1. 外銀(外資系証券会社)の新卒社員の離職率は高い
新卒一括採用がメインの日本企業であるが、あれほど苦労して採用した新卒社員も約3割が3年以内に辞めてしまうという。
それは、外銀の場合も同様であり、せっかく最難関の試験を突破して入社したハイスペックの社員も、入社3年後のアソシエイト昇格のタイミングまでの1/3~半分位は辞めてしまうという。
2. 外銀の新卒社員が辞める(転職する)理由
この理由は、シンプルで、仕事が大変だからである。
最近では、「外銀疲れ」という言葉もあるようだが、外銀の場合、物理的にとにかく仕事がキツく、朝8時位から夜中の2時とか早朝5時まで働かされることは珍しくない。
また、競争社会なので、足を引っ張りあう面も否定できず、運悪く、後輩をいじめる体質の上司や先輩に巡り合って、嫌な思いをすることもある。
日本企業の場合なら、そういった場合も、社内異動という技があるが、外銀の場合にはそれが無いのだ。
「他にもっといい話があったから」という退職理由を表向きには語る人もいるだろうが、わずか数年の経験で、高給の外銀以上の条件をオファーする企業が普通あるとは思えず、若くして辞める場合にはネガティブな理由が多いであろう。
3. しかし、外銀の若手は引く手あまただから心配する必要は無い
しかし、外銀で2~3年の経験を積んだ若手は、引く手あまたなので路頭に迷うことは無い。
学歴は良いし、英語もできる。ハードワークも可能である。
それに、外銀で何らかの基本的な金融スキル、金融リテラシーは身に付いた。
このため、他の外資系企業、国内企業に転職することは十分可能である。
4. 但し、転職する際には「軸」を十分に確認しておくこと
このように、セカンドキャリアとして多くの選択肢がある外銀の若手社員であるが、次の転職先を選択するに際しては、次は失敗しないように転職の「軸」を十分確認しておく必要がある。
要するに、自分は「何」を回避したい、或いは、「何」に拘りたいかということである。
自分は上司や先輩との相性が悪かったのがアンラッキーであったが、仕事は好きだしハードワークは厭わない。そして、お金を追求したいというのであれば、国内系金融機関のプロフェッショナル職や外資系のバイサイド(運用会社)で金融プロフェッショナルの途を継続するというのが一案である。
他方、ハードワーク(ワークライフバランスのひどさ)や、リスクの高さ(将来長く働ける保証が無い)が自分はあまり好きでない、というのであれば、総合商社や日系企業が選択肢となる。
5. 外銀の若手社員の転職における具体的な選択肢
①国内系IBD(或いはトレーディング部門)
自分は金融専門職を続けていきたいという人にとっては、これが王道である。
若手に限らず、VP、Directorクラスのシニア層であっても、外銀キャリアに行き詰ったり、リストラされた場合には国内系に行くというのが1つのパターンである。
最近だと、某欧州銀行系証券会社のIBDがリストラした際に、多くの中堅IBDのバンカー達が、国内系証券会社のIBDに流れたことが知られている。
但し、留意点は年俸が大幅に下がってしまうことだ。
外銀の場合だと、アナリストでもトータル年収は1000~1500万円くらいあるので、国内系IBDに行くと半減の世界である。国内系IBDの場合、野村證券が頭一つ給与水準が高いと思われるが、それでも外銀と比べると負けてしまう。
もっとも、国内系IBDでキャリアを重ねてVPやDirectorに昇格して、再度外銀に挑戦するということは不可能ではない。あまり多いケースでは無いが。
また、国内系証券会社のIBDではないが、外銀IBDを辞めたバンカー達の行き先として多いのが、会計事務所系(デロイト、EY、PwC、KPMG)の財務アドバイザリー職だ。もっとも、DD中心の事務系の職務内容であり、給与水準も国内系証券会社のIBDと大きく変わらないので、特におすすめというわけではない。
②バイサイド(外資系運用会社)
実は金融キャリアを続けたい人には、こちらがおススメである。
外資系の運用会社は基本的に新卒採用をやらないので、元外銀の若手をポテンシャル採用してくれる可能性はある。
