1. 難関の総合商社の併願企業を考える
①総合商社だけに絞ると全落ちするリスクがある…
総合商社は学生の就活における超人気企業であり、五大商社、或いは総合商社7社全て受けて、全滅するというパターンは少なくない。
表面倍率は100倍を超える世界なので、数を受けたところで、よほどのハイスペックで十分な対策を踏んだ学生以外は、全滅してしまうリスクを想定せざるを得ない。特に、高学歴でプライドの高い学生ほど、この全落ちリスクに留意する必要があるだろう。
そこで、大学受験の時の滑り止めではないが、プランBとしての併願先の企業も真剣に検討する必要がある。
②コロナ問題発生後の、人気企業の難化のリスク
2020年初頭に発生したコロナウイルスの問題によって、22卒以降、新卒採用者数絞り込みに伴う難化のリスクが伝えられている。このため、従来の志望企業よりも1ランク入りやすい企業群にも応募した方が無難ではないかという見方もある。
このため、総合商社が第一志望であっても、より範囲を拡げた応募が求められる可能性もある。
2. 総合商社がダメなら専門商社ではどうか?
まだ、実際に働いたことがない学生が総合商社に憧れる理由として、イメージとして「カッコいい」というのが本音ベースでは必ずあるだろう。世間的も「商社マン」というと、いいイメージを持ってもらえそうだ。
そこで、単純に「商社」つながりということで、総合商社がダメなら、専門商社でどうか?、という思考もあるかも知れない。確かに、総合商社と比べると専門商社の方が内定を取りやすいだろう。
しかし、だからといって、総合商社がダメな場合に専門商社で本当に満足ができるのかについては、じっくりと検討した方が良い。
3. 専門商社とは?どんな企業があるのか?
①専門商社と言っても、非常に多くの企業が存在している…
総合商社の併願先として、専門商社も検討しようと考えた場合、具体的にどういった企業があるのかという疑問が生じるであろう。
総合商社であれば、7社、調べればすぐに企業名がわかるが、専門商社の場合は、なかなか検索できない。
専門商社と総合商社で検索を掛けても、総合商社は「ありとあらゆるもの」を手掛ける、専門商社は「特定の分野」を手掛ける、といったほとんど役に立たない説明しか出てこない。
株価時価総額、利益といった株式関連のデータで検索掛けてもこれといったものは出てこない。
結局、食品、金属資源、繊維、エネルギーといったカテゴリー別に調べていく他ない。
例えば、金属関係では、総合商社の子会社であるが、こういった企業が新卒採用をしている。
https://www.onecareer.jp/companies/306
https://www.onecareer.jp/companies/540
②鉄鋼・金属関係には大手の専門商社がいくつか存在する
上のリンクのONE CAREERの記事にあるように、鉄鋼・金属関係においては大手の専門商社がいくつか存在し、比較的有名校からも採用実績がある。
例えば、メタルワン、伊藤忠丸紅鉄鋼、住友商事グローバルメタルズなどである。
③「元」総合商社の兼松もある
メタルワンとか伊藤忠丸紅鉄鋼の場合は、事業内容が鉄鋼・金属関係に特化しているため、「総合」商社と比べると業務内容・ビジネスモデルにかなりの差がある。
他方、「元」総合商社の兼松の場合には、不動産事業や資源事業を売却・縮小したため、業務内容はかなり狭まった。しかし、それでも複数の事業部門を展開しており、比較的総合商社に近い業態となっている。
<兼松の年収、就活、キャリアについて>
https://career21.jp/2020-01-27-104134/
4. 専門商社を併願する意味は何か?
