2本立てである。

但し、PEファンドのボーナスの原資は、投資対象株式売却時のキャピタルゲインであり、うまく行った時には、1億円を超えるような巨額のボーナスが支払われることがある。

③年収のイメージ

日本の場合、結論的には、外銀IBD>PEファンドというイメージである。ボーナスは業績次第だが、ベースの水準はかなり外銀IBDが高い。

例えば、PEファンドのアソシエイトの場合、900~1300万円、VPだと1200~1600万、Directorだと1500~2500万円、といったイメージである。

同じ役職で外銀IBDと比べると、ベースは2割位は低いのではないだろうか。投資が成功しキャピタルゲインが出た場合には、シニアポジションの場合には年収の1億越えもあるが、それはあまりあてにしない方がいいだろう。

3. どうしたらPEファンドに転職できるか?

①ポジションの数が少なく人材の流動性が低いPEファンド

外銀IBDの場合だと大手だと数百人位の組織であるが、PEファンドは小さな組織で、日本の拠点のスタッフ数がせいぜい数十人規模である。

従って、ポジションを見つけるのは大変で、多くの転職エージェントに登録してポジションが空くのを待たなければならない。

なお、PEファンドもピンキリであり、多くの人がイメージするのは、以下のファンドだと思われる。

<外資系>

〇カーライル・グループ

〇KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)

〇ベインキャピタル(Bain Capital)

<国内独立系>

〇アドバンテッジパートナーズ

〇ユニソン・キャピタル

これらが、いわゆる日本におけるトップファームであり、それ以外のPEファンドとは転職難度、求められるスペックも異なってくる。

この中で、カーライル・グループは超名門であり、VP以上になると4000~5000万円程度の年収が期待でき、投資成績がいいと、さらに巨額のボーナスも期待できる。

上記以外にも、外資系・国内系のPEファンドは存在するが、業績とか給与水準はピンキリであろう。その点については、転職エージェントに具体的な条件等を確認するしかないだろう。

年収のイメージについては、こちらの転職エージェントのサイトが参考になるだろう。

PE [プライベートエクイティ]、1400〜1600万の転職・求人情報|検索結果1ページ目|金融の転職や経営・コンサルの転職支援サイト【コトラ】

なお、どういった転職エージェントに登録・相談するのが良いかについてであるが、「PEファンド 転職」でGoogle検索を掛けてなるべく多くの転職エージェントに複数登録するのが良い。何故なら、PEファンドの求人案件はそれ程多くは無いので広く網をかける必要があるし、転職エージェントによって得意・不得意な企業があるので幅広に対応するのが手堅いやり方だからである。面倒であるがそのなかで、良さそうな転職エージェントを取捨選択すれば良いだろう。

一応、昔からPEファンド関連の求人を手掛けているところとしては、上記のコトラの他、アンテロープ、ムービン、アクシオム、プロフェッショナル・バンク、キャリア・インキュベーション、カナエアソシエイツ、Concord等がある。

②PEファンド転職時に求められる経歴、スペック

PEファンドに転職するためには、外銀IBDに行くのが王道である。PEファンドの役職員の過半数は、外銀IBD出身者であろう。

次に多いのは、外コン、特に戦略系といわれるマッキンゼー、BCG、ベインといったMBBである。

PEファンドは人数が少なく、ポテンシャル採用をやる余裕も必要性も無く、また、超人気職種なので、外銀IBD、外コン以外は、まず、ゴミ箱行きと考えた方がいい。

外銀IBD、外コン以外でPEファンドへの転職が可能だとすれば、国内系証券会社のIBD出身者位であろうか。

なお、総合商社、特に三菱商事出身者なども散見されるが、彼らはハーバードMBAに留学後、未経験アソシエイトとしてポテンシャル採用された訳で、商社の職歴を買われたわけでは無い。

