短期間の準備で外銀・外コン・商社から内定を取った私大理系学部生の就活の「軸」とは?

1. 外銀・外コン・商社から内定を取れる学生とは?

外銀、外コン、総合商社は就活における最難関であり、それぞれ異なったテクニカルな準備をしなければならないので、本来なら負担が重く、どれか一つの業界にフォーカスしたいところである。

しかし、現実には、外銀・外コン・商社を総なめする学生も少なくない。

要するに、業界が違っても優秀と認めてもらえる普遍的な優秀さを備えているということであろう。

(もっとも、商社は外銀・外コン内定持ちを優先する傾向があり、外銀・外コン内定と商社内定との相関関係は高いと考えられる。)

2. 業界横断的な普遍的な優秀さとは何か?

①ずば抜けて高いスペック保有者

外銀・外コン、特に外コンは、内定者の半分位は東大(特に理系の院卒)なので、東大とか体育会だけでは差別化することができない。

しかし、中にはその中でも突出したスペックを有する学生も存在する。

具体的には、以下のパターンである。

・旧司法試験在学中合格者

現在は法科大学院制度になっているため該当者はいないかも知れないが、2000年頃までは司法試験は超難関であり、東大法学部生でも在学中合格はほぼ不可能というような時代であった。

その中で、在学中に司法試験に合格できた学生は別格であり、希少性が半端では無かった。

具体的には現経営共創基盤の社長の富山氏、ライフネット生命の創業経営者の岩瀬大輔氏は東大在学中に司法試験に合格し、BCGから内定を取ることができた。

・東大医学部生

外コンには東大の理系の院卒は溢れているが、さすがに、医学部生は見当たらない。

外コンの場合、会社の「箔付」が重要なので、マッキンゼーの場合、東大医学部特別枠があるとも噂されている。

②その時代に対応した普遍的な「軸」を持っているケース

上記のケースは極めて特殊であり、就活準備を始めるにあたって、どうすることもできない。

しかし、上記以外でも、業界横断的に選好される普遍的な「軸」、スキル、視点を持っている場合には、外銀・外コン・総合商社から内定を総なめすることっも可能となるようだ。

3. 「外資就活」で紹介された私大理系学部生のケース

「外資就活」という、ハイエンドの学生向けの就活情報サイトがある。

その中で、外銀・外コン・商社の内定を総なめできた学生の興味深いインタビュー記事が紹介されている。

しかも、この学生は理系で研究が忙しく、就活準備を始めたのが3年生の冬ということが注目される。

3年冬から本格開始でゴールドマンIBD・戦コン・5大商社内定を完全制覇!類を見ない天才就活生が語る選考突破術【19卒トップ就活生が語る⑨】

①就活の「軸」とは?

この学生の成功の秘訣は、一貫した就活の「軸」があり、それを各業界向けに多少アレンジするだけで、各業界の採用者にとって魅力的なアピールをすることができたからだと考えられる。

それでは、そもそも就活の「軸」とは何だろうか?

就活ではよくつかわれる言葉であるが、よく考えてみると抽象的な言葉である。

「自分のアピールポイント」「強み・特技」「価値観・フィロソフィー」等いろいろな見方ができるだろう。

また、定番の質問である「何故、その仕事はあなたに向いていると思いますか」に対する回答という見方もできるだろう。

この学生は、結果として、外銀・外コン・商社にアピールできる、「特技」「スキル」「強み」「価値観」等があったということであり、「その職種に自分が向いている」と面接官に思わせることができたということだ。

②軸は「ITを活用して、それによって仕事を拡げること」

この学生の「軸」とは、「ITを活用して、それによって仕事を拡げること」だろう。

今の時代、ITというのは流行の旬のテーマである。

総合商社の中期経営計画を見ても、必ず、「デジタル」「第四次産業革命」「ICT」「AI」といったITにまつわるキーワードが記載されている。

戦コンも、どちらかというと、アクセンチュアとかデロイトとかの総合系ファームの強みかも知れないが、「デジタル」「AI」「フィンテック」といったIT系のキーワードを飯のタネとして、ビジネスを拡大している。

外銀IBDも、「デジタル」「AI」「フィンテック」等のテーマで企業が動くので、それに向けたファイナンスとかM&Aが発生すればビジネスにつながる。

このように、ITというのは全ての業界に共通した普遍的な優先事項であり、この学生はITの専門知識を持ち、そしてそれを使ってビジネスを拡大しますという非常にわかりやすい提言をしているのである。

このような明確で刺さりやすい「軸」があるので、業界が違えど、難関突破できるのである。

③明確で競争力のある「軸」があれば微調整すれば済む

そして、この学生はこの「軸」を業界に合わせて微調整して使っている。

例えば、外銀IBDの面接の際は、「エンジニアの視点を持ったIBDパーソンになりたい」と回答している。

実は、外銀IBDはハイスペックであると言っても、実はITとかネットビジネスは弱い人達が多い。

何故なら、IBDというのは、時価総額が大きいセクター、具体的には、金融機関(FIG)、自動車・電機(GIG)、通信(TMT)といった巨大企業がターゲットである。

GAFAが無い日本ではネット企業は重要ターゲットではないため、IBDはネット企業やITには一般的に弱いのである。

しかし、ITの重要性が高まり、ネット企業そのものではなく、ITをネタにして、既存の金融機関や事業会社にビジネスを展開せざるを得なくなったため、既存メンバーが有していないITスキルを持った学生は面接官を魅了することができたのであろう。

また、総合商社の面接に際しては、「商社の既存資産とITを駆使して、新たなビジネスモデルを作りたかった」という対応をしている。

これはまさに商社のビジネスモデルそのもので、商社もITに強い社員は多く無く、また、ITによって新しいビジネスを創造するというのが面接官に刺さったのだろう。

ビジネスの「創造」というのが商社の課題であるからだ。

4. まとめ

このように、時代に即した普遍的なテーマを「軸」にすることができれば強い。

この学生はIT専攻というのが良かった。もしこれが、化学や素材の研究であれば、うまく行ったとは限らない。

何故なら、「化学の視点を持ったIBDパーソンになりたい」とか、「商社の既存資産と素材の知識を駆使して、新ビジネスを創造したい」と言っても、意味をなさないからだ。

専攻分野、スキルが普遍的にビジネスの成果につなげられるものであることが必要だ。

別に、外銀・外コン・商社を総なめする必要は無い。

どこか、自分の志望する業界から決まればいいのだが、そのためには、「軸」、要するに、スキル、特技、価値観、を整理し、「その仕事は何故あなたに向いているのですか」という質問に答えられるようにしておかなければならない。

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