ゴールドマン・サックス等のIBDでMDに昇格できるバンカーが駆使する3つのパワー

1. 外銀のIBDでMDに昇格するということ

リーマンショック後は、年収水準が以前よりは大幅に落ちたとは言え、今でも年収1億越えも可能な憧れのポジションが外銀(外資系投資銀行)のIBDのMD(Managing Diretor)だ。

そもそも外銀のIBDから内定をもらうためには、大変な競争を勝ち抜かなければならないのだが、その競争を勝ち抜いた新卒の中から、最終的にMDまで昇格できるのはせいぜい1割位であろうか?

MDに昇格するためには、個人的な能力・スキルが優れているというのは当然だが、そもそも規制産業である金融機関において、自分しか持っていないスキルを持つことは難しい。また、IBDの場合、個人の力よりも会社自体のネームバリュー、ネットワーク、資金力等が案件獲得のカギを握ることが多く、個人の能力・スキルだけの高さだけで出世することは難しい。

そこで、外銀IBDでMDに昇格できるようなバンカー達は、個人の能力以外にも、様々なパワー、「処世術」のようなものかも知れないが、を駆使して成功している人が多い。

以下、その3つのパワーについて紹介する。

2. 出世できるIBDのバンカーが駆使する3つのパワー

①ポジションパワー(公式の力)

これは、VPとかDirectorといったポジションに付随する、公式な仕事上の権限である。業務における許可、部下に対するアサインメント、予算、部下の評価、採用、(オフィシャル)情報取得等である。

出世するためには、この公式な業務上の権限を用いて、部下を引っ張ってチームとして成果を上げなければならないのだが、外銀IBDは上司が強い力を持つ軍隊の様な組織で、しかも、部下は概して優秀なのでこのポジションパワーは日本企業と比べると発揮しやすいと言える。

もっとも、VPに昇格する前の、アソシエイトとかアナリストの場合には、社内におけるこのポジションパワーが(ほとんど)無い。

従って、まず、順調にVPに昇格するには、以下の2つのパワーを上手発揮する必要がある。

②パーソナルパワー(個人の力)

パーソナルパワーというのは、各バンカー個人の有する能力なのだが、これは、更に、以下のように細分した方がわかりやすいだろう。

(1)専門性、実績といった仕事遂行に係る直接的なスキル、能力

(2)人間的魅力、人柄、パーソナリティ、人望

(3)コミュニケーション能力

学生の場合、パーソナルパワーというと、(1)の専門性、知識といったスキルに係る能力ばかりが気になるかも知れないが、実はこれは出世するための1要素に過ぎない。

周りも優秀な人達ばかりで、専門性スキル、知識だけで差別化するのは難しいのだ。

むしろ、大事なのは(2)の人間的魅力だ。

これは、単純に人(上司、他部署の人、クライアント、後輩等)から好かれる、或いは嫌われにくいという性格だ。

外銀の世界でも、結局「好きか嫌いか」が出世のカギになるので、ここは大いに注目する必要がある。

積極的に好かれようと思うと、行動が却って裏目に出たりするので、むしろ、嫌われないことを意識した方が簡単かも知れない。

だから、例えば、レスポンスが誰に対しても早い、礼儀正しい、他の部署の人や後輩に対する態度・対応が良い、といったことの積み重ねが効いてくる。

実はパーソナルパワーの人柄については、新卒採用のジョブにおいてもシビアに観察されている。

真っ先に落とされるのは、「俺がー」「俺がー」という自己アピールばかり熱心なKYなタイプである。この手のタイプはいくらスペックが高くIBDに関する知識があっても確実に落とされる。

まあ、わかりやすくいうと、幾ら優秀であっても、ホリエモンのようなタイプは外銀IBDでは採用されない。むしろ、地味目で切れ者と感じさせなくても、人から嫌われない控えめなタイプがIBDで出世していたりする。

③リレーションパワー(関係性の力)

これは、多様なネットワークの中心にいて、様々なサポート、アドバイス、情報、資源を得ることができるパワーを意味する。

簡単に言うと、「政治力」に近い概念かも知れない。

これは、アソシエイト、アナリストのような非管理職でもこのパワーは発揮できる。

例えば、昇格等の判断においては、上司の評価だけではなく、上司の上司、或いは、他部署のMD、また重要顧客からの支持がそれを左右する。

従って、仮に上司が少々苦手で自分とは相性が悪い場合であっても、その上司や、他部署の幹部から好かれており、そのサポートを受けているのが知られていると、直属の上司は変な評価をするわけには行かないのだ。

このリレーションパワーは、昇格やボーナス査定といった評価の場面だけではなく、日常の業務運営や生活においても効いてくる。

社内の各所に信頼を築いておけば、業務をスムーズに遂行出来たり、IBDのライバル達が知らないような情報を入手することが出来、自分の社内における地位を強化していくことができるからだ。

このため、IBDの若手バンカーは多忙であるが、他の部署の同僚と飲みに行ったり、コミュニケーションを取ってネットワークを強化することに留意すべきなのだ。

自分の仕事と直属の上司ばかりにしか気を使えないようでは、仕事ができても、昇格できるとは限らないのだ。

最後に

外銀IBDというと、映画やテレビの主人公のように、突出したスキルだけで戦うドライな世界のように勘違いされるかも知れないが、極めて人間的でウェットな世界なのだ。

だから、人間的魅力やネットワーク(政治力)にも広く気を配って、賢く生きるためのパワーを身に着けることが、地味ながら、外銀IBDで勝ち抜くための秘訣なのだ。

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