学生が専門商社を総合商社の併願先企業として検討する理由は、主として2つ考えられるだろう。
第1は、「商社」という業務に対する興味・関心である。あるいは、「営業」とか「海外」といったイメージもあるのかも知れない。
第2は、将来の総合商社への中途採用での転職期待である。すなわち、海外がらみの仕事を覚えて、その分野での専門知識を付けて、中途採用で総合商社を狙うという戦略である。
5. 専門商社に就職する際の留意点
①総合商社と専門商社とではビジネスモデルが大幅に異なる
「商社」というイメージや、将来の総合商社への転職期待で専門商社を併願するというのはわからないでもない。
しかし、最初に踏まえておくべきは、総合商社のビジネスモデルは、独特であり、単に専門商社の寄せ集めではないということだ。
総合商社は、グローバルの全エリアに、あらゆる商流(川上、川中、川下)で、
あらゆる業務分野(資源、エネルギー、化学、住生活、インフラ、機械、不動産、金融、ICT)の中で、儲かると思われる事業にフォーカスして、事業ポートフォリオを創造して行ける能力を持った会社であるということだ。
これは、専門商社には全くないビジネスモデルなのだ。したがって、総合商社がダメなら専門商社というのは、ズレがある。
<総合商社のビジネスモデルについて>
https://career21.jp/2019-01-27-093752/
②年収水準は実は悪くは無いが…
実は、メタルワンや伊藤忠丸紅鉄鋼の年収水準は決して悪くはない。残業代やボーナスによって左右されるが、入社5年目で年収700~800万円、入社10年目には900~1000万円という水準のようだ。年功序列、業績評価は横並びなので、大半の社員が入社10年目位で年収1000万円を達成できると言われている。
大手金融機関や総合商社には劣るかも知れないが、十分恵まれた水準の給与レベルだと思われる。
また、全般的に歴史のある会社で、福利厚生の水準も決して低くはないようだ。
③何と言っても、総合商社と専門商社とでは年収が大幅に異なる
メタルワンも伊藤忠丸紅鉄鋼も、自社の給与水準だけ見ていれば満足は行くかも知れない。しかし、総合商社と比較すると、どうしても見劣りしてしまう。
これは、総合商社の年収が高いだけなのであるが、入社5年目、30歳時点、入社10年目といったタイミングで比較すると、せいぜい総合商社の7掛け、8掛け位の水準である。
最初から、メタルワンや伊藤忠丸紅鉄鋼を目指していたのであれば問題無いのだろうが、総合商社に憧れ続けた者からすると結構辛いところである。
そうであれば、「商社」というこだわりを捨てて、金融機関、インフラ、高給メーカー(キリン、サントリー、味の素、旭硝子等)を併願するというのもアリかも知れない。
④中途採用で総合商社に転職するケースも無くはない。しかし、かなりの難関である。
さらに、中途採用で総合商社への転職の可能性は無いではないが、総合商社に中途採用で入社している人達の前職は、コンサルが圧倒的に高く、将来の総合商社への中途採用での入社を考えるのであれば、コンサル(戦略系が難しいと、国内系や総合系ファームもOK)を狙う方がいいだろう。
近年、総合商社の中途採用は極めて狭き門であり、外銀の若手ですら通らないケースもあるようである。このため、第二新卒・中途採用で総合商社に転職というシナリオは描けなくもないが、かなり難しいと考えておいた方が無難である。
6. 大手の専門商社に中途採用での入社と転職エージェント
上記の大手の専門商社の場合、総合商社程は狭き門では無いが、採用数も少なく新卒での内定は必ずしも容易ではない。そこで、新卒で入社できなかった場合は、中途採用での入社も考えたいところである。大手の専門商社は中途採用も行っているが、常に求人があるとは限らない。ワンチャンスをものにするためには、リクルート、doda、パソナキャリア等の大手のエージェントには幅広く登録しておいた方が良いだろう。少なくとも、最大手のリクルートには登録しておきたい。登録はこちら(リクルートエージェントの公式サイト)
まとめ
総合商社は待遇もいいし、カッコいいし、ワークライフバランスもいいが、その分、入社するのが難しい。
このため、内定を得られない場合をどうするかについて考えることも重要である。総合商社⇒専門商社、という発想は少々雑であり、自分自身の価値観、判断軸をよく考えてみることである。
待遇やビジネスモデルの観点から、総合商社に比較的近いのは、兼松ではないかと思われる。
総合商社がダメでも専門商社という想いが強い場合には、金属・鉄鋼系の専門商社に加えて、兼松も検討してみてはどうだろうか。