1. 外資系運用会社の営業職(セールス)について
外銀(外資系証券会社)のセルサイドに対して、バイサイドとも言われる外資系運用会社であるが、営業職(セールス)の社内における存在感は大きい。
まず、運用会社の職種は、運用、セールス、バックオフィス(経理、人事、コンプライアンス、オペレーション等)に大別される。
運用とセールスの中間的な職種として「プロダクト」と呼ばれる部署がある会社もある。
従来、運用会社の花形職種は、ダントツ「運用」であったが、日本株の存在感の低下、国内債券の利回りがほとんど無いことから、日本の金融商品の相対的な存在感が低下していった。
他方、外国株式、外国債券、オルタナティブ等、海外もののプロダクトの存在感が長期的に高まってきた。
こういった海外物のプロダクトは、当然海外の本社・関係会社で運用されるので、海外物を販売するセールスの重要性が高まっていった。
このため、外資系の運用会社において、最も稼げる職種がセールスだったり、日本の拠点長がセールス畑であることが目立ってきている。
2. 外資系運用会社の営業職(セールス)の種類
外資系証券会社の営業職が、株式セールスと債券セールスというように、プロダクトの種類によって分類されるのに対して、運用会社の場合には、以下の顧客のタイプ別に分類されることが多い。
(1)リテールセールス
これは、主として個人投資家向けの公募投資信託を販売してもらうために、野村證券、大和証券、SMBC日興証券等の大手証券会社や、メガバンク等の大手金融機関を外交し、自社グループの投資信託を取り扱ってもらうため、或いはその後のプロモーションを主たる業務とする職種である。
また、野村アセットマネジメントや大和投信、アセットマネジメントone等の国内系大手運用会社を介して、間接的に自社グループの投資信託を販売してもらうために、運用会社に外交をする場合もある。
(2)機関投資家セールス
リテールセールスは、最終投資家が個人投資信託である公募投資信託を対象としているが、機関投資家セールスは金融機関や年金基金に対して私募投信や一任運用を通じた運用サービスを提供する仕事である。
機関投資家セールスは、金融機関(大手行、地銀、生損保)を対象とした金法セールスと、年金基金(GPIF等の公的年金と企業年金)を対象とした年金セールスとで別れることが多い。
同じ機関投資家と言っても、求められる営業手法や知識が異なるため、金法セールスと年金セールスとは別々の業務といった感じであった。
しかし、運用難に伴う海外物プロダクトへの投資ニーズの高まりを受け、年金セールスから金法セールスへの転身を図る者も見られるようになった。
リテールセールスと機関投資家セールスの職務内容や対象顧客は大きく異なるため、キャリア上相互に行き来することは滅多になく、組織的にも別々の部長が仕切っていることが多い。
3. 外資系運用会社の営業職(セールス)の年収について
①外資系証券会社の営業職(セールス)との比較
セールスの場合は歩合的要素が大きいので、年収における個人差が大きく一般化しにくいのは、外資系証券会社も運用会社も同様である。
外資系証券会社と比較すると、明らかに言えることは、運用会社の方がローリスク・ローリターンである。
外資系証券会社の営業職の場合は、ある意味歩合外務員に近く側面もあり、成績が悪いと1年でクビになることも珍しくない。
また、上手くいったとしても、45歳定年制のような暗黙の雰囲気があり、50歳過ぎて働き続ける人は稀である。
他方、営業職なのでリスクはあるが、運用会社の場合には1年でクビというのはあまり見られないし、60歳まで働き続けることも可能なのが特徴である。
反面、成功した場合のリターンは、外資系証券の方が大きい。
②外資系運用会社の年収
外資系運用会社も、外資系証券会社と同様、ベースと呼ばれる基本給と、年1回のインセンティブ・ボーナスの2本立てである。
ベースについては、外資系証券会社と比べて相対的に低い。
VP未満のアソシエイト職であれば、ベースが800万~1200万円程度である。
VPクラスであれば、ベースは1500~2000万円に収まることが多い。
外資系運用会社の場合、ベースが2000万円を超えるのはハードルが高く、SVPとかDirectorレベルにならないと2000万円に到達しない。
ボーナスについては、親会社含む企業全体の業績や、セールス全体の業績、個人の成績によって大きく異なるが、チーム全体としての業績という感が強く、部長未満(VP以下)で突出したボーナスをもらえる可能性は低い。
目安としては、アソシエイトが1000万円のボーナスをもらえることは稀で、数百万~800万円位であろうか。
ボリュームゾーンのVPの場合、大変幅が大きいが、下は数百万から上は2000万円位であろうか。ベースと合わせて、年収が2000~3000万円のレンジに収まることが多いだろう。
シニアセールスである、部長、本部長クラス(SVPとかMD)の場合には、パフォーマンスが良いと、数千万円クラスも可能であるが、ベースと合わせて年収が1億円を超えることはまず無い。
ベースと合わせて4000~5000万円位が、シニアセールスの年収レンジでは無いだろうか。
4. 外資系運用会社の営業職(セールス)の転職における特徴
これは、年を取っても働くことが可能という点と、転職における流動性が高いということである。
年を取っても働けるというのは、セールスというより、運用会社の全般的な特徴である。平均年齢は、外資系証券会社より10歳以上は高いのでは無いだろうか?
営業の本部長クラスが50歳を超えていることも多く、50代でも目立たないし、転職エージェントからも普通に声がかかる。
外資系の運用会社は10~20人規模の従業員数でも収益を上げることが可能であるため、会社の数が証券会社と比べて非常に多い。
また、独立系やヘッジファンドを含めると、転職の機会は多い。
このため、業績不振や成績不良に伴いリストラされるリスクはあるが、その場合でも、行き先が結構多くあるというのがメリットである。
5. 外資系運用会社の営業職(セールス)に転職するには?
外資系運用会社は、ブラックロック、フィデリティ、GSAMのような業界最大手以外は、新卒採用を行っておらず、中途採用がメインである。
従って、王道は国内系の運用会社或いは信託銀行でリテール営業或いは機関投資家営業を経験してから、外資系に転職するパターンである。
また、外資系証券会社から転職することも可能であるが、年齢が高くなるにつれ、難しくなるのは他の職種と同様である。
30歳ちょっとくらいまでであれば、比較的証券会社からも転職しやすい。
但し、35歳を過ぎると、だんだんと難しくなっていく。
対象とする顧客或いは顧客の部署が異なったり、営業スキルやノウハウも証券会社のそれとは異なるためである。
もちろん、上になればなるほど、ポジションの数が少なくなるということもある。
このため、外資系証券会社から転身するのであれば早い方が良い。
外銀に比して、バイサイドは地味目なところがあるので、まだそれほど知られていない感があるが、長期的に見て、外銀自体が縮小傾向にあるので、今後はもう少し注目されるかも知れない。