いずれにしても、極めて高いスペックが求めらえると考えた方が良い。

具体的なイメージについては、カーライルがスタッフの経歴をWebで開示しているので、参考になるだろう。

カーライルメンバーの検索 | The Carlyle Group

もちろん、国内金融系や中小独立系PEの場合は、上記のPEファンドほどのスペックは求められない代わりに、年俸水準も概して低くなる場合が多い。従って、外資系の著名PEファンドとは全く待遇が異なる点について留意する必要がある。

4. IBDからPEファンドに転職する理由

年俸が若干下げてまで、何故外銀IBDからPEファンドに行くのか?ポジティブな理由としては、M&Aやファイナンス等のIBDスキルに加え、「投資」という新たなスキルを習得できるからである。

また、投資対象会社の「経営」に関与できるようになるということも大きい。PEファンドの場合には、ファンドの幹部社員が社外取締役という形で投資対象会社に派遣されるので、会社の役員を経験できるというIBDでは得られない経験を積めるのは魅力である。

他方、ポジティブな理由としては、外銀疲れ的なものもある。外銀IBDのM&Aアドバイザリーの仕事は、利益率が低く労働集約的であり、長時間労働を余儀なくされる。

また、軍隊の様な外銀IBDの組織にいて、人間関係に疲れる場合もある。もちろん、PEファンドが楽な訳では無いが、外銀IBDと比べると明らかに小規模であるし、ワークライフバランスも外銀よりはましであるので、年収よりもそちらを優先するケースもある。

なお、外コンからPEファンドに行くと、大抵の場合は年収アップになるし、「投資」やIBD的なスキルを習得できるので、魅力は少なくないだろう。

5. PEファンドへの転職を検討するにあたっての留意事項

PEファンドは、高年収、ハイスペックで、投資や経営に携われる魅力的な仕事である。

しかし、日本の場合はPEファンドの市場は本場米国と比べると極めて小さい。それは、日本の大企業がグループ会社或いは自社自身のリストラ、切り売りに後ろ向きなのは相変わらずだからである。この点、上述したように、近年では日立や東芝の事業再編関連の巨大案件も出てきているが、それでも米国とは比べ物にならない規模である。

したがって、PEファンドはまだまだマイナービジネスであり、外銀IBD或いはMBBの超ハイスぺ集団が一気に押し寄せてきても、とても席数は十分にはない状況にある。

実は、リーマンショック前は、PEファンドビジネスは、ゴールドマン・サックスとか野村證券が、グループ内で大きなPEファンドビジネスを展開し、大儲けをしていたが、リーマンショックによる自己投資ビジネスの規制(ボルカールール)によって、大幅に制限されてしまった。

だからといって、その分をPEファンドが獲得できることもなく、地味な市場のままである。

このため、見かけやイメージと比べると、期待外れに終わる場合があるので、外銀IBDでも順調に出世を見込めそうなら、そのままいるというのが堅いキャリアプランではないだろうか。

もっとも、PEファンド業界にとって明るい話があるとすれば、グローバルな超低金利による運用難によって、オルタナ枠が増大してきていることである。株式、債券といった伝統的資産への投資では企図したリターンが確保できないため、資金がオルタナ枠に流れて来るのである。

もちろん、この状況は必ずしも望ましいものではない。オルタナ枠に多額の資金が押し寄せても投資対象が簡単に見つかる訳ではなく、高値掴みのリスクが生じるからである。

とは言え、グローバルでPE投資を含むオルタナ資産は拡大しており、この点はPEファンド業界にとっても悪くない話である。

なお、最近では外銀IBDのハードワークと将来に対する不安からなのか、若手のバンカーでPEファンドを目指す者が増えてきているという。ただ、日本のPEファンドビジネスの市場規模と、2020年初頭に生じたコロナウイルスの問題がどう影響するかがまだまだ不透明であり、その点は慎重に考えた方がいいかも知れない。

いずれにしても、上記のトップティアのPEファンドに行くべきであり、独立系の知られていないPEファンドに行くといい案件に関与できるか不安なので注意した方がいいだろう。

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