1. 志望動機とは?
①志望動機なんて、年収とカッコよさ(モテ度)に決まっている!
就活時、或いは中途採用でも、必ず志望動機というのは聞かれる項目なのであるが、就活の場合だと、本音では年収水準とカッコ良さ(モテ度)に決まっている。
だって、実際に働いたこともないのに、やりがいなんてわかるはずがない。
それに、やりがいがあるかどうかなんて、全く同じ仕事をしていても年収水準によって全く異なって来る。
そんなことは、総合商社とか金融機関に内定した先輩から聞いて見れば明らかなことだ。
それに、そもそも、採用の責任者である40~50歳のオジサン達こそ、一番良くわかっているはずではないか。
②そもそも志望動機は重要か?
年収やカッコ良さが志望動機に決まっているとしても、それでも、志望動機は聞かなければならない。
しかし、志望動機は内定をもらえるかどうかに際しての重要なファクターなのだろうか?
実は、それは就活生のスペックによって、志望動機のウェイトは違ってくる。
典型的なのが、外銀・外コンの内定持ちであって、総合商社においても別枠で歓迎される。志望動機は下記に紹介するような平凡なものでも通ってしまう場合もある。
他方、一般的な採用枠を巡って、当落線上にあるような一般的なスペックの学生にとっては、志望動機の内容とかそのプレゼンの仕方によって、内定をもらえるかどうかが違ってくる場合もある。
要するに、これを言っては元も子も無いが、結局、志望動機の内容が内定に与える影響度は、その学生のスペック次第なのだ。
③就活関係各社のWebで紹介されている内定者の志望動機例に振り回される必要は無い
以上のような理由から、よく就活関係のサービス提供会社のWebとか、内定者のブログにおいて志望動機の書き方とか、考え方がもっともらしく紹介されているがそれらに振り回される必要は無い。
志望動機なんて、その人のスペックとか、バックグラウンドによって最適解は異なって来るので、表面的に他人の物をまねても仕方が無いのである。
そんなのを見て悩む位であれば、スペック上げのための努力をした方が良い。
2. ありがちな総合商社や金融機関向けの志望動機10選
以下の例は、MECEではないが、ありがちな商社や銀行向けの、イケていない、突っ込みどころ満載の志望動機のサンプルである。
これを見ると、「え、これってイケてないの?!だって、内定者の実例だよ」と疑問を持つ学生もいるかも知れないが、上述した通り、志望動機がOKかどうかはその学生のスペックとの関係で相関的に決まって来るので、切り取られた志望動機だけを見て、その善し悪しを判断すべきではないのだ。
反対に言うと、こんな程度の志望動機でも、スペックその他がしっかりしていたら内定をもらえるのだ。
実際、内定者のコメントを見ても「志望動機ではそんなに頑張る必要が無い」と言及している内定者もいる。
大事なことは、内定者の志望動機について自分の頭でその是非を考えること出来る能力だ。
①グローバルな仕事をしたい。
総合商社とかでありがちな志望動機である。
もっともらしく見えるけど、「グローバルな仕事をしたいなら、ソニー、キャノン、トヨタ、ホンダ等のメーカーに行った方がいいよ。」と言われるだけだ。
グローバルというキーワードだけでは、商社を始め、特定の業種や企業に繋がらない。
もっとも、これでもOKになるのは、その就活生が帰国子女であったり、留学経験があるからこそ、この言葉が出てくるわけなので、そのスキルと経験が高く評価してもらえることが多いので、志望動機は弱いけどOKとなることは理解できる。
②成長できるから
実は、中途採用、特に管理職クラスで「成長」という言葉を使う人はいない。
学生は好んで使いたがる典型的なWordであるので、「どこがダメなの?」という疑問が持たれるかも知れないが、社会人的には結構なNGワードである。
何故か?
