営業利益率40%超、イトクロのメディア運営ビジネスは起業を目指す者にとって大いに参考になる

1. 営業利益率の高い企業にビジネスアイデアがあるのでは?

Wantedly掲載企業やベンチャーコンテスト入賞企業を見ても、あまり期待感がわかないことが多い。

その理由としては、あまり「儲かりそうに見えない」ベンチャー企業が少なくないからだ。

ネット系ベンチャーの場合には、規模感、話題性、高株価などがトップ・プライオリティになっていることがあるのか、ビジネスの本質である「儲け」に対する執着が弱いような気がした。

そこで、東証マザーズ上場企業を対象とした、「営業利益率」ランキングで検索を掛けてみると、上位にはこういった企業が見られた。

2018年 マザーズ 営業利益率 ランキング | Stockclip

1. 手間いらず

2. 日本ファルコム

3. イトクロ

4. GameWith

5. ユーザーローカル

手間いらずは比較サイトの運営企業である。

日本ファルコム、GameWithはゲーム関連企業、ユーザーローカルはデータ解析サービス企業である。

手間いらずとユーザーローカルは利益率は高いものの、営業利益の絶対額が小さい(10億円未満)であるのに対して、イトクロは営業利益率が40%を超えている上、営業利益の絶対額も2018/10期で20億円(前期は17億円)と高水準なので、注目してみることとした。

2. イトクロとはどんな会社か?

www.itokuro.jp

イトクロは、2006年3月30日設立の、従業員137名(2018/10/31現在)の会社で、塾と予備校のポータルサイト「塾ナビ」の運営で知られるメディア運営会社である。

収益の大半は、「塾ナビ」を中心とする教育関連メディア経由で、閲覧したユーザーがクライアント企業に資料請求をする件数に伴う成果報酬である。

3. イトクロのビジネスモデル

イトクロのビジネスモデルは、シンプルでメディア運営ビジネスである。

メディアの対象は、教育関連であり、多数のPV(集客)に成功しており、自動的に一定の成果報酬がクライアント企業(塾・予備校)から支払われる仕組みである。

従って、在庫とか仕入れとか言った概念は生じない。

メディア運営なので実店舗とか店舗運営スタッフも不要である。

当然、借入も特に必要が無いので金融費用も発生しない。

要するに、極めてシンプルなB/S、P/Lなので、塾ナビをメインとするメディアを通じて入ってきた報酬は、従業員の給与を中心とする販管費を払えば、後は全て利益となる仕組みである。

したがって、営業利益率が40%超と極めて高いのである。

実は、こういったメディア運営は、固定費、運営費用がほとんどかからないので、経営者1人でも運営が可能なビジネスモデルである。

何らかのカテゴリーで、PV数トップのメディアの作成に成功すると、基本的にストックビジネスであるので、特に何もしなくても継続的にお金が入ってくる。

このため、一人で起業するにはもってこいのビジネスなのだ。

イトクロのB/Sを見ても、総資産78億円のうち、何と約85%の67億円が現金・預金であり、固定資産は4億9000万円しかない。

本来このようなビジネスモデルであれば、IPOをして資金調達をする必要性は無いのであるが、事業規模拡大とか知名度の向上を企図したのであろうか?

4. 起業を考える際には、メディア運営ビジネスから始めてみよう

ここ数年間は、ベンチャービジネスに対する投資意欲が旺盛で、創業間もない会社にVCや事業会社からいきなり数億円の出資がなされるケースも珍しくは無かった。

このため、売上を作ることよりも、規模の拡大・人材の採用に熱心であったベンチャー企業も多かったが、本来ビジネスの目的は、利益を創ることにある。

利益を創ろうと思えば、売上を作ると同時に、コストを抑制しなければならない。

究極の形は、経営者一人だけで従業員は雇わず、そして、自宅兼事務所で、借入ゼロでスタートするのが一番手堅い。

そして、メディア運営、要するにブログビジネスのようなものから始めると元手も全然かからない。

そして、PVが増えるに連れ、売上(Googleアドセンスとかアフィリエイト報酬)は青天井で増えていくことも可能だ。

また、メディア丸ごと売却すると、一度にまとまった金額(数億円)を入手することも可能であり、それを基に新しいビジネスを展開することも可能だ。

著名なブロガーが稼いでいるのは、単純にこのメディア運営というビジネスモデルであり、年商≒年収に近い世界があり、従業員ゼロでも実質年収が1億円以上ということが可能なのだ。

5. 個人だけでなく、ベンチャー企業もメディア運営で稼ぐことは可能

費用は最小限、PVが増大した場合には売上は青天井であるメディア運営ビジネスは、個人が起業する際には打ってつけなのだが、ベンチャー企業の場合でも、狙ってみることは十分可能である。

ベンチャーの場合は、エンジニアとかマーケティングとか、動画編集といった既存の経営資源を活用可能なので、個人一人でメディア運営をするよりも、より本格的なメディアを作成・運営することが可能である。

留意点

このように魅力にあふれるメディア運営ビジネスであるが、留意しなければならないのはメディアのテーマをどのように選択するかである。

企業(起業家)によって、得意とするメディアテーマと苦手とするメディアテーマがあるようで、競争力の無いテーマを選択してしまうと、勝つのは難しそうだ。

塾・予備校の世界では圧倒的なナンバー1である「塾ナビ」運営会社のイトクロでも、金融メディアは苦手のようで、新規事業として手掛けたものの上手くいかず、得意の教育メディアに回帰するようである(2018/10期資料 11p)。

このため、その人(起業家或いは企業)が得意とする分野を見つけて、それにフォーカスしていくのが手堅いようだ。

 

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