不動産ファンドの年収と転職について

1. 不動産ファンドとは

不動産ファンドとは、投資からの出資や、銀行からの借入によって資金を集め、その資金で不動産を購入し、その不動産からの収益(賃料収入や売却益)を投資家に還元する仕組みを言う。

世の中、〇〇ファンドと呼ばれるものが数多く存在するが、不動産ファンドは投資対象が不動産である点が特色だ。

2. 不動産ファンドを運営している企業にはどういうものがあるか

不動産ファンドを運営している企業は、不動産会社系、金融機関系、外資系と様々な運営母体がある。

良く知られているのが、J-REITの運用会社で、日本ビルファンドマネジメント、ジャパンリアルエステイトアセットマネジメント等、40社以上存在する。

また、主として機関投資家向けに不動産を運用する会社として、三菱地所投資顧問、三井不動産投資顧問など、「投資顧問」と名の付く大手デベロッパーや住宅メーカー等の子会社が数多く存在する。

さらに、外資系の不動産(ファンド)運用会社の日本拠点も数多く存在し、ラサール不動産投資顧問、エートス、GIC、キャピタランド、オークツリー、ハドソン、CBRE等の他、ゴールドマン・サックス・リアルティ・ジャパン、モルガン・スタンレー・キャピタルといった投資銀行系系の会社も存在する。

(※アンテロープというのは不動産ファンドにも強い転職エージェントで、「不動産金融」というのはここでは不動産ファンド関連という意味である。)

主要な不動産金融の企業一覧リスト|金融転職・コンサルタント転職のアンテロープ

3. 不動産ファンドの年収と職種について

不動産ファンドの年収は、国内系か外資系か、また職種によって異なる。

職種については、アクイジション・マネージャーと呼ばれる物件取得をメインとする投資運用の職種と、それ以外のバックオフィス(経理、コンプライアンス、レポーティング)に大別される。

①国内系の会社の年収について

J-REIT系の運用会社を含め、国内系の会社の場合には、職種による違いはそれ程大きくなく、800~2000万円位のレンジとなる。

投資運用関連については、担当者レベルであれば、800~1000万円位、マネージャー、部長というシニアなポジションの場合、1200~1600万円位であろうか。

また、経理とかコンプライアンスといった非運用系の職種では、若干安く、管理職で1000~1200万円、多いところで部長クラスで1200~1500万円程度であろうか。

いずれにしても、年収2000万円を超えるのは難しい。

②外資系の会社の年収について

不動産ファンドは、有価証券を投資対象とする外資系運用会社やヘッジファンドと比べて、年収の水準は高くない。

アセットマネージャー等の運用系の職種の場合、担当職から課長クラスのマネージャーの場合、800~1500万円、部長(Director)クラスで、1600~2500万円という水準である。

非運用関係の職種である経理、レポーティング、コンプライアンスだと、部長(Director)クラスで1500~1600万円位であろうか。

コンプライアンス部長の場合だと若干高く、2000万円位は出る場合もあるようだ。

これを見ると、外資系といっても、それほど妙味のある年収はもらえない。この背景としては、不動産ファンドは「ファンド」という金融的な名称は付くが、その実態は「不動産」業であるので、金融業界の給与水準の方が不動産業界の給与水準よりも概して高いので、このような形になると言われている。

90年代の後半には、銀行の不良債権(不動産担保付き)のバルクセールの絡みで、ローンスターとかサーベラスという不動産系のハゲタカファンドが荒稼ぎし、その従業員も5000万円、ポジションによっては1億円という景気のいい話も散見されたが、残念ながら、今ではそのような案件は存在しないようだ。

4. 不動産ファンドに転職する意味

①不動産会社の社員にとっては年収アップという魅力がある

給与水準が外資系でもせいぜい2000万円程度であり、終身雇用が保証されていない状況を考慮すると、40代で1400~1500万円位もらえる日本の金融機関から、不動産ファンドに転職する意味はあまりない。

