1. 東大法学部にもいろいろ
東大法学部というと、文系最難関であるが、灘、開成、筑駒あたりから、余裕で合格する者から、地方の県立高校から頑張って2浪で何とか合格する者まで様々である。
ここでは、東大法学部の中でも、余裕で入った学力トップ層は、どうすれば最も高い確率で、最も早く年収1億円に到達できるのかについて考えてみた。
「学力」と「稼ぐ力」は当然イコールではない。
ここが面白いところだが、最高水準の学力を備えた者は、学力以外の不確定要素に左右されずに、稼ぐには何が一番堅いかということである。
2. かつての王道、弁護士⇒四大法律事務所のパートナーはどうか?
昔は、これで決まりであった。
昔と言うのは、1997~1998年までの司法試験合格者数が700人時代頃までの古き良い時代で、四大法律事務所への年間入所者数が一桁位の時代である。
そのころ位までは、ほぼ全員がパートナーに昇格できたし、リーマンショック前でM&Aのフィーも厚く、弁護士全体の人数が今の半分以下であったので、四大法律事務所のパートナーになって長年勤務すれば、年収1億円は十分可能であった。
40歳過ぎになるのだろうが、東大⇒司法試験早期合格(24歳まで)⇒四大法律事務所(その頃は合併前で厳密には事務所の名前は違ったのであろうが)⇒パートナー⇒年収1億円、までは十分計算できた時代である。
しかし、司法試験制度改革に伴う、弁護士数の急増とリーマンショック後の外資金融ビジネスの衰退等により、この勝利の方程式は機能しなくなっている。
まず、そもそも、四大法律事務所に入っても、パートナーになれるのは、5人に1人もいるかどうかである。また、パートナーに選ばれるかどうかはパートナーに気に入られるかどうかであって、単純に学力によって決まるものではない。
また、四大法律事務所も拡大化しており、パートナーと言っても、1事務所あたり100人以上存在する。
したがって、パートナーだと4000万~スタートであろうが、そこから1億円になるかどうかは保証の限りではない。
このため、弁護士⇒四大法律事務所⇒パートナー、コースは今でも一部有効ではあるが、その確率は大幅に低下している。
また、パートナーになるまで10年以上要するようになり、早さという点でも厳しくなっている。
3. 外コン(マッキンゼー、BCG、ベイン等)のパートナーコース
民間企業を目指す東大法学部生の中では、外銀・外コンが人気である。
このうち、外コンの中でも、戦略系と呼ばれるファームが最もステイタスが高く高給を狙える位置にある。
具体的には、MBBとも言われる、マッキンゼー、BCG、ベイン、ATカーニー、ローランドベルガーあたり位までである。
外コンの競争は熾烈であり、もちろん学力だけの競争ではない。
その中でパートナーまで上り詰めるのは1%位の話なので、まず、確率的におすすめではない。
厳しくなった四大法律事務所のパートナーの方がまだ遥かになれる確率が高い。
しかも、コンサルというのは労働集約産業なのであり、いくらうまく行っても、ヘッジファンドの成功報酬のように青天井でフィーが発生することは無い。
したがって、パートナーと言っても、4000万円スタートからであり、1億円に到達するものは更に限定される。
以上を考慮すると、「年収1億」ということで見ると、除外すべき選択肢ではないだろうか?
