1. LINEの金融事業は戦略的な重点業務分野であるが…
LINEは金融事業を今後の中核事業に育てるため、戦略的な重点業務としている。
実際、先日、みずほと提携し共同で新たなネット銀行「LINE Bank」を設立する計画を発表したし、
LINEとみずほが「LINE Bank」設立へ なぜ2社が新銀行を作るのか – ITmedia Mobile
半年ほど前には、野村證券との証券ビジネス等における提携を発表している。
しかし、まだ起ち上げたばかりのレベル感であり、ここから収益に結びついてくるのはまだまだ先の模様である。
2. LINE Payは好調のようだが…
この秋の、LINEの決算説明会資料によると、LINE Payのスマホ決済対応予定箇所は92万箇所を突破し、順調に進捗しているとのことである。
https://scdn.line-apps.com/stf/linecorp/ja/ir/all/FY18Q3_Presentation.pdf
確かに、LINEの知名度、既存ユーザーの数、LINE Payのインフラ拡大傾向から考えると、金融事業のうちの決済ビジネスについては、思惑通りに行くのではないだろうか。
しかし、決済事業というのはそれ自体で大きく稼ぐことは難しい。
決済から先の、金融事業、要するに、銀行、証券、保険、仮想通貨、といったビジネスにつなげて初めて儲けることができるのだ。
実際、LINEに関わらず、ソフトバンク/ヤフー、楽天、メルカリ/メルペイも決済基盤を確保してから、その先の金融ビジネスで利益を上げる算段であろう。
3. それでは、決済から先のどういった金融ビジネスが有望か?
LINEの場合、決算説明会用資料の14pに、LINE Financialとして、資産運用、保険、PFM(家計簿サービス)、その他金融サービスが記載されている。
このうち、LINEほけん、LINEスマート投資はサービスリリース済である。
みずほとの提携の銀行は、「その他金融サービス」に入るのだろうか?
①保険ビジネスについて
このうち、おすすめできないのが「保険」である。
そもそも国内保険市場は飽和状態である。
LINEというのは、保険の申し込みの手段が簡素化されるというだけであって、それによって、国内保険市場が拡大されるわけではない。
それは、あれほど上場から長期間かけてもなかなかうまく行かないライフネット生命を見れば明らかではないだろうか?
将来的には、Insur Tech(インシュアテック)も視野に入れているのかも知れないが、既存の大手保険会社と競合するかも知れないし、
そもそも日本国内でどれほど市場が開拓できるのか未知数である。
②銀行・証券ビジネスについて
銀行と証券ビジネスを一緒にして分析するのは雑かも知れないが、両者には共通点がある。
それは、既存の大手の金融機関と提携しているということである。
悪く言うと、LINE単独では銀行や証券のことはよくわからないから、「野村さん教えて下さい」「みずほさん教えて下さい」という立場である。
他方、野村やみずほからすると、「LINE7000万ユーザー」という既存ユーザーの多さに着眼して提携しているのだろう。
しかし、LINEユーザーの7000万人の人達は、LINEのチャットやアプリが目的でLINEのユーザーになっているだけであり、金融をやるためにユーザーになっているわけではない。
LINEに銀行や証券がつながったところで、銀行や証券に対するニーズが発生するわけではないのである。
また、野村やみずほの社員からすると、大型M&Aとか大ヒット投資信託に関わった方が自分のキャリアになるわけであって、LINEとビジネスをやりたいとは思っていないだろう。
それに、LINE側には野村やみずほと対等に渡り合える金融のプロフェッショナルがいないので(LINEの給料では雇えない)、結局、大手金融機関の既存サービスを越える魅力的な新サービスが生み出されるとは思い難い。
実際、半年前に野村と起ち上げた証券事業はどうなっているのかよくわからない。
このあたりのスピード感も疑問である。
従って、大手と提携しなければ起ち上げることができない銀行・証券事業に参画することには、個人のキャリアをLINEで形成するという観点からはあまり魅力的には思えない。
4. チャンスは仮想通貨にあり
それでは、LINEの金融事業は、保険だめ、銀行だめ、証券だめ、ということなら、全部だめなのかというとそういうことはない。
仮想通貨事業がある。
2018年の年初のコインチェックの仮想通貨流出事件と市況の低迷により、去年とは打って変わって、仮想通貨ビジネスは寂しい状況が続いているが、仮想通貨交換業協会という自主規制団体が立ち上がり、ICOに関して来年以降の法改正(金商法)の方も進捗しているようである。
政府は仮想通貨事業を否定しているのではなく、むしろ、しっかりとした管理・監督をした上で、市場の発展を企図しているのだ。
また、LNEは決済事業は取れそうであるし、何と言ってもゲームが強い。
従って、LINE独自の仮想通貨との親和性も高いと考えられる。
仮想通貨市場がどれくらい発展するかはわからないが、Block Chain技術との関連で、事業はコケたとしてっも、個人のスキルベースだと価値を高めることは十分可能だ。
それに、銀行・証券のプロは沢山いるが、仮想通貨、ICOに関するプロはほとんどいない。
従って、LINEの金融事業を中途採用で狙うのであれば、仮想通貨事業が面白いと思う。
現在も、仮想通貨事業について、サービス企画、ビジネス企画、ビジネスサポート、技術職、デザイン職、とあらゆる職種で採用活動をやっているようなので、
挑戦する価値はあるだろう。