IBDは仕事の内容的に互換性があまり高くないが、機関投資家セールスとかオルタナティブ系(デリバティブやPE)に強いマーケット職であれば、業務における汎用性があり、採用してもらえる可能性は十分にある。
給与水準は外銀と比べると劣るが、それでも、セールスや運用関連の場合には、3000~5000万円の年収レベルは将来狙えるし、ワークライフバランスや安定性も外銀よりは良い。
但し、バイサイドの問題点は平均年齢が高いことであり、各部署の最も若い社員が30歳を超えているということも珍しくない。
このため、20代で入ると年功序列のために、パシリを長いことやらなければならないリスクもあるので要確認だ。
③コンサルについて
ありそうでないのが、外銀⇒外コンのキャリアである。
そもそも、転職理由が「外銀疲れ」というであれば、激務であり、しかも年俸水準も低い外コンにわざわざ転職するということは無いだろう。
もっとも、野村総研、三菱総研、経営共創基盤といった国内系コンサルであれば、安定性・ワークライフバランスという点では理由があれば、年俸水準は大幅に下がるし、将来のアップサイドの可能性も無い。
そうであるならば、国内系証券会社のIBDの方がいいのではないかと思われる。
実際、外資、国内を問わず、外銀⇒コンサルというのはあまり聞いたことが無い。
④総合商社への転職
昔はあまり聞かなかったが、最近では外銀の若手のセカンドキャリアとしてはこれが王道になっているようである。
総合商社の仕事が特別楽だということは無いが、外銀と比べると遥かに恵まれているし、総合商社も頭が良くて金融スキルを有するグローバル人材として、元外銀の若手社員は歓迎だ。
こうした事情から、総合商社をセカンドキャリアとして選択するのは十分に理由がありそうだ。
もっとも、留意しなければならないのは、総合商社は完全な新卒採用、終身雇用のバリバリの年功序列のカルチャーである。このため、外様である中途採用組は昇格等において生え抜きの人達よりも不利である。
まあ、これは他の国内系企業にも全般的にあてはまると思われるが。
⑤ベンチャー企業
ここでいうベンチャー企業とは、自ら起業・独立したり、共同創業者になるのではなく、ストック・オプション狙いでCFO(候補)として昔のメルカリのような企業のようなある程度の規模感のあるベンチャーに転職することだ。
これもアリだと思うが、意外にCFOのポジションというのは余り多くは無い。ベンチャー企業からすると、直接ビジネスに結びつかないCFOというのは後回しになるからだ。また、経営者(CEO)自体がテクノロジー寄りで、CFOの役割・重要性にさほど気づいていない場合もある。
また、自らがビジネスを動かせるわけではないので、キャリアとして成功するかどうかは、相場環境や、経営者の経営手腕等の他人任せになってしまうので、結構博打的な要素が強い。
そして、失敗してしまうと自分のキャリアを上手く積み上げられないのでリスクは高い。
⑥外資系IT等の事業会社
GAFA、マイクロソフト、シスコシステムズ等の、優良外資系IT企業への転職である。こちらは、元外コンの人達の主たる行き先の1つであるのだが、元外銀のキャリアを活かせるポジションがあまりない。
うまく経営企画とか事業開発系のポジションにもぐりこむことができればいいが、具体的な転職例はあまり聞かない。
転職エージェントも普段外銀の人達が接するところとは異なるので、まず、転職エージェントを探し出して相談するのが良い。
最後に
外銀疲れで転職を考える若手社員が、ブログビジネスで独立しろというのは到底受け入れられないかも知れない。
しかし、ブログビジネスで稼いでいる人は既に結構いる。
いきなり、これで勝負をするのはリスクが高いかも知れないが、ワークライフバランスの良い、事業会社に転職した場合には副業として始めてみるのも悪くない。
外銀に入れる位のポテンシャルがあれば成功する確率は十分にあるのではないだろうか?
とりあえず、選択肢の一つとして頭の片隅に置いておくのは悪くないだろう。
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