このため、不動産ファンドの社員の多くは、不動産会社からの転職者が多い。

不動産会社の場合は、三井不動産のようなダントツ給与水準が高い会社は例外なので、大手の管理職でも1000~1200万円位に収まるので、1500~1600万円、場合によっては2000万円が見えると、年収面における魅力はあるのである。

②英語ができなくても、専門職として働き続けることができる

日本の信託銀行や大手不動産会社で不動産投資関連の仕事に従事していても、日本の大手企業の場合には転勤制度があるので、ずっと継続して不動産投資関連の仕事に従事できない場合がある。

また、ある程度の年齢になると社内の出世競争も見えてくるので、今のポジションより上を目指せないことがわかってしまったりすることがある。

そういった場合には、年収的には大したアップにならなくても、専門職として働き続けることができたり、或いは、国内系企業だと課長職どまりの人が不動産ファンドに行くと部長職に就けるというメリットが存在する。

こういった場合において、転職する際の足かせとなるのが英語力であったりするのだが、不動産ファンドの場合は、J-REITや私募不動産ファンドを含めて国内系の会社数が多い。また、外資系でも英語が出来なくてもOKというポジションが比較的存在する。

したがって、英語力を問われず、専門職としての仕事を継続出来たり、ワンランク上のポジションに就くことができるという非金銭的な理由で、不動産ファンドに転職する人は存在する。

また、企業数が多いため比較的転職し易い環境にあるのと、外資系金融のようなハードさは無いので、ワークライフバランスは確保できるという利点もある。

③不動産系のベンチャー企業が出てきたら面白いのだが…

不動産ファンドは小規模な組織であるので、比較的広範な業務範囲を各社員が担当することができる。その意味では、不動産系のベンチャー企業があれば転職し易いポジションにあると言える。

もっとも、不動産業界は閉鎖的な業界であり、ネットビジネスが馴染みやすい様に見えてなかなか簡単には行かない複雑さがある。Real Estate Techという言葉はFintechとは異なり、流行にすらならなかったような気がするが、将来ネット系ベンチャーが立ち上がると、キャリアの幅は拡がるかも知れない。

5. 不動産ファンドに転職するにはどうすればいいか?

①不動産会社において、物件の売買周りの仕事に従事する

不動産ファンドは、物件の取得がメインであるので、不動産会社といってもエイブルとか東急リバブルのような仲介系ではそのスキルが身に付かない。

デベロッパー系で、物件の売買の経験をし、物件DD(デュー・デリジェンス)のスキルを習得することが求められる。

一番確実なのは、「不動産投資顧問」と名の付く子会社に異動させてもらうことだ。

②信託銀行の不動産部門で職務経験を作る

また、信託銀行の不動産部門での職務経験を有する人も、不動産ファンドの世界では割と見られる。信託銀行の不動産部門であれば、不動産に掛かる物件の売買、評価のスキルと、ファンドに係る金融のスキルを両方兼ね備えることができるからだ。

もっとも、信託銀行の場合だと、40代であれば1200~1500万円位の年収はあるので、2000万円クラスのシニアなポジションを見つけないと行く旨味が無いので、対象となるポジションは限定されてしまう。

なお、不動産ファンドへの転職に興味があれば、このApexという転職エージェントはかなり詳しいので、参考になるのではないだろうか。

www.apex1.co.jp

③ポテンシャル採用はどうか?

高学歴で大手金融機関にいったものの、配属がリテール部門であるため、転職を考える若手社員は一定数いるだろう。その場合は、宅建資格あたりを取得すればポテンシャル採用をしてもらえる可能性はあるだろう。そのためには、リクルート、JACや上述のApex等に広く登録して、チャンスを待つのが良いだろう。

まとめ

不動産ファンドというのは、外資系金融の世界と比べると、驚くほどの高水準の年俸が期待できる世界ではないが、転職マーケットというのが存在している。

英語ができなくてもOKというポジションが多いので、不動産会社の物件取得業務に携わっている人であればチャンスがあるだろう。

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