1. 美容外科医の年収は?
①一般的な年収をつかむのが難しい?
美容外科医の世界は自由診療の領域であり、保険診療の世界とは多くが異なる世界である。このため、美容外科医の年収についても、保険診療の世界のルールが単純にあてはまらないので、レンジが大きく、なかなか一般化するのは難しいかも知れない。
一般的な勤務医の年収は約1600万円、開業医の年収は約2600万円との統計がある。
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/219586/
②美容外科:勤務医の年収レンジはどうか?
ところが、美容外科については全体的な統計がなかなか見つからない。美容外科の開業医についてはピンキリで平均の意味はあまり参考にならないかも知れないが、勤務医については、採用サイト等を見ると、2000~2500万円あたりがボリュームゾーンだろうか?
https://doctor.mynavi.jp/search/regular/result/feature_div_cd/02eg/
もちろん、中には、3500万円~5000万円クラスの求人募集広告なども見られるが、美容外科の場合には歩合(コミッション)的な色彩が強く、それは安定的に支給されることが保証されているものではなく、予定された売上を達成できない場合には、下げられてしまうものである。
従って、美容外科の世界においても、勤務医の場合には年収3500万円あたりに
天井があるといったイメージだろうか?
③結局、大きく稼ぐには開業医になるしかない?
結局、大きく稼ごうと思えば、開業を目指すしかない。それは、サラリーマンの場合、最上位のエリート層である総合商社、マスコミ、最大手金融機関でも、年収2000万円程度で頭打ちになるのと同様である。大きく稼ごうと思えば、起業・独立する他ないのである。
2. 美容外科の開業医の年収と高額年収のポイント
美容外科の開業医の年収は、何と言っても自由診療なので、ピンキリであるが、
成功した場合のレベル感は極めて高水準である。
成功した場合のわかりやすいイメージは、TVでCMを流しているような、フランチャイズ化に成功したパターンである。
そのような場合、年収水準は10億円、いや数十億円レベルも可能であろう。
何故、そのような高額の年収が可能になるのかというと、その理由は実はシンプルで、「レバレッジ」と「マーケティング」だ。
①多店舗展開によるレバレッジ
美容外科医も労働集約的なサービス業であるので、一人の美容外科医が診察可能な時間や患者の数については限界がある。
そこで、複数の勤務美容外科医を採用し、更には、多店舗展開していくことによってどんどん規模を拡大していけば、売上にレバレッジを掛けることが可能となり、オーナーである院長の年収は自己の診察可能時間を突破して増え続けることが可能になるのである。
多店舗展開については、直営店であってもFC方式であっても本質は変わらない。人を雇用することによってレバレッジを掛けて、売上を拡大するという
だけの話だ。
これは、大手の渉外法律事務所のパートナー弁護士が、多くのアソシエイト弁護士を雇用することによってレバレッジを掛けることによって、年収1億円以上が可能になることと同様だ。
また、これは、経営者が労働者を雇用することによって多額の収入を得るのと同じである。
保険診療の場合だと、院長一人で対応できる患者数は物理的に限られるため、売上に上限が出来、この結果、開業した場合でも年収3000万円~5000万円と頭打ちになってしまう。
自由診療である美容外科の場合は、多店舗展開によるレバレッジを使って、この上限を突破しているのだ。
②マーケティングによるブランディング
多店舗展開によるレバレッジを使うことができれば、当然それに応じて売上が増え、その結果、院長の年収も増えるというのはわかる。
しかし、理屈はそうであっても、それを実現することは難しい。何故なら、飲食店でも塾でもそうなのだが、多店舗展開をしようとすると、その支店(分院)のクオリティを本店同様に維持することが容易でないからである。
分院のクオリティが低く、院長以外の施術を受けたくないということになってしまうと、本院だけが繁盛しても、分院が閑古鳥だと経営が成り立たないのである。
そこで、前提となってくるのが、広告等を使ったマーケティング、ブランディングである。
院長による書籍の出版、雑誌等に登場することによる巧みなPR、TV CMや雑誌の広告を使うことによる宣伝、更には、魅力的なWebsiteの作成やFB、インスタグラム、ツイッター、YouTube等のSNSまでも駆使したマーケティングが重要になってくるのである。
例えば、こちらはこの世界の第一人者の相川氏が経営されている湘南美容外科の
Websiteであるが、普通の保険診療の病院のホムペとは違って、よく作り込まれているのではないだろうか?
3. 多店舗展開をする美容外科に求められる経営スキル
①人的資源管理(HRM)のノウハウ
多店舗展開、マーケティングといっても、それだけでは不十分である。分院を含めて、全店が継続的に収益を産み続けていくためには、優秀な人材(医師、看護師、事務スタッフ、マーケティングスタッフ)を雇用しなければならないし、採用後も教育をしていかなければならないからだ。
従って、美容外科で成功するためには、院長自らの医師としての腕を磨くだけでは全く不十分であり、被用者である勤務医たちのスキルもあげなければならない。
また、腕を上げた勤務医は、更なる条件アップを目指して、転職したり自ら開業したくなったりするものだ。そうなると、モチベーション・マネジメントをしっかりと行わないと、優秀な勤務医が流出し、分院の営業が上手く回らなくなってしまう。
この点は、一般の事業会社と全く同じで、人的資源管理における優れたノウハウが求められるのだ。
②オペレーション・マネジメント
多店舗展開を成功させるためには、人的資源管理(HRM)だけではなく、オペレーション・マネジメントも必要となる。限られた人員、設備の中で可及的に効率的に業務を回して、売上を拡大させていく必要があるからだ。
オペレーション・マネジメントについては、外部のコンサルなどを使うこともできるが、それを丸のみにしたところでうまくは行かず、やはり経営者である院長の資質が求められる。
まとめ
このように見ていくと、美容外科医の世界で成功を収めるためには、自由診療のルールの中で勝ち抜くことが求められる。
マーケティング、人的資源管理、オペレーション・マネジメントというのは医療の技術の外の世界であり、一般の事業会社で求めらるスキル・資質と同じである。
いくら、医者としての学歴や専門性、技術が優れていても、これらの経営的な手腕が身に付くとは全く限らない。
結局、美容外科医の開業で成功し、億単位の年収を得るためには、東大医学部を出ても関係なく、結局、経営力がものをいうのだと考えられる。