それは、その人が「成長」するかどうかなんて会社にとってはどうでもいいから。
某サイバーエージェントの若手社員の名ゼリフ、「会社は学校じゃねえんだよ!」ということだ。
発想としては、自分の性格・スキル・経験を活かして会社に「貢献したい」というのが筋であって、「成長」なんて自分のことしか考えていないNGワードなのだ。
とはいえ、実際スペックの高い学生とかもこれを使って内定をもらっていることはあるので、学生の間ではNGワードどいう認識は低いかも知れない。
③人と人とを「繋ぎ」たい
これも、総合商社であるあるの学生が好む典型的な言葉である。
「繋ぐ」というのは商社に限らず、媒介、エージェンシービジネスに広く該当するので、証券会社、不動産仲介ビジネス、ECビジネス、転職エージェント等、他にいくらでもある。
意地悪く言うと、人と人とを繋ぐ直接性が強いビジネスは、結婚相談所なんて一番インパクトがあり、「じゃあ、オーネットとかツヴァイとかパートナーエージェントなんて一番いいですよね。」ということになる。
④日本経済(日本企業)のプレゼンスを高めたい
こんな偉そうなこと良く言えるなあという感じだけど、外銀・外コン内定持ちで総合商社に行く学生が好んで使う場合がありそうである。
まあ、内容が抽象的で突っ込みどころは満載なのだが、中途採用でこういうことを言う人はいない、というか、いると落とされるだろう。
本当に心の底から日本経済のプレゼンスを高めたいと思ってくれるのであれば、GAFAのようなメガベンチャーを起業して起ち上げてくれれば一番有難いのだが…。
結局、こういう志望動機で内定するというのは、スペックが高いからこそ許されるのであろう。他の学生は、そこのところ注意しなければならない。
(もっとも、普通のスペックの学生は、この志望動機を言うことは無いかと思われるが…)
⑤ビジネスを通じて社会に貢献したい
これはよくよく考えてみると、「日本経済(日本企業)のプレゼンスを高めたい」の謙虚なバージョンかも知れない。
自分一人で日本経済のプレゼンスを高めることができるんだとまでは言わず、何らかの貢献ができたら言いと言っているだけだから。
でも、そもそも社会に貢献できないビジネスってあるんだろうか?
武器、麻薬みたいなことをやらない以上、何らかの社会貢献にはなる気がするのだが…。
まあ、これもスペックが高ければ、比較的謙虚な人柄感を伝えることができるので、非本命の会社でいちいち準備をする時間が無い場合には、最悪、これでもいいのかも知れない。
⑥人々を笑顔にしたい
「じゃあ、芸でも磨いてM-1目指して下さい。」と、面接官は頭の中で思ったりしているのかも知れないが、上記⑤と一緒でスペックが良ければまあいいかということになるのだろうか?
さすがに、外銀とか外コンでこれをいう人はいない気がするが。
⑦「〇〇事業に関心があり、貴社は〇〇事業に強いからです。」
これは総合商社で聞かれる答えにくい質問。
総合商社は、配属先を選べないにも関わらず、何をやりたいかについて必ず質問する。
そこで、特定の事業分野を志望動機にしてしまうと、「じゃあ、〇〇事業に配属されないとどうするの?」といった意地悪な質問が来てしまう。
要するに、そういう場面ではロジカルな説明力とか、対応力を求めているのだろうが、あまりに特定の事業を強く言ってしまうと、返すのが難しい。
だから、総合商社で特定の部門を志望動機にするのは要注意。
⑧若くから「裁量権」を持たせてくれるから
これを、パンフレットだけを見て、総合商社とか金融機関で言ってしまうとNG。何故なら、商社、金融、伝統的大手メーカーなんてバリバリの年功序列に決まっているから。
でも、パンフレットには若くからの「裁量権」を強調したりするので、それを安易に信じない方が良い。
⑨途上国を助けたい
これは総合商社でありがちなNG例。一見良さそうにも見えるが、ツッコミどころ満載である。
そもそも、「じゃあ配属が途上国じゃなければ辞めるの?」と言われたらおしまい。
それに、「何故、君が途上国ビジネスに向いているの?」と聞かれたら、子供時代に暮らしたことがあるとか、途上国に留学した経験でもない限り、回答に窮してしまう。