4. 総合商社で出世するコース
外銀・外コン、総合商社という東大生の3大人気業種のうち、確率、スピードともに、最も該当しないのがこれであろう。
バリバリの年功序列である総合商社で、取締役に昇格できるのは、50歳以降である。
そして、取締役と言っても、代表取締役にならないと1億円は無理である。
もちろん、取締役まで昇格できるのは同期で数%であり、学力だけでどうこうできるものではない。
従って、「年収1億」狙いだと、真っ先に外れるコースである。
5. 外銀のトレーディングでMD、或いは、ヘッジファンドで成功する
リーマンショック以降、外銀を取り巻く環境は激変し、外銀の収益性自体が大幅に低下し、特に欧州系は厳しい状況にある。
ゴールドマン・サックス証券は依然として勝ち組であるが、全従業員の平均年収はリーマンショック前のピーク時は5500万円位あったものが、今では、3500万円位まで低下している。
このため、トレーディング部門だと、20代で年収1億というのも以前はあったかも知れないが、今では、MDレベルまで行かないと厳しいだろう。
もっとも、トレーディングで順調にいくと、30過ぎくらいでMDになれるので、四大法律事務所のパートナーになるよりは格段に速い。
以上を踏まえると、弁護士、外銀、外コン、総合商社といった中では、外銀が一番いいということになる。
ただ、1億円を達成するための成功確率は、リーマンショック前と比べると大幅に低下していることに留意しなければならない。
それから、外銀で、IBDではなくトレーディング部門ということであれば、「法律力」は全く関係が無い。
そうであれば、「法学部」という意味合いは無くなってくる。
6. 有力ベンチャー企業のストック・オプションを狙うパターン
これは、従来なかった年収1億円パターンである。
もっとも、ストック・オプションなので、年収1億というより、厳密にいうと資産〇億コースである。
具体的には、メルカリとかマネーフォワードとかPKSHAテクノロジーといった有力企業が上場する前に、幹部社員(CXO)として入社し、ストック・オプションをたんまりもらうケースである。
これには決まったキャリアパスというのがない。
結局、外銀からCFO、外コンからCSO等への就任を狙うパターンである。
想定時価総額と付与されるストック・オプションの割合から、IPOに成功した暁にはいくらぐらい手に入るのかという計算はある程度成り立つが、相場環境の影響が大きく、確率は高くない。
どういった分野が流行るかを事前に予測するのは難しく、狙って達成できるコースではない。
もっとも、年功序列という概念がほとんどない世界なので、20代で数億円を達成することも可能なので、最速にこだわるなら、これが手っ取り早いだろう。
もちろん、確率は高いとは言えない。
ただ、このコースが面白いのは、一発逆転できることである。
例えば、外銀・外コンに入ったものの、MDは厳しいと考えて早めに退職してしまったが、ベンチャーに転職して、IPOにより、一気に同期の勝ち組を逆転できるかも知れないというのが面白いところである。
7. 自ら起業して、会社を売却するケース
先ほどのストック・オプションコースは、ベンチャー企業創業者の手腕、相場環境等の、外部要因に大きく左右される、いわば「運」頼みのコースである。
そこで、自分の力で最速で1億円(或いは資産数億円)を達成するのは、自ら起業して、その会社をEXIT(売却)する方法である。
従来、ベンチャー企業経営で一発あてるパターンというのは、IPOか、IPOが可能な位に企業を成長させて10億超で売却する準IPO的なイメージが強く、とても狙ってできる世界では無かった。
ところが、ここ数年、M&AによるEXITが増加してきており、IPOを目指さずに、最初から売却目的で起業をする経営者も出てきている。
特に金額が10億円を下回る、数億位であれば、EXITの難易度もグッと下がり、実行可能性は高まってきていると言える。
しかし、そのためにはどうすればいいかといったマニュアル類とか成功パターンというのは確立されていない。
自ら情報を十分に収集・分析し、試行錯誤の上で、実行していく他は無い。
そこで、ここで問われる「学力」とは一体何かということである。
もちろん、法律力では無いし、語学力でも当然無い。
要するに、「商才」ということであるが、東大法学部の中でもさらにトップクラスだからといって、「商才」が比例して高いということは無い。
東大法学部主席が、面白いゲームを開発したり、ECの新しいビジネスモデルを創造したり、美味しいラーメンを作れたりするわけでは無いからである。
官僚はもともと稼げないが、渉外弁護士ですら大して稼げなくなった。
サラリーマンであれば尚更、1億円はほど遠い。
もちろん、「お金は興味はない」というのは全然ありだが、お金が欲しい場合はどうするか?
これは、東大法学部生だけでなく、学力優秀層にとっての今後の課題であろう。