私大の難化が顕著で、2020年以降の入試改革を踏まえた場合の塾ビジネスについて考える

1. 2018年入試の私大の難化の衝撃と、今後の身通し

東京の私大の定員数の厳格化に端を発し、2018年の私大入試が超激化したことが知られている。本来であれば、早慶に合格してもおかしくないレベルの学生が、MARCHに全滅してしまう程だという。

私大の定員数の厳格化に伴う合格者数の限定と、推薦・AO入試枠の比率拡大に伴う一般入試枠の減少によって、この傾向は、今後も継続していくことが予想されている。

2019年度大学入試動向 私大は本当に難化するのか?模試志望動向から併願作戦を考える! – 学びの真似び(まねび) 「学び続ける人」になるために(教育と受験と勉強法)

2. そもそも何故私立にこだわるのか?

私立大学の人気が高いのは特に東京エリアである。早慶を始めとして、上智、ICU、MARCH、日東駒専と数多くの個性的な私立大学が多く、受験生にとっての選択の余地が十分にある。

そして、何と言っても大きいのが、少ない科目数(3科目)で受験できるということだ。

国立大学だと、文系学生が嫌いな数学、理科2科目を学習せざるを得ないのだが、私立文系であれば、数学と理科を回避できるのは大きい。

また、経済的にも、国立と私立の授業料の格差は以前と比べるとそれほど大きくなく、自宅から通える私立と、自宅から通えない国立とを比べると、首都圏在住の家庭にとっては、自宅から通える私立に行った方が、安いのだ。

さらに、就職においてもほとんどの有力企業の本社が集中する東京にある私立の方が、地方の国立大学よりも有利とされている。

このため、例えば、明治大学や立教大学(いずれも文系)に行った方が、北海道大学や九州大学に行くよりも、コスト面でも、就職面でも有利なのだ。

自宅から通える国立でMARCHよりも就職が明らかに上となると、東大・一橋に限定されてしまう。そうであるならば、最初から、早慶、MARCHを3科目で目指した方が手堅い選択ということになる。

なお、関西地区の場合は、昔から伝統的に国立志向が強いとされており、京大・阪大・神大・大阪市立大を志望する学生も多いようだが、最初から関関同立を目指す学生も少なくない。

3. しかし、これ以上私大が難化するとどうか?

以上より、特に東京を中心に、私立大学に絞って受験をするというのは十分な合理性があった。

しかし、定員厳格化に伴う難化に加え、私立大学の生徒の囲い込みのための推薦・AO枠拡充戦略の推進、さらに、2020年の大学入試改革に伴う科目数増大傾向(?)等を踏まえると、事情が変化するかも知れない。

MARCH>地帝・地方国立、という図式は変わらないにせよ、これはMARCHに入ることが前提となった考え方である。MARCH未満の私立となると、地帝・地方国立に大きく劣後するのが就職や社会的な評価である。

3科目に絞ったところで、一般入試枠でMARCHに入る可能性が低くなると、実は、我慢して数学と理科をやって、国立大学を狙った方が得策と言えるかも知れないのだ。

要するに、3科目でMARCHに入れず、日東駒専レベルになってしまうのであれば、数学と理科をやって、地方国立に行った方が得なのだ。

4. 従来には無かった新たな特化型の予備校へのニーズ向上

①(非難関)国立大学特化型の予備校

従来の私大人気の環境下においては、「関関同立」特化型のマナビズムという新設予備校が伸びてきたり、3科目型の私立にフォーカスするという予備校や塾にビジネスチャンスがあった。

しかし、3科目型のMARCHが難化しすぎると、数学と理科を嫌々やっても国立を狙った方が得策ということになる。

もちろん、文系志望者からすると、数学も理科も大嫌いだ。

そこで、なるべく最小の負担で中堅国立に合格可能な数学と理科を教えることができる予備校ができると、それなりの人気がでるのではないだろうか?

例えば、中堅の国立大学で就職が良い滋賀大学(経済学部)などは、センター試験得点率が7割位で合格できるという。

しかも、2次試験は数学無しの英語と国語で受験ができる。中堅の国立大学ではこのようなところも多く、数学と理科と言っても最低限の負担で何とかなりそうである。

滋賀大学/一般入試(科目・日程)|大学受験パスナビ:旺文社

②英会話力を伴う英語を教えることができる英語塾

2020年以降の変化として、英語の実践性が重視されるということである。英会話に触れることができない学生にとっては、これは、苦痛で仕方が無いだろう。

「これからは英語が喋れないとお話にならない」などと、40年以上前から言われ続けているが、日本人が英語が話せないのは何の変化も無い。

そもそも、中学や高校、街の予備校の英語の先生自体が英語を話せないのだから、どうせ英語教育改革といっても、英語が話せるようにはならない。

他方、少子高齢化に伴う国内市場の縮小化により、外銀・外コン・総合商社を始め、人気企業に行くには英語力が必須となってきている。

それなら、いっそ、開き直って大学入試の機会を利用して、英語を話せるようになってしまうというのも手だ。

日本の中途半端な大学に行くくらいなら、海外の大学に行くというのも手である。別に大学はアメリカでなくて構わない。中国、香港、台湾、ASEANなど選択肢はある。

英会話ができる学生はレアなので、英会話力の習得を売りにする英語塾は差別化しやすく、面白いかも知れない。

最後に

2020年以降、新制度によって、受験生はますます振り回されて気の毒である。しかし、大学入試も一種のゲームなので、自分が有利な戦い方を選択すべきである。

みんなが3科目だから「自分も3科目」というのであれば、貧乏くじを引く結果となるかも知れないので、国立に切り替えてみるというのも逆バリで面白いのではないだろうか?

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