⑩日本の中小企業を救いたい
これは、メガバンクでの良くある志望動機の一例。
要するに、「半沢直樹」とか「下町ロケット」を見て面白かったということ。
もっとも、金融機関の場合は、あまり志望動機にはこだわりが無いので、これでもいいかも知れない。
メガバンクは学歴志向だから、東大だったら、これで十分なのだろう。
3. 志望動機の前にスペック上げを頑張ろう
結局、志望動機なんてその学生のスペックとの関係で善し悪しが決まってくることが多いので、それ以前にできる限りスペックを上げておくことが肝心だ。
①学歴を上げる
これは難しいかも知れないが、国内の上位校に編入するとか、海外の大学に編入すると言った方法は考えられる。
また、理系だと修士課程を上位校の院で取得する、院ロンダという手法もある。
②留学、体育会
これは学生の間でも、同じ大学でも、留学経験者と体育会は別格であるという認識があるようだ。
もっとも、就活のために体育会に行くというのも難しいだろうから、検討する価値があるのは留学だ。
留学も、正式な交換留学から私費での短期留学まで様々である。
いずれにせよ、TOEICスコアを860以上取ることができると明らかにアピールできて優位なので、グローバル経験&英語力というのは何とかしておきたい。
そうすると、「学生時代に力を入れたこと」についても、グローバル・リーダーシップ経験という格好の良いことをアピールできるので、一気に自分の就活におけるステイタスをランク上げすることができる。
③資格等
公認会計士とか司法書士のような難関資格を就活までに取得することは大変難しいが、比較的簡単で使える資格も存在する。
おススメは、証券アナリスト試験(CMA)である。
1次レベルだと半年もあれば十分に合格できるし、費用も数万円位なので負担がかからない。
これがあると、金融機関の専門職系とか、事業会社のコーポレート(財務系)でも活用できるのでおススメである。
4. 十分な企業分析を行うこと
充実した深みのある志望動機を考えるに当たっては、適切な企業分析が不可欠となる。
ところが、これがまともに出来る学生が非常に少ないようで、だからこそ、月並みな志望動機が並ぶのである。
具体的には、企業のホムペのIRコーナーの、決算説明会用資料と中期経営計画をじっくりと読み込んで、わからない用語は別途ググったりして補えばいいのである。
総合商社でありがちな、「途上国ビジネス」についても、会社によってそのウェイトは異なる。また、途上国で資源ビジネスをやるのか、インフラビジネスをやるのかの違いをキッチリと調べると、より説得力のある志望動機を作ることができるのである。
資源ビジネスの比率が7割を超える三井物産に対して、インフラやりたいとか消費ビジネスをやりたいとか言っても伝わらないのである。
他方、モザンビークへの投融資などについて、中期経営計画等を読み込んで把握していると、自ずと志望動機というのが湧いて来るのである。
また、IR資料ではないが、企業理念とか沿革なんかもしっかりと読み込めば、深みのある、他の候補者に差別化できる志望動機を考えることができる。
例えば、三菱商事の場合、三綱領などを暗記するぐらい読み込んでいるとその社風の良さを踏まえた上で三菱商事に行きたいという意気込みが自然な形で伝えることができるのだ。
以上のように、企業分析、要するに、中期経営計画と決算説明会用資料、会社によっては企業理念あたりを読んでおくと、就活におけるヒントが一杯浮かんでくるのだ。
なお、企業分析の方法等については、こちらの過去記事をご参照下さい。
https://career21.jp/2019-03-29-134313
最後に
就活においては、ES、GD、志望動機、自己分析などなど、いろんなことをやらされるので、マニュアル的な情報が溢れている。
しかし、結局決め手となるのは、オーソドックスに学生のスペックと企業分析の深さというシンプルなところであるので、テクニックに振り回されることなく、基礎力を磨いておくべきであろう。