1. ICU(国際基督教大学)とは
ICU(国際基督教大学)とは、1949年創立の東京都三鷹市にキャンパスのある
私立大学である。その名の通り、キリスト教を母体とする大学で、リベラルアーツ・カレッジとして教養学部のみからなる小規模な大学である。
学生の英語力の水準は高く、また、偏差値も高い。好き嫌い別れるところであるが、首都圏では、早慶上智に匹敵する水準の高レベルな大学として知られている。
2. ICUの就職の実績について
https://www.icu.ac.jp/campuslife/career/
ICUの就職の実績については、大学側がわりと具体的に開示をしている。まず、特徴として、卒業生が589名しかいない。供給が極めて限定されている。
さらに、約21%が進学するので、普通に民間企業に就職をするのは、卒業生の約7割であり、人数にすると408人程である。従って、ICUの学生は採用企業側からすると、希少性が高く、かなりのレアものということになる。これは、学生にとって有利な事情である。
2018年度卒業生のデータが直近なので、3名以上の就職先の状況は以下の通りである。その特徴は以下のようになる(MECEではない。私の主観による。)
人数 | 企業名 |
11 | アクセンチュア |
6 | 楽天、EYアドバイザリー&コンサルティング |
5 | 日本IBM |
4 | 星野リゾート、PwCコンサルティング |
3 | 日産自動車、東京海上日動火災 |
三菱UFJ銀行、マクロミル | |
三井住友銀行、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー | |
ソニー、セールスフォースドットコム | |
スリーエムジャパン、アンダーソン・毛利・友常法律事務所 | |
P&G |
(出所:国際基督教大学HPより外資系金融キャリア研究所が抜粋)
①コンサルの比率が高い。
最も多く就職している企業は、アクセンチュアで、何と11名である。民間企業就職者が408人程であることを踏まえると、驚異的な比率である。
また、2位にEYアドバイザリー&コンサルティングが6人、PwCコンサルティングが4人、アビームコンサルティング及びKPMGコンサルティングが2名と上位を占めている。
マッキンゼー、BCGという、いわゆるMBBこそ見当たらないが、上記の総合系コンサルティング・ファームだけで25名にも及び。これは、民間企業就職者数の約6%に相当し、かなりコンサルの比率が高いと言えるだろう。
②IT系が多い
日本IBMに5名、セールスフォース・ドットコムに3名、Googleに2名と外資系IT企業の他、楽天に6名、マクロミルに3名、ユーザーベースに2名と国内系のネット系ベンチャーにも就職している。
③外資系が多い
上記①②の中にも外資系企業は含まれているが、それとは別に、スリーエムジャパン3名、P&Gに3名、ブルームバーグに2名、アデコに2名就職する等、他の大学と比べて、外資系企業の比率が高いと思われる。これは、ICUらしい特徴が表れていると思われる。
3. ICUの就職における課題について
ICUの場合には校風的に、学生の自主性に任せるという感じになりそうだが、就職というのは大学の最重要要素の一つである。少子化の影響は、ICUのような有力校でも無視できない問題であるはずなので、就職においても、人気企業にもう少し誘導しても良いのでは無いかと思われる。
例えば、以下のようなカテゴリーの企業においては、ICUの学生に対するニーズは強いはずだ。少子高齢化に伴う国内市場の縮小化が避けられない中、各企業は、グローバルで稼ぐことができる能力を持った人材を強く求めている。この点、ICUの場合には、英語力だけでなく、留学したり学内の外国人留学生との
コミュニケーションに慣れており、グローバル・リーダーシップを発揮できる期待感が強いからだ。
①いわゆる外銀と、国内系金融機関のコース別採用(IBD等)
何と言っても、最難関の外銀である。ゴールドマン・サックス、JPモルガン、モルガン・スタンレーあたりを合わせて、毎年数名ずつでも送り込めば、かなりの大学としての印象は良くなるはずだ。
また、国内金融機関の場合でも、IBD等の専門職コースの場合は、ICUの学生に対するニーズはあるはずだ。従って、国内系金融機関の専門職コースには、一定数送り込むべきでは無いだろうか?
②総合商社
外銀・外コンと並ぶ、就活の最高峰は総合商社である。グローバル・リーダーシップを兼ね備えた人材という点では、ICUは総合商社にピッタリなのだが、2018年度卒業生の5大商社への就職実績は以下の通りである。
三菱商事 | 0名 |
三井物産 | 2名 |
住友商事 | 2名 |
伊藤忠 | 1名 |
丸紅 | 1名 |
(合計) | 6名 |
(出所:AERA 2019年8月5日号 「主要50大学の人気企業への就職者数」を基に、外資系金融キャリア研究所集計)
三井物産と伊藤忠に2名ずつ、住友商事と丸紅に1人ずつの合計6名である。総合商社の中でもトップブランドである三菱商事には、この年度は0名というのは寂しい限りである。
思うに、総合商社(特に5大商社)は、1学年100名以上採用しているので、採用側としては、なるべく豊富な品揃えを希望するものである。東大、早慶、京大、一橋、MARCH、地底に加え、各社少なくとも1名くらいはICUからも採りたいと思っているのではないだろうか。
ICUの学生が、自信が無いから受けないということは無いのだろうが、もう少し、総合商社に挑戦して欲しいところだ。
また、学校側も、学生の自主性というのはわかるが、学生の視点は狭いので、総合商社にもっと誘導してもいいのではなかろうか。もちろん、そのためには、OB/OGの協力も不可欠だ。
結果としては、5大商社、各社に2~3名ずつくらい、5大商社の合計で10名以上は毎年送り込みたいところだ。
③大手マスコミ(電通、博報堂、キー局)
ICUは大手マスコミには強いようにも見えるが、2017年度を見ると、日経新聞に4名、時事通信社に2名を送り込んでいる。しかし、2018年度については、電通、博報堂は0名であり、日本経済新聞社の2名位しか実績が無い。
もっとも、年次によっては、電通、博報堂、NHK、共同通信社等への就職実績はあるが、安定して人気の大手マスコミに卒業生を送り込んでいるわけではなさそうだ。
電通、博報堂、キー局というと、最難関で学生にとって憧れの企業である。このあたりも、毎年コンスタントに送り込むことができるように、学校やOB/OG組織は頑張るべきではなかろうか。
まとめ
ICUの私立大学における位置づけは20~30年前と比べて、横ばいといったところであろうか?
マイペースに学校も、学生もやっている感があるが、グローバル人材に対する需要は明らかに今の方が高まっているはずだ。
Google、P&G、セールスフォース・ドットコム、スリーエムの様な外資系企業や、アクセンチュア等の総合系コンサルティング・ファームにおいては実績があるが、校風か、OB/OGの数が少ないのか、学生が見栄や周りの目を気にしないのか、就職先は控えめな気がする。
外銀、総合商社、大手マスコミにはまだまだ採用されるはずであろうから、学校は将来の少子化リスクを踏まえた上で、もっと人気企業・高就職偏差値企業に誘導すべきではないだろうか?
最初の就職先(ファースト・キャリア)は大事なので、学生も迷ったのであれば、ミーハーだとか気にすることなく、難関企業に挑戦してみてはどうだろうか?